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来夏開幕“米女子プロ野球”で日本選手がドラフト指名 「自分らが活躍しないと次はない」西武ライオンズ・レディース若手の覚悟

スポーツ
2025-12-29 17:00

女子野球界初となるNPB12球団のプロ野球チーム名を冠した“埼玉西武ライオンズ・レディース”。埼玉・加須市を拠点に置くチームは2020年に発足し、今年で5年目を迎えた。


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現在、NPB球団を母体として作られた女子チームは、読売ジャイアンツ女子チーム、阪神タイガースWoman、そして埼玉西武ライオンズ・レディースの3チームのみ。高校や大学ではチーム数が年々増加するも女子野球の“その先”を示す道筋は発展途上にある。


そんな中、アメリカでは来年8月に女子プロ野球リーグ「WPBL(Women’s Professional Baseball League)」が開幕する。1943年から1954年まで存在した全米女子プロ野球リーグ (AAGPBL) 以来、72年ぶりの開催となる。アメリカ女子プロ野球リーグはボストン、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコの4球団でスタート。8月にワシントンで行われたトライアウトを経て、ライオンズ・レディースではロサンゼルスから里綾実(36)が1位、小櫃莉央(24)が20位、ニューヨークから米谷奈月(24)が7位でドラフト指名を受けた。


アメリカ挑戦がもたらした転機


今回のドラフトで里の上位指名が注目を集めた一方、初の海外挑戦に踏み出す期待の若手2人の言葉には、等身大の覚悟が詰まっていた。24年に尚美学園大学(埼玉)からライオンズ・レディースに入団した小櫃と米谷。指名を受けた小櫃は「びっくりした。(トライアウトでは)できることはやったし、悔いはないけど、自分の実力がアメリカで通用しているのかがわからなかったから、嬉しかった」と振り返る。


ニューヨークから指名を受けた米谷も「そんな高い順位で呼ばれると思っていなかった」と驚きを隠せず。トライアウトでは「やり切った」実感はあったものの、強い手応えは感じていなかっただけに「ほっとした」というのが正直な思いだった。


共に高校時代には侍ジャパン女子代表(U-18マドンナジャパン)に選出、第2回BFA女子野球アジアカップでは日本の連覇に貢献した。アジアを制した経験を持つ2人でも、トライアウトでは海外から集まる選手の“パワー”や“プレースタイル”に圧倒されたという。「日本人にはないものをアメリカ人は持っているし、アメリカ人にはないものを日本人は持っている」と小櫃は語る。


その差を肌で感じた上で挑むアメリカの舞台。女子野球界にとってこの挑戦は大きな一歩となる。「その瞬間に立ち会えて嬉しい。 約70年ぶりにってなった時に、そこに自分の名前があるのは野球人生の中でもいい経験だし、誇れることなのかなと思う」と米谷。続けて「自分らが活躍しないと次はない。結構な気持ちで、覚悟を持っていこうかなと思っている」と前を見据えた。


不安の中で芽生えた決意「恥ずかしいプレーはできない」


アメリカに行くにあたって不安なことも多いという。「野球のスタイルが全然違うから、適応できないとまず試合に出させてもらえない。コミュニケーションも言語もそうだし、なるべく自分を出して頑張っていかないと」。米谷がいうように野球以外の面でも乗り越える壁がある。


それでも挑戦の先にある成長に期待する。「新しい環境に行くことで、何かを得られるチャンス。野球以外にも海外の人間性だったり、文化だったり、そういうのは全部日本にいたらできないことだから楽しみ」。


小櫃はアメリカ挑戦に向け「アメリカで女子野球が広がって、自分たちの名前も知れ渡ったら、成功なのかなと思う」とビジョンを掲げる。「自分らのプレーがそのまま“日本人のプレー”になると思うから、恥ずかしいプレーはできない。日本人すごいなって思わせるようなプレーをしなきゃいけないなって思う」と決意を滲ませた。


女子野球の現在地と未来「この先にもっといいことが待っている」

そんな2人が口を揃えて願うのは日本の女子プロ野球復活だった。21年に経営難や選手減少などにより無期限休止となった女子プロ野球は事実上、消滅。現在ライオンズ・レディースは関東女子硬式野球連盟が運営するリーグ、ヴィーナスリーグに参加してるほか、クラブ選手権や全日本選手権などの大会に出場している。


小櫃は女子野球の現状をこう語る。「人口は増えているけど、世間的には全然。知らない人の方が多いし、知名度が一切ない」。続けて、女子選手のパワーやスピードを生かせるような環境づくりや柔軟さにも言及し「距離を縮めていくのもいいと思う。グラウンドのサイズも男子と同じである必要はないし、野球の面白さは三振やホームラン」。プレーヤー目線での考えも示した。


日本の女子野球はワールドカップ7連覇と世界屈指の強豪国でありながら、その実態を知る人は多くはない。競技レベルの高さとは裏腹に、国内での認知度や注目度は十分とは言えず、発展に向けた大きな課題とされている。多くの選手は、生活のために他の仕事と掛け持ちをしながら競技を続ける厳しい環境に身を置く。それでも彼女たちの野球に懸ける思いは揺らぐことはない。


米谷は今回のアメリカ挑戦を通して、日本女子野球の可能性にも思いを巡らせる。「アメリカでは、野球だけでお金をもらえる。それが日本にも流れてきてほしい」。さらに、次世代の選手たちに向けて「今女子野球をやっている子たちは、続けていけばもしかしたら、この先にもっといいことが待っているんじゃないかと思う」と希望を込めた。


小櫃もまた、日本の女子野球の未来に明るい兆しを感じている。「高校も大学もチーム数が増えている。アメリカにもプロ野球ができるってことで、(環境は)良くはなってるのかなと思う」。新たな挑戦を前にした率直な思いものぞかせた。「アメリカに行くことになっているけど、正直どうなるかはわからない。だからこそ、温かい目で見守ってほしい」。


「一緒に見ながら応援してもらえたらありがたい。何もない人生より、楽しい方がいいと思う」と新たな挑戦に臆せず、楽しむ気持ちを言葉にした米谷。日本の女子野球の未来を背負い、2人は未知の舞台へと歩みを進める。その一歩が、新たな可能性を切り拓くきっかけとなる。
 


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