幸せ 真っ只中のはずが…「産後うつ」や「産後クライシス」とは
2017-08-28 18:30:09
執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ
やっと出産してかわいい赤ちゃんと出会えた喜びもつかの間、始まるのは寝る暇もないほど忙しい毎日です。
産後の心身の状態は、妊娠前とは大きく異なります。
周囲の人たちがそれを理解していかないと、母親として孤立してしまい、「産後うつ」や「産後クライシス」という事態が起きる可能性が誰にでもあります。
今回は、産後うつや産後クライシスについて説明します。
「産後うつ」とは
出産後、2週間以上抑うつ状態が続くことを「産後うつ」といいます。産後うつは、うつ病の一種でもあります。
産後の女性は、ホルモンの劇的な変化により、情緒不安定になっています。その上に赤ちゃんの世話で睡眠不足が続くため、心身ともに疲れている状態が続きます。
産後うつになると、精神的に不安定になる、感情表現が少なくなる、自信がない、判断ができないなどの症状が現れます。
産後うつの時期には個人差があり、産後2~3週間頃から発症する場合もあれば、産後3~4か月過ぎてから発症する場合などもあります。治まるまでの時期も個人差がありますが、1か月以上かかることが多く、長いと産後1年を過ぎても症状が出ている人もいます。
「もしかしたら産後うつかもしれない」という不安な気持ちがあるときには、以下の項目をチェックしてください。
当てはまるものが多い場合は、産後うつの可能性があるので、心療内科や精神科を受診しましょう。
□気分がひどく落ち込む
□いつも疲れている気がする
□眠れない(寝つきが悪い、早朝に目覚める、眠りが浅い)
□将来のことを考えて不安になる
□イライラや焦りを感じる
□よく泣いてしまう
□物事に集中できない・考えがまとまらない
□自分を責めてしまう
□身なりに気を使わなくなった
□食欲がない
□赤ちゃんや夫への愛情を感じない
チェック項目が多く、心配なときは、まずはゆっくり休んでください。
日常生活で気をつけるべきこと
日常生活で最も気をつけたいことは、「頑張りすぎない」ということです。
産後うつになる母親は、完璧主義の人が多い傾向にあります。独りであれもこれもきちんとやりたい、と頑張ってしまうと、身体が疲れてしまいます。
できるだけ他人に頼って手伝ってもらい、赤ちゃんが寝たら自分も一緒に寝る、家事などは手抜きをする、くらいの気持ちで過ごしてみましょう。
また、話し相手がいることも大事です。
同じ時期に出産したママ友など外部の人とのつながりを作っておくこともいいですね。
そして、休養をとってもよくならない場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。
産後うつの治療法
心療内科や精神科での産後うつの治療法はおもに次の2つです。それぞれをみていきましょう。
その1:カウンセリング
今の自分の悩みをカウンセラーに話します。
話をするだけでも楽になる場合もあります。何回か通って何が問題なのかをはっきりさせていくこともできます。
また、自律訓練法を練習する場合もあります。
自律訓練法とは、身体の部分ごとに力を抜いて、身体がリラックスした状態を作り、それを精神面へも影響させるもので、不安と取り除くリラックス法です。
その2:投薬
母乳をあげていると服薬することに不安がありますが、薬の種類によって問題がないものもありますので、授乳中であることを話し、主治医とよく相談してください。
症状の重さによって薬の種類が違いますが、抗うつ剤を飲む場合もあります。
薬を飲むことになったら、自分で判断して薬を止めたり、増やしたりしないようにしましょう。
産後うつだけじゃない!? 産後クライシスとは
産後クライシスの定義は、「産後2年以内に夫婦間の愛情が著しく冷めてしまう現象」をいいます。つまり、夫婦の関係が危機に陥っていることを指します。
結果として、出産後2年以内の離婚率が高くなっていて、シングルマザーが増えています。
とくに、妻から夫への愛情の減少がみられます。原因としては、「家事育児への非協力」「育児の労力に対する理解不足」「ねぎらいの言葉不足」が挙げられます。
産後は、ホルモンが激変する影響で感情の起伏が激しくなり、小さなことでも怒りっぽくなったり、泣いたりします。女性がそのような状態であることを理解していないと、夫婦間でちぐはぐなことが積み重なっていきます。
産後クライシスの対処法
出産前から、家事や育児は共同作業で行うことを夫婦でよく話し合い、日常生活での家事、食事、洗濯、掃除などを一緒にやるようにしておきましょう。
出産後、母親は、育児だけで頭も身体もいっぱいいっぱいの状態です。そこに家事の負担が増えることですれ違いがおきます。
まして男性側が自分のこともできない状態でいると、そのことにイライラしてしまう可能性が大きいです。
男性は、母親として頑張っている姿に対して、感謝の気持ちを言葉で伝えるようにしましょう。
また、話を聞いてあげましょう。そして、手助けを得られるように、周囲に働きかけをしましょう。
夫婦で一緒に育てているという実感が母親に持てれば、産後クライシスは起こらないのですから。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku