「乳がん発症リスク」は胸のサイズに関係ある?ない?
2017-11-28 18:30:32
執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ
「私は胸が小さいから乳がんにならないわ」
そう思っている方が意外に多いようです。
本当にそうなのでしょうか。
また、皆さんは、先進国では乳がんの発症数が減少しているのに、日本ではいまだに増加している、という現状をご存知でしょうか?
今回は、胸の大きさと乳がんとの関係、乳がん発症のリスクについてご説明いたしましょう。
日本の乳がんの現状
乳がんは、20歳過ぎから発生が確認されています。
30代を過ぎてからは急に増えて、40代後半から50代にピークを迎えます。
その後は年齢が高くなるにつれて減少しますが、80代でも発症例はあります。
日本人女性では、年間4万人が乳がんと診断されています。
患者数は毎年増加していて、女性の16人に1人が発症し、年間1万人が亡くなっています。
また、2013年の統計によると、女性のがんの罹患数(新たに診断された人の数)は乳がんが最も多く、40代女性の死亡率の第1位も乳がんです。
冒頭でも触れたように、先進国において日本は乳がん患者の増加率が高い国です。
この背景のひとつに、乳がん検診率の低さが挙げられます。
乳がん検診率を欧米諸国と比較すると、欧米が70~80%なのに対して日本は40%程度なのです。
乳がんが増加している原因
少子化や晩婚化によって、女性1人あたりが一生で出産する子どもの数が減ってきています。
実は、この社会的背景も乳がん増加に影響しているのではないかといわれています。
乳がんの発症には、女性ホルモン(とくにエストロゲン)が関っています。
出産すると、授乳のために「プロラクチン」というホルモンの分泌が始まり優位なホルモンとなります。
そうすると、エストロゲンの分泌量は急激に減少し、次の月経まで少ない状態が続きます。
一方、妊娠・出産経験がない人は、月経が止まる期間もない、ということになりますから、エストロゲンの作用を受ける期間が長くなり、乳がんの発症リスクが高くなると考えられているのです。
また、授乳する期間が長いほど、エストロゲンの分泌が少ない期間も長くなるため、乳がんになりにくいといわれています。
胸の大きさと乳がんの関係
成人女性は、発育した乳腺組織を持っています。
ですから、胸の大きさに関係なく、大人の女性なら乳がんは誰でもかかる可能性のある病気です。
胸の大きさで乳がんの発生率に違いが出るということはありません。
強いていうならば、胸が大きいと厚みがありますから、小さなしこりが見つかりにくく発見が遅くなる、という見方はあるかもしれません。
胸の大きい方は、セルフチェックのときに、ゆっくりとやや強めに注意深く押してみましょう。
もちろん、乳がんの確定診断には検査が必要です。
なにより心がけたいのは、定期的に検診を受けることです。
そして、乳がんの発症には、胸のサイズよりもずっと大切な、生活習慣にかかわる要素がいくつかありますので、次項でご説明いたします。
乳がんの発症リスク
「乳癌診療ガイドライン」では、欧米諸国を調査した結果を検討し、エビデンスをもとに因果関係が報告されています。
日本では、国立がん研究センターが「がん予防ガイドライン」を出しています。
そのなかで、個人レベルでの生活習慣による要因として、アルコール、肥満、身体活動が挙がっています。
つまり、アルコールの摂取を控えること、女性ホルモンの影響で肥満になりやすい閉経後の体重管理をすること、身体活動を増やすことが重要になるのです。
また、次のような因子は乳がんの発症リスクを高めます。
初潮が早い(11歳以下)
閉経が遅い(55歳以上)
妊娠・出産経験がない
家族で乳がんにかかった人がいる
30歳を過ぎてからの初産である
閉経後に肥満になった
世間では「野菜を食べれば乳がんにならない」という情報が出回ることもありましたが、野菜をたくさん食べればがんにならない、という医学的根拠はありません。
肉や魚、野菜も含めて、バランスのとれた食生活が望ましいでしょう。
【参考】
・国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」(http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html)
・日本医師会「諸外国のがん検診データ」(https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/data/foreigncountry/)
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku