イギリス発祥「Vegan (ヴィーガン)=完全菜食主義」のお話
2017-12-13 18:30:36
執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ
1944年にイギリスで創設された『The Vegan Society:ヴィーガン協会』。
ヴィーガンとは、もともとは地球環境や動物愛護などを尊重するライフスタイルを指していたそうです。
現在では、いわゆるベジタリアンの一つとして、その独特の食事法が注目されています。
今回はこのヴィーガンについて、詳しくご紹介していきましょう。
ベジタリアン(vegetarian)としてのヴィーガン
菜食主義(者)とも訳される「ベジタリアン」。
語源はラテン語の vegetus に由来し、「健全、新鮮、活気がある」という意味から派生しています。
日本エシカルヴィーガン協会によると、ベジタリアンは「野菜、果物、豆類、ナッツなど植物性の食材を主体とした食事法」と規定されています。
そうはいっても、実際にはさまざまな種類があるので、詳しくは以下サイトを参照してください。
【参考】
・日本エシカルヴィーガン協会「ベジタリアンの種類」(http://www.ethicalvegan.jp/vegetarianism/)
ヴィーガンは、「狭義のベジタリアン」に分類され、ピュア・ベジタリアンや完全菜食主義とも呼ばれるようです。
食生活は、動物性の食品(卵、乳製品、ハチミツ、魚、肉など)を一切取らないというのが基本方針です。
また、食品だけでなく、レザーなどの革製品、ウールやシルクや羽毛など、動物由来のものを身の回りから排除し、さらには、動物性コラーゲン入りの化粧品や動物実験をしている商品は使わない、などヴィーガンはアンチ・動物由来という思想なのです。
ただし、ヴィーガンにもいくつかの種類があります。
動物の命の尊重をも実践する、すなわち徹底して動物性の素材に触れないという「エシカル・ヴィーガン」、純粋に食事面でのみ実践する「ダイエタリー・ヴィーガン」、さらには、植物の命も奪わないことを採取の条件とする「フルータリアン」という考え方です。
ヴィーガン食とは?
それでは、実際にヴィーガンの人たちはどのような食事をしているのでしょうか。
主食は米やパン
穀物類はOKなので、米、パン、パスタは大丈夫です。ただし、卵や乳など動物由来の添加物が含まれていないものを選びます。
たんぱく質は植物性
たんぱく質は、豆腐などの大豆製品、オートミールなどから摂取します。
植物性たんぱく質をしっかり摂ることは奨励されますが、動物性たんぱく質と比べると、体内で合成できない必須アミノ酸が不足しやすくなることが留意点です。
その点、大豆には必須アミノ酸がバランス良く含まれますから、大豆製品はできるだけ毎食で摂ることが必要です。
植物性デザートもOK
牛乳の代わりに豆乳、バターの代わりに植物油などを使用して、ヨーグルトやアイスクリーム、ライスプディング、卵を使わないパンケーキ、和菓子などのデザートが供されます。
白砂糖はNG
黒砂糖を白砂糖に精製するのですが、そのプロセスで骨炭という動物の骨が使用されるため、白砂糖はNGとのことです。
代わりに、黒砂糖やメープルシロップ、ココナッツシュガーなどを用います。
ヴィーガン食のメリット
このように、ヴィーガン食はサラダオンリーというわけではありません。
きちんと栄養バランスが考えられた食事です。
正真正銘のヴィーガンは、むしろ健康食であるといえるかもしれません。
次のようなメリットが挙げられています
循環器への負担が減り、疲れにくくなる
血液がサラサラになって、息切れや動悸が減ります。
身体が軽くなることで、疲れにくくなるといわれています。
食物繊維を豊富に摂取できる
野菜がたっぷりの食事なので、食物繊維の摂取量が多く、便秘、血糖値の急上昇などが避けられます。
いわゆる「腸活」にもなります。
皮脂や体臭が減る
脂質の多い食事は、ともすると皮脂の増加や体臭の原因になります。
ヴィーガンは皮脂や体臭が少なくなるといわれています
ヴィーガン食のデメリット
健康的でダイエットにもよさそうなヴィーガン食。
栄養面でのデメリットはないのでしょうか。
次のようなデメリットが指摘されています。
ビタミンB12が不足しやすい
レバーや魚介類、肉類などに豊富に含まれるビタミンB12には、赤血球の生成を促し、貧血を予防する働きがあります。
ヴィーガンは動物性食品を摂らないので、不足する可能性があります。
ミネラルが不足しやすい
上記と同様に、鉄分などのミネラル不足も心配されますので、ホウレンソウやプルーン、モロヘイヤ、納豆などを積極的に摂取する必要があります。
カルシウムが不足しやすい
肉や魚に多く含まれる鉄や亜鉛、牛乳に多く含まれるカルシウムなどは不足しやすくなります。
代わりに、海藻や豆類、緑黄色野菜、ナッツ類などを積極的に摂る必要があります。
オメガ3系脂肪酸が摂りにくい
青魚に含まれる「オメガ3系脂肪酸」は、血液サラサラ効果や、脳の機能を活性化するといわれています。
植物油では、アマニ油やシソ油などからも、オメガ3系脂肪酸を摂取できます。
これらを積極的に摂ることが望まれます。
また、栄養素以外の観点からは、外食が限られる、人と食事をするときに気をつかう、カロリーが低くお腹が空きやすい・・・などの課題もあるようです。
また、菜食が体質に合わない人もいます。
単に魚や肉を一切食べないという主義なら、それは不健康な食事法といわざるを得ませんが、身体に必要な栄養素を考慮し、きちんと計画的に食事を摂ることこそ、ヴィーガンの姿勢なのでしょう。
ダイエット中や食事制限のある方にとっては、とくにヴィーガン食は参考になるのではないでしょうか。
筆者の所感として、食事だけにとどまらず、エコロジーやライフスタイルといった「生き方」にまで展開するヴィーガンの考え方は、とても興味深いことと感じました。皆さんはいかがでしょうか。
【参考】
・日本ベジタリアン協会(http://www.jpvs.org/)
<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku