『眼トレ』をすれば視力はアップ? 具体的な方法は?
2018-02-09 18:30:32
執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
テレビや書籍などで頻繁に見かける眼のトレーニング、略して『眼トレ』。
視力の問題は老若男女を問いませんから、この言葉が気になるという方は多いのではないでしょうか。
今回はそんな眼のトレーニングに注目してみましょう。
眼の仕組みを知ったうえで、眼トレにはどのような効果が期待できるのか、ご説明していきましょう。
「モノを見る」ということ
モノは光として目に入ってきます。
光は、黒目(角膜)とレンズの役割をする組織(水晶体)を通過し、屈折して目の奥にある膜(網膜)で焦点を結びます。
その光の刺激が視神経を通って脳に伝達されると、私たちは「見える」と認識します。
このとき、光の屈折に異常があり、網膜よりも手前で焦点を結んでいる状態が「近視」、網膜よりさらに奥で焦点を結んでいる状態が「遠視」です。
また、角膜や水晶体などのゆがみによって焦点がひとつに集まらない状態が「乱視」です。
こうした眼の網膜の焦点に問題がある症状を「屈折異常」といいます。
眼鏡やコンタクトレンズは、屈折異常を矯正して、網膜にきちんと焦点が結ばれる「正視」に近づける役割を果たす器具です。
子どもの眼と視機能
人間は生まれたときは遠視で、成長とともに発達し、6歳から8歳頃にはおおよそ視機能が完成するといわれています。
ですので、遠視は眼の機能の成長不足など、生まれ持った要素が大きいと考えられています。
とくに、子どもの遠視を放置してしまうと、矯正が困難な「弱視」に繋がるおそれもあり注意が必要です。
一方、近視は環境要因が大きいといわれています。
子どもの眼はとても柔軟性があり順応しやすいため、発達期間に読書やゲーム、最近ではスマホなど、近くにばかり焦点を合わせるような生活を続けていると、眼の機能が近くを見やすい目(近視)になってしまう可能性があります。
このような一時的な近視は、「仮性近視」と呼ばれています。
視力の機能が完成する前に遠くを見る生活に改め、眼のトレーニングなどにより改善を図ることが大切です。
大切なピント調整機能
モノを見るときに、もうひとつ重要なのは眼のピント調整機能です。
私たちの眼は、毛様体と呼ばれる小さな筋肉が、水晶体の厚みを変えて、近くをみたり遠くをみたりしています。
毛様体が収縮して緊張すると、水晶体は厚くなり近くにピントが合います。
反対に、毛様体が緩むと水晶体が薄くなり遠くにピントが合います。
パソコンやスマホなど、近くにばかり焦点を合わせるような状態が続くと、毛様体の緊張状態が続き目の疲労に繋がります。
そうならないように、ピント調整の役割を果たす毛様体を、休ませたり鍛えたりすることが必要なのです。
眼トレはその手段として有効だといわれています。
眼のトレーニング「眼トレ」
インターネット百科事典『コトバンク』によれば、「眼トレ」は、老眼の予防や改善のため、2012年に眼科医でアンチエイジングドクターの日比野佐和子医師が考案したトレーニング、とのことです。
眼の筋肉をストレッチしたり、血行の改善を促したりする眼トレは、特別な器具を使わなくても自分で手軽にできる目のケアです。
もともとは老眼対策でしたが、スマホなどの普及により眼の不調を訴える若年層も多く、「眼トレ」という言葉と方法は一般にも広まりました。
日比野医師は、著書でさまざまな眼のエクササイズを推奨していますが、そのなかから二つの方法をご紹介します。
毛様体のストレッチ
人差し指を立てて目から15㎝の距離で目線の高さにします。
両目で指先だけを見つめながら、ゆっくり腕を伸びるところまで伸ばします。
その後、目線を指先から外し、指先の向こう側にある遠くの景色を見つめます。
これを30回ほど繰り返します。
眼球のストレッチ
目を強く閉じます。
閉じたまま顔を動かさないようにして、眼球を上下左右に大きく動かします。
上下左右それぞれの方向で10秒ほどキープしましょう。
この動きを1セットとし、1日のなかで何回か行いましょう。
前述のとおり、スマホなどの酷使により老眼のような症状を訴える若者も増えていて、「スマホ老眼」と呼ばれています。
また、日中パソコンや細かい書類に集中し過ぎて、夕方になるとピントが合わなくなる「夕方老眼」という眼の不調もあります。
眼の疲労は、視力の低下だけではなく、肩こりや頭痛など身体全体の不調につながりかねません。
ひょっとして、アナタは休憩時間にスマホばかり見ていませんか?
眼トレはオフィスでも自宅でも手軽にできます。
眼を適度にストレッチして、休憩時間には眼もちゃんと休ませてあげましょう。
【参考】
・林田康隆 監修、日比野佐和子著『驚くほど目がよくなる!たった10秒の「眼トレ」「近眼」「遠視」「老眼」が9割治る』(SB新書 2017年)
・小椋祐一郎 監修『みるみるわかる目の疾患』(メディカ出版 2009年)
・星虎男・高山東洋 監修『図解 疲れ目、視力減退の治し方』(主婦の友社 2013年)
・コトバンク『眼トレ』 (https://kotobank.jp/word/%E7%9C%BC%E3%83%88%E3%83%AC-1705343)
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku