「ハト胸」とはどういう胸? カラダに悪いことはある?
2017-12-18 18:30:31
執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
骨格の特徴は、似合う洋服選びを左右します。
「ハト胸」であることは、ファッション面で気になる特徴だと思われるでしょう。
しかし実際にはそれだけではなく、生まれつき胸部の骨格に異常がある状態を指しています。
今回はハト胸がおよぼす、見た目だけでない、身体への影響も合わせて知ってほしいと思います。
ハト胸とは?
世間では、見かけ上、胸が前や上向きに出ていて目立つさまを「ハト胸」と呼んでいるようです。
ハト胸が自慢の人、コンプレクスを感じる人など、人それぞれです。
そんなハト胸は医学的にいう「鳩胸」とは違います。
鳩胸は生まれつきの骨格異常のことを指しています。ですから、患者さんは深刻に悩んでいることが多いものです。
ただし、生まれたときにすぐにわかるわけではなく、成長するにつれて、骨格の異常が目立ってくるという特徴をもっています。
ハト胸と医学的な鳩胸はどう違う?
一般的に、女性のハト胸についての悩みは、乳房の位置が高いことや、左右の乳房が離れていることで、胸の真ん中の骨(胸骨)が目立つことにあるようです。
また、男性のハト胸の場合、胸を張って肩甲骨側に引き過ぎたような姿勢や骨格、胸部が前にスライドし過ぎた姿勢、胸部がやや上向きになっている姿勢などが、見かけ上のハト胸をつくりだしています。
これに対して、医学的な意味での鳩胸は、身体の正面から見ると、胸の上部の骨が極端に飛び出ています。
逆に胸の下の部分は凹んでいるように見えます。胸部を輪切りにしたCT画像で診てみると、栗のように胸の中心が飛び出て、まるで山のような形になっているのが典型です。
これに対して、正常な胸のCT画像は、横長の楕円形です。
ただし、鳩胸にはいくつかのタイプがありますので、この限りではありません。
鳩胸の発症はどのように起きるの?
鳩胸は遺伝的な病気です。
また、他の病気に合併して鳩胸となる場合もあります。鳩胸と似た病気に「漏斗胸(ろうときょう)」があります。
どちらも、肋骨が過剰に成長した結果できることが共通しています。
一方で、鳩胸は長くなりすぎた肋骨が行き場をなくして、中心部で前に突き出た形ですし、もう一方、漏斗胸は反対に肋骨が凹んだ形です。
漏斗胸の方が鳩胸よりも多く、鳩胸は男性の方が女性よりも多いといわれています。
鳩胸を放っておいても悪い影響はない?
鳩胸は生まれつきの病気ですが、発症、つまり、それに気づくのは胸が突出しだしてからのことです。
3歳以降で、体つきが徐々に成長していく過程で気づかれることが多いようです。
成長するにしたがって、その程度がひどくなることもあります。そのため、自分の身体が気になる年頃と軌を一にして、症状が強まる時期が重なってくることもあり、単に身体の問題というだけでなく、本人にとっては精神的な悩みにも発展します。
また、なかには、気管支ぜんそくや、心臓の弁の異常が合併していることもあるといわれています。
根本的に治療をするには外科的な手術を必要とします。
鳩胸かどうか知るためには?
はじめに、一般的に言われるハト胸は医学的に言われる鳩胸とは違うと説明しました。
それでも、「自分の胸が気になる」と、長年悩んでいる人もいることでしょう。そのような場合には、思い切って受診してみるのもよいでしょう。
受診先は、子どもであれば小児科や小児外科、大人は外科で診てもらうと良いでしょう。
鳩胸を治療する場合には、どんな病状なのかによって異なりますので、病状に合った治療ができる医療機関へ適宜紹介してもらうと良いでしょう。
【参考】
・松山笠置記念心臓血管病院「みんなの教科書『胸郭変形』Thoracic deformity」(http://xn--oevr4sb3o.jp/cure/textbook/)
<執筆者プロフィール>
座波 朝香(ざは・あさか)
助産師・保健師・看護師。大手病院産婦人科勤務を経て、株式会社とらうべ社員。育児相談や妊婦・産婦指導に精通
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku