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100m栁田大輝、200m鵜澤飛羽、110mH村竹ラシッド 日本の金メダルトリオ“大台”への手応えは【アジア選手権】

スポーツ
2025-06-02 17:00

陸上競技のアジア選手権は5月27~31日に韓国・クミで行われた。日本勢は金メダル5個(男子の100m、200m、1500m、110mハードルと女子400m)を獲得したが、そのうちの3種目は“大台”となる記録が期待されていた。残念ながら実現できなかったが、100mの栁田大輝(21、東洋大4年)は9秒台を、200mの鵜澤飛羽(22、JAL)は19秒台を、110mハードルの村竹ラシッド(23、JAL)は12秒台を、アジア選手権の走りでどう感じたのだろうか。“大台”を実現すれば、栁田と鵜澤は9月の東京2025世界陸上で決勝進出が、村竹はメダル獲得が見えてくる。


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栁田は9秒台への感触を「遠からず、近からず」と表現

栁田は大会2日目(5月28日)の男子100mで、日本人ではこの種目初の2連覇を達成した。昨年のU20世界陸上銀メダリストのプーリポン・ブンソーン(19、タイ)に、0.002秒という僅差で勝ちきったことは評価できたが、10秒20(追い風0.6m)とタイムは低調だった。今大会は4日目まで全般的に記録は低調で、湿度や気圧の影響を受けていた可能性がある。日本人5人目の9秒台を出せば同時に、10秒00の世界陸上参加標準記録を突破する。標準記録への距離感を問われた栁田は、「遠からず近からず、みたいな感じです」と答えた。


栁田は5月18日のゴールデングランプリ(以下GGP)で、10秒06(追い風1.1m)と、自己3番目の記録で優勝した。課題としていた部分への手応えもあり、アジア選手権では9秒台も狙っていた。だが4月下旬の日本学生個人選手権(準決勝で10秒09・追い風1.8m)、5月上旬の関東インカレ(優勝、9秒95・追い風4.5mで参考記録)、GGPと連戦した疲れで「体がカスカス。エネルギーが切れていた」という状態だった。


「GGP以上の走りをしたかったのですが、連戦で冬期に積んできたものを全部出し切った感じでした。それでも思った走りからかけ離れてはいなかったので、しっかり休んで練習すれば、今シーズンのこれまで以上の走りができると思っています」良い走りではなかったが、体の状態を考慮したら悪い走りでもない。それが9秒台に対して「遠からず近からず」という感想になっている。


何より、どの試合も勝ちきっていることは、本人も安心できる部分だろう。「記録を狙える試合ではありませんでしたが、(予選・準決勝・決勝と)しっかり3本走って勝てたことは、最低限ですがよかったと思います。少なからず走りの平均値は上がっている。7月上旬の日本選手権までにもう1回上げて行きます」GGPでは9秒台に関して、「今の100点の走りができれば出る」と話していた。見方を変えれば、地力がさらに上がれば100点の走りでなくても9秒台は出る。どちらの形でも9秒台が出たなら、世界陸上での決勝進出の可能性が大きくなる。
 


村竹は後半伸びるレース展開をしたことで12秒へのプロセスが明確に

大会3日目(29日)の男子110mハードル。村竹は前半で右隣の中国選手に先行されたが、後半でパリオリンピック™5位入賞の底力を見せて逆転。13秒22(追い風0.7m)で2位に0.09秒差を付けた。今季は12秒台が目標と言い続けてきたが、今大会直前には「優勝が目標。今季良くなっている前半を少し抑えて、後半しっかり伸びるレースをしたい」と、若干の修正をしていた。予定通りの展開で「負けるわけにはいかない」という思いで出場した大会に勝ちきった。


12秒台を出すために必要なことは?という質問には「今季のこれまでのレースで良かった前半と、アジア選手権で良かった後半の2つを上手く組み合わせることが第一」と答えた。もちろん、両者を組み合わせることは簡単ではない。「前半のスピードと、後半伸びるスピードをそのまま合わせられるわけではありません。後半伸ばすためには前半を、少しは抑えないといけない部分もあると思うんですが、(アジア選手権ほど抑えずにある程度のスピードを出しながら)後半で伸びるための動きを前半でする。その加減を上手く見つけられたら、と思います」


