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「夫婦は似てくる」ってホント?

2016-10-22 18:30:13


執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター)
芸能人が夫婦でテレビに出ているのを見たとき、「この夫婦、最近似てきたな」と思うことはありませんか?
「似たもの夫婦」という言葉もありますが、夫婦というのは似てくるものなのでしょうか?
今回は、心理学的な視点からこの謎に迫っていきます。

日本人に浸透する「夫婦は似てくる」


「夫婦は似てくる」という考えは、私たちの生活に当たり前のように根付いているようです。このことは、コトバやことわざにも見ることができます。
たとえば、「似た者夫婦」という言葉。『goo 辞書」によると、似た者夫婦とは、『夫婦は互いに性質や好みが似るということ。また、性質や好みが似ている夫婦。」と書かれています。
また「夫婦はいとこ(従兄弟)ほど似る」ということわざもあります。「血のつながっていない夫婦でも、長年連れ添うことで血のつながったいとこのように似てくる」ことを意味しています。
このように、一般的には「夫婦が似てくる」という考えは私たちの生活にかなり溶け込んでいます。しかし、実際はどうなのでしょうか?
ネット上では「同じ空間にいるから」「同じ食べ物を食べているから」など、「似てくる」ことを支持する意見がもろもろ出ています。
しかし心理学的な視点からは、「同調傾向(シンクロニー)」という現象として、夫婦が似てくることをとらえることができます。これはどのような現象なのでしょうか?

夫婦が似てくる理由「同調傾向(シンクロニー)」


「同調傾向」とは、相手とやり取りするうちに、表情やしぐさ、姿勢、癖、声質などが似てくる現象のことをいいます。英語では「シンクロニー」といいますが、これは「相手と行動などを一致させること」を意味する「シンクロナイズ」に由来しています。
これまで行われた研究では、同調傾向は本能的、無意識的に起こるものと考えられています。また、相手との関係性や過ごす時間も同調傾向を起こしやすくする要因のひとつとされています。
それではその相手との関係性や、相手と過ごす時間の長さについて詳しく見てましょう。
1. 相手との関係性
相手と協力関係にあるときや、同じ立場のときに同調傾向が起きやすいことが分かっています。
たとえば、ゲームをする時。相手と対戦するような競争関係にある場合には、表情やしぐさなどは似てきませんが、相手と協力して行うゲームでは、表情、しぐさなどが似る、という結果が出ています。また、旅行の計画などの協調的な会話をしている場合にも、姿勢などが似てくるといわれています。
これを「夫婦」という関係に当てはめてみると、どうでしょうか。
互いに協力して物事を解決したり、一緒に計画を立てる機会が多い夫婦という関係では無意識のうちに同調傾向が起き、表情やしぐさ、動作などが似てくると考えられるでしょう。
2. 相手と過ごす時間の長さ
相手と過ごす時間が長いほど、同調傾向が強くなるといわれています。そのため、夫婦として長い時間一緒に過ごすことも、さまざまな点で夫婦が似てくる理由といえます。

似ている夫婦ほど良好な関係!?


ここまでお話してきたように、同調傾向によって長年連れ添った夫婦の表情やしぐさ、姿勢、癖、声質などが似てくることはあると考えられるでしょう。
また、お互いに強く信頼しあっている仲であるほど、同調傾向は一層強くなるともいわれています。
一概には言えませんが、この理論から考えると、「似ている夫婦ほど、信頼関係が強い」という傾向はあるのかもしれません。

同調傾向がもたらす効果とは


同調傾向には相手の感情への理解を深めたり、相手と信頼関係を作る効果があることもわかっています。
そこで、相手との信頼関係が重要になるカウンセリングなど臨床の現場では、この同調傾向の効果を利用して、面接者との関係づくりのために、カウンセラーがあえて相手の動作や姿勢をまねすることもあります。これを「ミラーリング」といいます。
ですから「最近、夫(または妻)との関係がうまくいっていないな」というときには、この同調傾向を利用して、相手を真似してみるというのもひとつの方法かもしれません。
とはいっても、ただ単に相手の真似をしているだけで相手との関係が良くなるということではありません。先ほどお話したように、相手と協調的な会話をしながら、一緒に過ごす時間を作るように心がけましょう。
その上でミラーリングを行えば、同調傾向の効果を実感できることでしょう。
またミラーリングや同調傾向を行う場合にもう一つ気をつけたいのが、相手に依存し過ぎないことです。
相手との関係を良くしたいからと言って、自己犠牲を顧みなかったり、相手のやることなすことをすべて従う、まねるというのは、「共依存」という関係にあたり、健全な関係とはいえません。ミラーリングを行うとしても、あくまでもお互いが自律し、尊重しあえる関係が築けていることが大前提として必要といえるでしょう。
<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。
株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆。

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情報提供元: mocosuku

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