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深刻な事故・事件後に聞く「PTSD」とは

2016-10-24 21:30:27


執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
一生消えないような大きな心の傷。
それが「トラウマ」というものです。そして「PTSD(ピー・ティー・エス・ディー)」は、そのトラウマが引き金となって起こる精神疾患です。
戦争、事故、災害、虐待、犯罪、テロなど、生命が脅かされ死を意識するような強烈な経験によってトラウマを負うと、そこからさまざまな精神的・肉体的症状を発症します。
今回はそのPTSDについて、詳しく見ていこうと思います。

PTSDの診断基準


PTSDは「Post Traumatic Stress Disorder」の略で、「心的外傷後ストレス障害」と訳されます。
PTSDという概念自体は以前からありますが、2013年にアメリカ精神医学会が刊行した『DSM-5』 (精神疾患の分類と診断の手引き最新版)では、それまでと比べPTSDの診断基準が複雑になっています。
具体的には、下記の8つの項目が挙げられています。

A. 心的外傷(トラウマ)を抱えていること


B. 侵入症状(体験の記憶が繰り返し蘇る)


C. 持続的回避(体験に関連するものを遠ざける)


D. トラウマと関連した認知と気分の陰性の変化(ものごとを否定的にしか受け取れない、前向きな感情を感じられない)


E. トラウマと関連した覚醒度と反応性の著しい変化(怒りやすくなる、自己破壊的になる、過剰に警戒や動揺する、集中力がなくなる、眠れなくなるなど)


F. 上記B、C、D、Eが1か月以上持続している


G. その障害が、臨床的に意味のある苦痛や社会的に重要な機能の障害をきたしている(トラウマがもたらす苦痛によって社会生活を送るのに支障が生じている)


H. その障害は物質や他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない


PTSD:3つの主な症状


PTSDの症状の中でも、特に顕著に見られるのが下記の3つです。

フラッシュバック:侵入症状(上記基準B)


苦痛な体験が思い出されること。突然思い出したり、悪夢を見たりして、非常に苦しくなったり、自律神経失調の症状をきたしたりします。

回避とマヒ:(上記基準C、D)


苦痛な経験を思い出すことを避け、意識から記憶が切り離されます。これにより、慢性的な無力感、無感動・無関心、健忘が生じるほか、トラウマに関連する刺激を避けるといったことが起こります。

過覚醒:(上記基準E)


常に危険が続いているかのように張り詰めた状態になって、交感神経系が緊張し、些細な物音に反応したり、パニックに陥りやすくなります。不眠やいらだち、集中力の低下、過剰な警戒心、ちょっとしたことで驚くなどの状態になります。

PTSDの新たな視点「解離症状」


またDSM-5では、上記A〜Hの基準に加えて、次のいずれかの症状が持続的・反復的に現れるとしています。

離人感


自分や自分の身体が非現実的に感じられたり、自分を外部から傍観しているような感覚や、時間の進みがすごく遅い感覚にとらわれます。

現実喪失感


周囲の世界が非現実的に思え、夢のようで、ぼんやりしたり歪んだりしているように体験されます。
このように、意識・記憶・同一性・環境の知覚など通常は統合されている機能が分離されるのが「解離性障害」です。PTSDの人は、過酷な状況を体験した際に自己から感情を切り離して逃避することが原因で解離性障害を起こすと考えられています。

PTSDの治療


PTSDは、トラウマの原因となる出来事を経験してから数週間、あるいは数か月や数年経ってから症状が出ることもあります。
上記のような症状に悩まされ、つらいと感じる時は、心療内科や精神科といった専門機関に相談することが回復への早道です。
精神科などでは、抗うつ剤を用いた薬物療法や、恐怖をコントロールしていくPTSDへの精神療法「持続エクスポージャー療法」などが行われます。
またそうした専門的治療と同時に、安心・安全・安眠を確保するといった一般的ケアも重要で、家族や地域などの協力も欠かせません。
そうした努力で徐々に症状は軽減します。
しかしその一方で、何年経っても傷ついた経験(トラウマ)からは解放されないことが、大震災や戦争の経験者たちによって語られています。
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

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情報提供元: mocosuku

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