その走りを完成させるには、ある程度の期間がかかることも覚悟している。完成しない間も「アベレージを落とさないことを大事に」する。実際、昨季より「0.1秒くらい」上がっている実感がある。「その上でどこかの大会でタイムが上振れしたらいいですね。一番は世界陸上で12秒台を出すことです。そうなればメダルも実現できる」アジア選手権で後半伸びるレースに徹したことで、村竹は世界陸上までのプロセスをより明確に考えられるようになった。
 


鵜澤が目指すメダリストレベルの前半のスピード

大会5日目(最終日)の男子200mは、鵜澤が20秒12(追い風0.8m)で優勝。1973、75年のアナト・ラタナポール(タイ)以来、この種目50年ぶりの2連覇を達成した。


鵜澤は5月3日の静岡国際優勝時に20秒05(追い風2.1mで参考記録)で走っているが、公認の自己記録は静岡の予選でマークした20秒13(追い風0.8m)。しかしレース直後は自己新という認識を持てなかった。「予選(20秒94。向かい風1.0m)が上手くはまらない嫌なレース、良くないレースをしてしまったので、思ったより疲労がたまってしまいました。決勝のウォーミングアップでは20秒2台か3台かな、と感じていましたね。その状態で20秒1台が出たので、自分の感覚と体の状態がズレているのだと思います。そういうときはケガもしやすいので、日本選手権に向けて直していかないと」


標準記録を突破している鵜澤は、日本選手権で3位以内に入れば世界陸上代表に決まる。日本選手権もそうだが、世界陸上はラウンドを重ねて勝負をする。アジア選手権を予行演習的に活用するはずだったが、予選、準決勝(20秒67、向かい風0.9m)と良い走りができなかった。世界陸上本番では「予選から20秒0台、20秒1台」が必要と想定している。決勝で自己新が出ても、アジア選手権は納得できる結果とは言えなかった。


課題としていた前半からスピードを上げる走りも、アジア選手権ではできなかったという。昨年までは大学1年時(21年)に大きな故障をした影響もあり、前半から思い切ってスピードを上げる走りができなかった。後半のホームストレートは上位選手に匹敵する走りをしても、その走り方では19秒台を出すことや、五輪&世界陸上の準決勝を勝ち抜くことはできなかった。


静岡国際、アジア選手権の前半は、昨年までと比べると速くなっているが、鵜澤が目指すレベルには達していない。「やっぱりはまりが悪くて、足のはまりというか、お腹をはめたいんですけど、技術的な問題もあり速さに体が追いついていないんです。それをもう少し上手くやれば、前半のスピードがもうちょっと上がります。最大スピードが今11.2(m/秒)とか11.1なんですが、11.3が出れば19秒台が出ます。そこを目指して頑張りたい」


2年前のデータを日本陸上競技連盟が公表している。鵜澤のブダペスト世界陸上準決勝の最大速度は10.86m/秒だった(3組5位・20秒33。向かい風0.4m)。最大速度の出現地点は、どの選手も同じで55-80mである。今季の鵜澤のスピードが向上しているのがわかる。後半の減速が大きくなってしまっては記録は出ないが、まずは前半のスピード向上が、世界で戦う前提条件に設定している。


鵜澤が出したいと話した11.3m/秒はどのレベルなのだろうか。ブダペストで銀メダルを獲得したエリヨン・ナイトン(21、米国)は、鵜澤と同じ準決勝3組で11.27m/秒だった(1位、19秒98)。金メダルのノア・ライルズ(27、米国)の準決勝は11.35m/秒(19秒76)である。アジア選手権2連覇を自己新記録で達成したが、走りの内容には満足していない。鵜澤が目指しているのはメダリストレベルのスピードである。


(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)


*写真は左から、栁田大輝選手、鵜澤飛羽選手、村竹ラシッド選手


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