なんでもないのに舌がピリピリ…「舌痛症」の可能性も
2016-12-05 21:30:26
執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
監修:石川 毅(歯科医:アイデンタルオフィス恵比寿 院長)
舌がピリピリしたり、口のなかがカーッと熱くなるような痛みを体験したことはありませんか?
そのような状態が1日2時間以上、3か月にわたって繰り返すものであれば「舌痛症(ぜっつうしょう)」かもしれません。逆にいえば舌や歯肉に明らかな炎症や潰瘍などの病変があれば、それは舌痛症とは診断されません。
舌痛症の発症頻度は、全人口の1~3%に発症するとされており、男性対女性の割合は1:8で、男女ともに30~50代で、特に更年期前後の女性に多くみられます。
今回はその舌痛症について、詳しく見ていきましょう。
「舌痛症」の症状とは
舌痛症は舌がピリピリするジンジンする、などの痛みがあります。
しかし鏡で見てみても舌には何もできていないという状態です。持続性でやけるような痛み、刺すような痛みと表現されることもあります。
痛みの部位は、舌の先や縁に多いですが、舌の奥や中央が痛むこともありますが、痛む部位が移動することがあります。
不思議なことに舌痛症の場合、食事をしている間の方が痛みは楽になるようです。舌が痛いと言いながら食事ができるので、舌の痛さを訴えても周囲の人には理解されず、また舌に原因となるような状態が見当たらないので、それを理解してもらえず、長い間悩んでいる人が多いのです。
痛みは起床から就寝まで持続しますが、1日の中でも変動があり、夕方から夜に悪化することが多いです。
痛みの強さには波がありますが、痛みのために睡眠できないということはありません。
「舌痛症」の原因とは
原因は、若い女性や男性には少なく、閉経後の女性に多くみられている(閉経後の女性における発症率は15%前後です)ことから、女性ホルモンを介した何からの内分泌機能異常が影響しているのではないかとみられていますが、ハッキリしていません。
現在、痛みが出る人には心理的ストレスを抱えている人が多く、ストレスと密接な関係があることがわかっています。
仕事や家庭で不安や不快な出来事が痛みを更に強いものにします。極度の肉体疲労があって、その時期に歯科治療を受けたりしたことで、それを契機に発症することもあります。
さらに、痛みを調整する脳の機能に変化が生じていることもわかっています。
「舌痛症」の診断と治療法とは
口の中に痛みを生じさせる全ての疾患を除外したのち、診断を付けます。病理検査や血液検査でも異常を認めません。過去に強い心理的なストレスを受けた人は、慢性痛に陥りやすいことがわかっています。
症状に合わせて投薬治療や心理療法などが行われますが、虫歯や歯周病など治療が必要な部分があれば、時期をみながら適切な処置を行います。
受診科は、心療歯科を設ける歯科で行われていますが、歯科クリニックで相談しましょう。
「舌痛症」の予防法とは
バランスの良い食事や適度な運動、気分転換でストレス解消、不規則な生活を改めるなどして、日常の生活習慣を整えます。
また虫歯や歯周病を放っておいたり、入れ歯やさし歯が合わずに舌を傷つける刺激があったり、口の中が不潔だったりするとトラブルは起こりやすくなります。
ブラッシングをしっかり行い、定期的な検診を受けるようにしましょう。
なかには「舌痛症が悪化するとガンになるのでは?」と心配する方もいらっしゃいますが、その心配はありません。
気にすると余計にひどくなる一面もありますので、なるべく気にしないように、何か夢中になれることを見つけて気をそらすことも大事です。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
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情報提供元: mocosuku