E START

E START トップページ > スポーツ > ニュース > 実業団2年目・鈴木芽吹が初の日本一、前回優勝の葛西潤が2位 アジア選手権経由で東京2025世界陸上出場へ【日本選手権10000m】

実業団2年目・鈴木芽吹が初の日本一、前回優勝の葛西潤が2位 アジア選手権経由で東京2025世界陸上出場へ【日本選手権10000m】

スポーツ
2025-04-17 06:00

鈴木芽吹(23、トヨタ自動車)と葛西潤(24、旭化成)に、東京2025世界陸上代表入りの可能性が出てきた。日本選手権10000mは4月12日、熊本県のえがお健康スタジアムで、9月に国立競技場で開催される東京2025世界陸上と、5月に韓国クミで行われるアジア選手権の選考競技会を兼ねて行われた。男子は鈴木が27分28秒82で優勝し、アジア選手権代表入りを確実にした。前回優勝の葛西が27分33秒52で2位。Road to Tokyo 2025(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)では葛西が、昨年から続いて日本人トップに立っている。


レース展開に現れた現時点の2人の力

鈴木がマークしていたのは葛西と太田智樹(27、トヨタ自動車)だった。葛西は前回の日本選手権優勝者でパリ五輪代表。太田は前回2位でやはりパリ五輪代表で、記録的にも10000mで日本歴代2位、ハーフマラソンでは今年2月に日本記録(59分27秒)を出したばかりだった。


しかし太田は状態が良くなく、5800m付近からリードを奪った吉居大和(23、トヨタ自動車)を追ったのは、鈴木と葛西の2人だった。2人は吉居の背後に付かず、数メートルの距離を置いて走っていた。


「葛西さんを徹底的にマークして走っていました。大和に一定の距離を置いていましたが、作戦でそうしているのか、キツいからそうなっているのかわからなくて、行くに行けませんでした」


鈴木はレース後にこう話していた。


一方の葛西は「まったく余裕がなかった」と、そのときの状況を明かした。「芽吹も大和も後輩なので、自分が前に出たい気持ちはあったんですけど、頼りっぱなしのレースになってしまいました」


7000mから3人は集団に近い形で走り続けた。レースが動いたのは残り1000m。鈴木がスパートをかけリードを奪っていった。


世界陸上参加標準記録は27分00秒00「26分台が明確な目標」と鈴木

鈴木は佐久長聖高、駒澤大と駅伝の強豪校で大活躍した。佐久長聖高では1年時に全国高校駅伝優勝。駒澤大では1年時と3年時に箱根駅伝に、3〜4年時には出雲全日本大学選抜駅伝に、1年時と4年時には全日本大学駅伝に優勝した。


しかし学生時代には大きな故障も経験した。大学2年時の9月に右大腿骨を疲労骨折。箱根駅伝は8区を走ったが区間18位。左大腿骨の疲労骨折をしていた。


「大学時代はケガでチームに迷惑をかけたので、とにかく学生3大駅伝で恩返しをしたい思いが強かったですね。日本選手権や、その先の世界に目を向けにくいところもありました」


しかし大学2年時に、日本選手権10000mで3位(27分41秒68)に入ったことが大きかった。大学、実業団を通して1学年先輩となる田澤廉(24、トヨタ自動車)が2位。田澤に必死で食い下がった結果ではあったが、「自分の中で世界の舞台に立ちたい思いが芽生えた」という。


大八木弘明総監督が、世界と戦うために立ち上げたGgoatに加わり、練習のレベルと意識が高くなった。そして24年にトヨタ自動車に入社。「社会人になって、そういう部分(学生3大駅伝)がなくなったので、自分の結果を追い求めていくことで、この1年間でだんだん強くなることができました」


ニューイヤー駅伝前の取材では次のように話していた。


「学生時代より駅伝の数が減り、年間を通してトラックの試合1本1本に集中できるようになりました。試合に出たらしっかり休んでまた、次の目標に向けて練習期間をしっかりとる。そのサイクルが上手く回り始めました。練習メニューは学生時代と大きく変わっていませんが、質的に少し上がっています。故障をしなくなっていることも大きい」


ニューイヤー駅伝は最長区間の2区で区間2位。池田耀平(26、Kao)には敗れたが、日本のトップを争う力はついていた。ニューイヤー駅伝後も一度しっかり休み、そこから練習のレベルを上げてきた。


10000mの日本記録は27分09秒80で、東京2025世界陸上参加標準記録は27分00秒00だが、鈴木は「26分台が明確な目標になっている」と言う。


「27分20秒33(24年八王子ロングディスタンス)がベストの選手が言うのは生意気かもしれませんが、チャレンジする力は付いてきていますし、その自信もだんだん大きくなってきています」


大学時代に日本トップレベルの戦いを経験し、学生駅伝で鍛えられ、卒業後に自身のスタイルを確立させて世界を目指す。鈴木に日本人初26分台の可能性を感じさせた日本選手権だった。


出場資格選手ランキングでは葛西が日本人トップ

葛西は日本選手権前の練習が、「2月、3月とまったくダメだった」ことで、昨年のように自身から仕掛けるレース展開ができなかった。


「自分が去年仕掛けたタイミング(残り1000m)で行かれてしまいました。僕が仕掛けるか、芽吹が仕掛けるか、少し予想はしていましたが、わかっていても反応する余力がありませんでした。芽吹が一枚上手だったかな、と思います。練習の状態からロングスパートはできないと思っていたので、仕掛けられたときにどう対応するか、だと思っていました。練習のままでしたね」


2位になったことでアジア選手権代表の可能性はあるが、「連覇したい気持ちがあったので、悔しさの方が大きいです」。


しかしRoad to Tokyo 2025(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)では、前回の優勝と今回の合計得点で、葛西が日本勢最上位にランクされている。葛西は10000mの東京2025世界陸上出場選手枠の27人に入っているが、鈴木はアジア選手権などで上積みが必要だ。


昨年の葛西はRoad to Paris 2024の出場人数枠に入るために、日本選手権2週間後にロンドンの大会に遠征。27分34秒14で走りパリ五輪出場資格を得た。しかし今回のようにパリ五輪前の練習が十分にできず、本番は20位(27分53秒18)に終わった。


今年は代表に決まれば1か月半後にアジア選手権があり、そこで好成績を残せば世界陸上出場資格を得られる。


「試合スケジュール的には昨年よりも余裕がありますが、今日負けてしまったので、気を引き締めないといけない」


年間最大目標の試合に向けて葛西は、昨年よりも良い流れに乗ることができるかもしれない。


(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)


スマホのバッテリーを長持ちさせるコツは?意外と知らない“スマホ充電の落とし穴”を専門家が解説【ひるおび】
「水道水がおいしい都道府県」全国1位は?“蛇口からミネラルウォーター”の地域も【ひるおび】
「パクされて自撮りを…」少年が初めて明かした「子どもキャンプの性被害」 審議進む日本版DBS “性暴力は許さない”姿勢や対策“見える化”し共有を【news23】


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