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【日本選手権展望】混戦の男子100m…今季不調のサニブラウンが代表入りに自信、昨年の失敗を教訓にする栁田大輝に9秒台の期待

スポーツ
2025-07-03 13:37

9月開催の東京2025世界陸上の最重要選考競技会である日本選手権が、7月4〜6日に東京国立競技場で行われる。日本最速を決める男子100mの予想が難しくなっている。昨年まで3シーズン連続9秒台で走ってきたサニブラウン アブデルハキーム(26、東レ)が、今季は4大会に出場して10秒3〜4台でしか走っていないのだ。それに対して栁田大輝(21、東洋大4年)がゴールデングランプリ(GGP)、アジア選手権と国際大会2連勝と好調。GGPでは10秒06(追い風1.1m)をマークし、9秒台への期待が高まっている。


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サニブラウンは課題だった30~40mの加速に手応え

6月27日に宮崎合宿を打ち上げたサニブラウンが、日本選手権での復調に自信を見せた。


「徐々に体が、頭に追いついて来たかな」


今季は特に、中盤の加速を課題としている。23年シーズン終了後のトレーニングで、スタートの改善に成功した。2歩目の動きを変更し、3歩目以降のロスが大きく軽減した。その成果は9秒96(追い風0.5m)の日本歴代2位として現れた。だがその走りを、パリ五輪準決勝でしても決勝に進めず、さらに上を目指すために何が必要かを考えた。GGP前日には次のように話していた。


「30〜40mくらいまでは良かったのですが、そこからまた乗っていかないといけないのに乗れなくて、60〜70mくらいまで一定のスピードで行くだけの走りになっていました。100mのうち30mを無駄にしているんです。9秒7~8台で走る選手はそこで伸びてくる」


冬期練習もそこを意識して行った。しかし、4月のダイヤモンドリーグ厦門(10秒42・追い風0.2m)は「ノーカウント」と話す事情があったが、6月の3連戦、ローマ(10秒31・追い風1.1m)、オランダ・ヘンゲロ(10秒44・向かい風1.0m)、フィンランド・ツルク(10秒34・追い風0.7m)と、中盤の加速に挑戦したが現時点ではできていない。


「スタートも含め、体が(やろうとしていることに)まったく追いついていませんでした」のなかでも試合を重ね、タイムには明確に表れていないものの、サニブラウンの感覚では進歩があった。


「オランダでちょっと修正して、フィンランドでは50m過ぎまで悪くない動きができていました。動きが噛み合っていないだけなのかな」。その点が宮崎合宿では、徐々に噛み合ってきた手応えを感じられたという。サニブラウンは今の状態を、風邪を引いたときの症状に例えた。


「熱が出て、咳が出て、鼻水が出て、治っていくパターンがあるじゃないですか。体に対する理解度が上がったことで、自分の体がこういう段階を踏んで、歯車が噛み合って走れるようになる。そういうアイデアがしっかり浮かぶようになりました。良い感じにまとまってきている段階です」


昨年の9秒96で、世界陸上の参加標準記録(10秒00)は突破済み。代表入りのためにタイムは必要ない。日本選手権では順位だけが求められ、3位以内に入れば代表に内定するし、今回の選考基準では決勝に進めば代表入りが有力になる。例年の状態なら何の問題もない選考基準だが、今季のタイムを見ると低くはないハードルである。


それでもサニブラウンは「勝負に関しては、(こだわりは)まったくないですね。準決勝を突破する、なんてことを考えていたら話にならないので」と、代表選考は気にしていない。意識するのは走りの内容を良くしていくことだけだ。


「(予選、準決勝、決勝と)1本1本、走るなかで明確にテーマを決めて、それをまた次のレース、次の大会につなげていけるように、パフォーマンスを上げていきたい」。今シーズンの一番の走りは世界陸上でできればいい、という考えもGGPの際に示していた。日本選手権は「世界陸上に向けて準備のための大会」と位置づけている。


栁田は0.005秒差でのパリ五輪代表漏れを教訓に

栁田大輝は昨年の日本選手権で3位。2位と同タイムの10秒14(向かい風0.2m)だったが、明確な着差があった。日本選手権前に代表に内定したサニブラウンが出場を回避していたため、栁田は3位でも代表3枠に入れなかった。


「僕だけ95m走でした」と栁田は1年前を振り返った。「それがなければ、と言ったらタラレバでよくありませんが、焦って5mも早くフィニッシュしなくてもいい展開で走れたら、そんなミスは絶対にしないと思うので」。


0.001秒単位の計測では、2位と0.005秒差が明暗を分けた。4×100mリレーメンバーとして代表入りはしたが、予選(2走)の走りが悪く、決勝のメンバーから外れてしまった。


23年は6月の日本選手権で2位、翌月のアジア選手権と、8月の世界陸上ブダペスト代表入りを決めた。アジア選手権で10秒02(無風)の自己新を出して優勝し、世界陸上ブダペストは準決勝に進出した。


しかし昨年は、シーズン序盤に10秒02の自己タイをマークしたが、公認範囲の2.0mに近い追い風(1.7m)の恩恵があった。シーズン全体を通じて走りが「ピッチ寄り」(土江寛裕コーチ)になり、特徴であるストライドの大きさを生かし切れなかったという。


日本選手権までがハードスケジュールだった影響もあった。5月頭にバハマの世界リレー選手権に出場し、帰国してGGPは優勝(10秒21・向かい風0.1m)したが、すぐに渡米してダイヤモンドリーグ・ユージーン大会に出場して8位(10秒26・追い風1.2m)。6月も日本学生個人選手権で優勝(10秒13・追い風1.4m)、そして6月末が日本選手権だった。


その反省で今季は試合選択も考慮している。5月のGGP、アジア選手権とポイントの高い国際試合で2連勝し、Road to Tokyo 2025(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)での世界陸上出場権獲得を有力にした。6月の日本インカレは100mを回避して4×100mリレーだけに絞った(ただし1走に挑戦して、代表試合での走順の引き出しを増やした)。


「去年はずっと走りがイマイチだったので、今年は右肩上がりになるように練習をしながら、レースにも出続けられている感触があります。日本選手権も自信を持って走れる」


前述のように栁田はRoad to Tokyo 2025のポイントで、出場枠の48人に入る可能性は高い。その場合は世界陸連の参加有資格者が公表される8月27日以降まで待たなければならない。標準記録の10秒00を予選、準決勝、決勝のどのラウンドでもいいのでクリアし、決勝で3位以内に入って即時内定を勝ち取ることが最善のルートだ。


レース展開は栁田が、スタートから前半でリードするだろう。サニブラウンの復調次第だが、中盤からサニブラウンが追い上げる展開が予想される。日本記録(9秒95)保持者の山縣亮太(33、セイコー)は、6月28日の広島県選手権で10秒12(追い風1.7m)と復調したが、中盤までに栁田に並びたい。木南記念に10秒09(追い風1.1m)で優勝した小池祐貴(30、住友電工)と、織田記念に10秒12(追い風0.4m)で優勝した井上直紀(21、早大4年)は後半型。フィニッシュライン直前での逆転もあるかもしれない。


9秒台での決着はもちろんのこと、複数の9秒台選手が現れることを期待したい。それができたとき、世界陸上4×100mリレーで、悲願の金メダルに近づく。


(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)


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