E START

E START トップページ > マガジン > 「心不全」をご存じですか? 若い人にも知ってほしい心臓の働き

「心不全」をご存じですか? 若い人にも知ってほしい心臓の働き

2018-07-31 18:30:07


執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
心臓の病気としてよく耳にする「心不全」
ところが、実は「心不全」は病名ではないことはご存知でしょうか?
心不全とは、心臓が十分に働かず体にとって必要な血液が送り出されない状態を意味し、その結果、体にさまざまな問題が起こります。
見逃されやすい心不全の初期症状や原因、治療法について解説しましょう。

心臓の働き


心臓はおおむね握りこぶしよりも少し大きいくらいのサイズで、身体中に血液を送るポンプの役目をしています。
詳しくみると4つの部屋に分かれていて、血液が入ってくる上の2つを心房(しんぼう)、血液を送り出す下の2つを心室(しんしつ)と呼びます。
全身をめぐって酸素が少なくなった血液は、右側の心房である右心房に入り、右心室から肺へ送りだされます。
肺でたっぷりの酸素を受け取った血液は左心房に戻り、左心室から再び全身へ送りだされます。
このように、心臓が24時間休むことなくポンプの働きをして、身体中に血液を巡らせているのです。
そして、私たちが当たり前のように行っている、食べる、歩く、眠る…など、さまざまな活動が成り立っています。

心臓が弱って起こる心不全の症状


人間が活動する上で欠かせない心臓の働きが弱ってしまうと、どのようなことが起こるのでしょうか。
まず、全身に十分な血液を送れなくなるため、必要な酸素が届かず息切れをしたり少しの動きでも疲れやすくなったりします。
また、細い血管まで血液が行き渡らず、手足の先が冷えたり、血色が悪くなったりすることもあります。
さらに、心臓は血液を送り出すだけではなく、受け取るという重要な働きも担っており、そこに問題が生じると血液がスムーズに流れなくなります。
そうすると体に水分が溜まり、体重増加や足の甲やすねなどにむくみを引き起こします。
さらに、食欲が落ちて尿の量が減ったり、肺に水が溜まって安静時も息苦しさを感じたりすることがあります。

心不全の原因


心不全には大きく分けて「急性心不全」「慢性心不全」の2種類があり、原因はさまざまです。
「急性心不全」は数時間から数日の単位で急に症状がでてきます。
「慢性心不全」は数ヶ月から数年単位で次第に症状が現れ、慢性的に続きます。
慢性的な心不全が急に悪くなった場合は、慢性心不全の「急性増悪(きゅうせいぞうあく)」と呼ばれます。
「急性心不全」の原因として多いのは、風邪やストレス、過労、急な薬の中断などです。
もともと心臓の病気にかかっていなくても、これらの原因が引き金となって心臓に負担がかかり、働きが低下してしまうのです。
原因がはっきりしないケースもありますが、急な症状を改善するために入院し、酸素吸入や点滴といった治療を受ける必要がでてきます。
一方、高血圧や不整脈、虚血性心疾患といった、血管や心臓に負担がかかる病気をもっていると、自覚症状がなくても心臓のポンプ機能が低下している慢性心不全の状態に陥りやすくなります。
その他、糖尿病や脂質異常症、過度な飲酒、タバコなども慢性心不全を悪化させる要因の一つです。
この場合、一般的には薬の内服などによって元になる病気をコントロールし、心臓への負担を少しでも軽減させることが重要です。

心不全の治療と日常生活での注意点


前述のとおり、急性心不全においては、まずは入院の上安静にすることが必要です。
心臓の働きを助ける薬を一時的に使ったり、体に過剰に溜まっている水分を外にだすため尿を出す薬が使われたりすることもあります。
また、心臓の血管が細くなっているなど、心不全の原因となる明らかな病気がある場合は、カテーテル治療や手術が行われることもあります。
一方、慢性心不全は、原因となる病気の治療を適切に受けることに加えて、日常生活でもさまざまな心がけが必要です。
症状に応じた食事の注意を守り、アルコールやタバコを控えることはもちろん、適度な運動も心がけましょう。
心不全の程度によっては運動が制限される場合もありますが、運動能力の維持や肥満予防のためにも、体を動かすということは大切です。
ただし、医師から運動制限について注意を受けている方は、必ず指示に従ってください。
また、ストレスや過労も心不全を悪化させるきっかけになるほか、熱いお湯への長時間入浴も心臓に負担がかかりますので注意しましょう。
特に冬場は、脱衣所をあたためるなどして、温度差にも気をつけましょう。
息切れがする、疲れやすい…といった心不全の症状は、とりわけ高齢の方は「歳のせいかな?」と思い込み見逃されがちです。
そして、最近では、働き盛りの世代でも突然の心不全により亡くなられるケースが増えています。
体調に異変を感じたら、自分の判断で様子を見るなど先延ばしにせず、早めに病院を受診しましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

関連記事

情報提供元: mocosuku

  • Twitter投稿
  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

人気記事

この記事へのFacebookのコメント