ぐっすり眠るには「睡眠の質」 でも睡眠の質とはなに?
2016-11-25 18:30:43
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
ある調査結果によると、日本人の平均睡眠時間は約7時間30分くらいとのこと。
しかも、1995年ころから短くなっていた傾向が改善されて、以前よりは眠るようになってきているそうです。
しかし“何時間眠ったのか”という睡眠量は必ずしも「睡眠の質」には比例しません。
では、「睡眠の質が良い」とはどのようなことをいうのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
睡眠の効用
眠ることは私たちの心身にどのような効果をもたらしているのでしょうか?
これまで解明されてきたのは、次のようなことでした。
脳の疲労回復や身体の損傷修復
成長ホルモンの分泌(=アンチ・エイジングにも関連)
記憶の整理・整頓
覚醒している時間を活力のあるものにする
快眠のメカニズム
朝はスッキリ目覚め、昼間は必要以上に眠くならず、夜には自然に眠くなってぐっすりと眠れる。
こうした「快眠」こそが睡眠の質が良いことだと評するなら、「睡眠周期の充足」が大切でしょう。
これは、脳が眠る深い眠りとしての「ノンレム睡眠」と、脳は起きていて身体が眠っている浅い睡眠の「レム睡眠;REM(急速眼球運動)」とがセットになって約90分の周期をくり返すこと。
そしてその周期は入眠時にもっとも深い「レベル4」、だんだん浅くなって覚醒間近では「レベル2」と、ひと晩にサイクルが約4~5回起きることが、快眠リズムとされています。
睡眠の質の低下をもたらすもの
睡眠時間がすごく少なく、またそんな日が何日も続くと「うつ病」などのリスクが高まります。
ですから、睡眠時間(量)が少な過ぎても睡眠の質は低いといえるでしょうが、そのほかにも睡眠の質を低下させる経験があります。
睡眠障害
睡眠障害には、日本人の5人に1人が悩んでいると言われる「不眠」と、いわゆる寝すぎの「過眠」とがあります。
不眠には4つのタイプがあります。
・入眠傷害
不眠の中で最も多く、寝つきが悪い、なかなか眠れない
・中途覚醒
夜中に何度も目が覚めて、すぐに寝つけない
・早朝覚醒
必要以上に早く目覚めて、それから眠れなくなる
・熟眠障害
眠りが浅く、熟睡できない
過眠
睡眠時間量が極端に多い「寝過ぎ」の場合と、夜眠っているのに日中に強い眠気が生じて、起きているのが困難なケースとがあります。
かくれ不眠
さらに最近では、「かくれ不眠」も注目されています。慢性的な不眠ではないものの、睡眠に悩みや不満を抱え、日常生活に影響があり、しかも、睡眠の重要性について認識が低い状態を指します。
「睡眠改善委員会」(NPO法人日本ブレインヘルス協会)による造語です。いわば、かくれ不眠は単なる寝不足と不眠症との中間状態ともいえ、これまた睡眠の質がよくない状態です。
睡眠の質はどんな効果をもたらすか?
一般に、睡眠の質が高まると次のような効果があると言われます。
・心身の疲れが取れる
・日中、眠気を感じない
・意欲的に活動できる
・イライラしない
・ストレスに強くなる
・集中力が高まる
・記憶力・学習効果が上がる
・免疫力のアップ
・生活習慣病の予防
・血流の改善
・骨や筋肉の修復や再生
・脂肪の燃焼やメタボの改善
・シミやしわ、肌荒れの改善
こうしたさまざまな効果をもたらす基盤には、質の高い睡眠によって体内時計が規則正しいリズムを打ち、睡眠を促すホルモン「メラトニン」が適度に分泌され、自律神経がバランスを保つ、といった身体の健康さがキープされることが挙げられます。
そして、そんな健康な身体には意欲的で安定した精神状態がともなってきます。
睡眠の質への社会的課題
充分な睡眠をとることが大切、ということはもう誰でも知っているでしょう。
とはいえ、わかっていても実行できない難しさがあります。それは、本人の生活のしかたという「自己責任」の問題でかたづけられるばかりではありません。
たとえば、職場での過重労働。
大きなニュースにもなった、ある大手広告代理店では朝6時前に会社に行き、日付が変わってから帰宅することもあったのだとか。そうした職場風土が問題の背景にありました。
ちなみに「国民健康・栄養調査報告」(厚生労働省健康局、2012)によると、20歳以上で睡眠に不満を持つ人の割合は14.9%でした。
睡眠による休養が「あまりとれていない」または「まったくとれていない」と、睡眠に何らかの不満や問題を感じている人の割合です。とくに40歳台では約5人に1人が睡眠に不満を持っていました。忙しい勤労世代の睡眠の質がよくない傾向が続いています。
あるいは、世界中の都市は24時間眠らない街と化しています。
24時間営業のコンビニやクラブ、TV番組にインターネットやゲームなどなど。
睡眠の質を良くするには、「眠り方」ももちろん大事ですが、「働き方」や「生活のしかた」といった「覚醒」の質も、もう一度考え直す必要があるでしょう。
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
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情報提供元: mocosuku