タバコはやめたのに肺に疾患!? タバコと肺の関係
2017-10-15 18:30:56
執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
タバコをやめれば、肺の病気になるリスクが下がることが分かっています。
それでは、禁煙すると肺はもとに戻るのでしょうか?
タバコが肺に与える悪影響や、それによって発症する病気についてお話します。
タバコを吸う人の肺は穴だらけなの?
肺は、おもに血液中の二酸化炭素と酸素を入れ替えるガス交換を担うとても大切な場所で、「肺胞(はいほう)」と呼ばれる小さな袋がブドウの房のように集まってできています。
タバコの煙に含まれる有害物質はこの肺胞にダメージを与えます。
じわじわと肺胞構造が壊され続けると、肺に空洞が増え、きめの粗くなったスポンジのように穴だらけになっていきます。
その結果、肺胞で十分な換気が出来なくなり、やがて慢性的に酸素が不足した状態に陥ります。
タバコは全身の病気のリスクになるの?
喫煙は、肺がんのリスクを高めることが知られています。
タバコの煙には4000種類以上の化学物質が含まれていることが判明しており、そのうち有害と分かっているものだけでも200種類以上あります。
さらに、その中の40~60種類には発ガン物質が含まれているため、肺がん以外のがんのリスクも高めています。
また、タバコを吸うと一酸化炭素が体内に取り込まれます。
一酸化炭素は赤血球にあるヘモグロビンと非常に結合しやすく、その力は酸素の240倍です。
ヘモグロビンには体内に酸素を運ぶ役目がありますが、一酸化炭素が結合すると、体内で酸素が欠乏してしまいます。
その結果、動脈硬化が進み、脳卒中や急性心筋梗塞、大動脈解離などを発症するリスクが高まります。
ほかにも、喫煙者は慢性閉塞性肺疾患(以下、COPD;慢性気管支炎や肺気腫の総称)にもかかりやすく、さらに高血圧、糖尿病などの生活習慣病、胃潰瘍、うつ病、歯周病のリスクも上がることが分かっています。
そして、タバコが妊娠・出産への悪影響や乳幼児突然死症候群の発症リスクにも関連することを忘れてはなりません。
タバコが主原因といわれるCOPDとは?
COPDは、タバコなどに含まれる有害化学物質を吸い込むことにより、気管支や肺胞などに慢性的な炎症が生じて肺機能が徐々に蝕まれ、呼吸が困難になっていく病気です。
別名「肺の生活習慣病」とも呼ばれ、主原因(原因の9割)がタバコの煙といわれています。
COPDは進行を遅らせることはできますが、完治させることはできません。
厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると、平成27年の COPDによる死亡数は、15,756人で、死因別死亡数では10番目に多いという結果になっています。
タバコをやめたら肺は再生するの?
現代の医学では一度壊れてしまった肺胞をもとに戻すことはできず、残念ながら、禁煙しても肺はもと通りにはなりません。
細胞の再生機能で「ある程度」の肺の回復は見込めるとしても、老化もしていますから、喫煙前に戻すことは難しいのです。
しかしながら、禁煙がまったく意味がないわけではありません。
これまでの研究で、1日20本のタバコを吸う男性は、吸わない男性に比べ、肺がんの死亡率が4.5倍高くなることが分かっていますが、5年間禁煙するとそのリスクは半分に、10年間禁煙すると吸わない人と同程度にまで下がることもわかっています。
肺がんは検診でも見つかりにくいため、予防法としては禁煙が最適です。
吸っていた本数や年数などで個人差はありますが、確実にリスクを減らすことができます。
「禁煙しても肺が元に戻らないなら、吸い続ける」という方もいるかもしれませんが、その考えはおすすめできません。
タバコを吸うことをやめない限り、肺はダメージを受け続けます。
しかも、肺は、排ガスや化学物質、PM2.5などタバコ以外の要素からも、ダメージを受けます。
ですから、タバコを吸うことは、肺にさらなる追い打ちをかけることになるのです。
今からでも間に合う!タバコをやめるメリット
「今さら禁煙しても間に合わない」とあきらめていませんか?
確かに、若いときに禁煙を始めたほうが、健康に近づくチャンスは高くなります。
しかし、今からでも禁煙を続けることができれば、タバコでダメージを受けた身体を健康に近づけることは可能です。
禁煙の効果は、脳卒中や心筋梗塞などでは比較的早く現れます。
女性の心筋梗塞による死亡率は、禁煙して2年ほどで喫煙者の半分に、5年ほどで吸わない人とほぼ同じくらいまで下がることが、国外の研究で分かっています。
国内の研究でも、禁煙して2年以降は、喫煙者の危険度の半分以下になることが分かってきています。
禁煙しても手遅れ、などということはありません!
ぜひタバコ生活を見直してみてください。
禁煙をすることにより、以下のメリットがあります。
・肺へのリスクを下げる
・大切な家族の受動喫煙のリスクを減らす
・食べ物を美味しく感じる
・肌の調子を良くする
さらには、
タバコの購入に使っていたお金の使い道を探すこともできますよ。
【参考】
・国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス「まだ たばこを吸っているあなたへ」
(http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/general/pamph65.html)
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku