
第54回全日本実業団ハーフマラソンが2月8日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで、2026海外ハーフマラソン派遣選考競技会を兼ねて行われた。女子は残り1km付近からリードした樺沢和佳奈(26、三井住友海上)が、1時間09分20秒の好記録で優勝。3月に初マラソンとして出場する名古屋ウィメンズに向け、大きな手応えを得た。パリ五輪にはトラックの5000mで出場した樺沢。名古屋ウィメンズマラソンの結果次第では、9月に名古屋開催のアジア大会代表への道が開ける。
降雪の影響がどんなところに現れたのか?
女子のレース終盤、降雪が激しくなった。「ラスト4~5kmくらいで吹雪きになり、前髪やサングラスに雪が積もったりして、前が見にくい部分がありました」と樺沢は振り返る。晴れの日のレースとは視界がまったく違い、前の選手の脚に接触したり、後ろから接触されたりすることが何度もあったという。
降雪がひどくなるまでは、ペースも悪くなかった。最初の5kmは上りなので16分44秒かかったが、10kmまでの5kmは16分12秒にペースアップ。だが10km以降は16分25秒、16分23秒と落ち着いたペースになっていた。
「寒すぎて最初は“動くかな”と心配でしたが、結構良いペースでレースが流れていき、(体が温まって)だんだん動くようになったのですが。もう少し天候的に恵まれていたら、ラスト3kmとかで仕掛けられたと思います。タイム的にももう少し行けたかな、というのはあります」
それでも、残り2kmからスパートした山﨑りさ(23、積水化学)を間もなく抜き去り、中地こころ(23、シスメックス)とのマッチレースに持ち込んだ。中地も20km付近から引き離し始め、4秒差を付けてフィニッシュした。トラックの周回はかなり走りにくく、最後の1.0975kmは3分36秒。一昨年の優勝時も残り1kmからリードしていったが、その時より若干遅くなった。降雪の影響を、特に女子は大きく受けた大会になった。
「走っていてキツくなかった」と樺沢
悪コンディションだったにもかかわらず、フィニッシュタイムは2年前の1時間10分13秒より53秒速い。それだけスピードアップしたにもかかわらず、樺沢は「ずっと、きついところがありませんでした」とさらりと話す。
「2年前はこの大会が冬期の最終目標でしたが、今年はあくまでも初マラソンへの通過点でした。距離走などマラソン練習を行って、疲労も取り切れていない中で、マラソンのレースペースを半分の距離でどの程度余裕度を持つことができるか。それを試したかったので、3分20秒平均で走るつもりでした(フィニッシュタイム1時間10分20秒)。しかしレースペースよりちょっと速くなり、キツく感じるところがどこかあるかな、と覚悟していましたが、ありませんでしたね」
樺沢にどのくらいの余裕だったかを質問すると、「お喋りすることもできるくらい」という答えが返ってきた。雪のため脚の接触が何度も起きていたが、「見えなくてご免」など、何度も声を出していたという。
余裕を持てた理由の1つに、マラソン練習を行ってスタミナをアップさせながら、トラック代表だったスピードも失わずに出せることが挙げられる。樺沢によれば「1週間前に40km走」をして、練習の距離を減らすなどの調整はしないでハーフマラソンを走った。40km走はマラソンのレースペースよりも、かなり遅いスピードで走る。スピードを上げて走ってしまったら、次の練習ができなくなってしまうからだ。
三井住友海上の鈴木尚人監督は、「樺沢は距離を走っている期間でも、スピードをポンと上げることができる。心肺機能が強いからできるのだと思います」と説明する。今大会の平均ペースは、樺沢の想定より3秒近い速い3分17秒ちょっとになった。さらには「3分15秒、13秒と上がったところもありましたが、キツくならずに行けたのは、距離を踏んでいる成果」だと感じている。
夏にも長めの距離を意識して練習してきたが、12月6日の10000mで31分03秒14と自己記録を40秒以上更新した後は、「月に1000kmちょっと。以前の1.5倍くらい」と走る距離を増やしている。その成果をハーフマラソンのレースで確認できた。
初マラソン日本最高の矢田が刺激に
今回の走りを踏まえ、初マラソンでは「3分20秒で押して2時間20分台も、夢ではないかな」という思いも持ち始めた。ハーフマラソンを3分20秒ペースで走ると決めたときから、マラソンの2時間20分台は目標にしていた。しかし今大会前の取材では「まずはMGCの出場権を取ること。たくさん速い人が出るので(日本人7位以下でも出場権が獲得できる)2時間23分30秒をクリアしたい」と話していた。ハーフマラソンの結果で、2時間20分台への気持ちの方が少し大きくなったと見てよさそうだ。
1月25日の大阪国際女子マラソンでは、東京2025世界陸上10000m代表だった矢田みくに(26、エディオン)が、2時間19分57秒の初マラソン日本最高をマークした。樺沢は「ワクワクした」と矢田の走りへの感想を明かした。「テレビでしっかり、フルで見させていただきました。トラックランナーにとって大きな希望となる走りでした」。樺沢が目標と言っている3分20秒平均で走り通せば、2時間20分39秒になる。気象条件やレース展開に恵まれれば、矢田の記録も手が届かない範囲ではない。矢田の記録を超えればアジア大会代表入りも有力になる。
全日本実業団ハーフマラソンは、樺沢にとってどんな大会になったと言えるのか。「マラソンへの第一歩ですかね」と答えてくれたが、“かなり大きな第一歩だった”と、見ている側には感じられた。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
・「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
・【裁判詳細】女子大生2人焼死事故 両親「怒りでどうにかなってしまいそう」「遺体と対面し本当の絶望を知った」追突トラック運転の男「ぼーっとしていた」起訴内容認める 山口
・「あんな微罪で死ぬことはないだろう…」逮捕直前にホテルで命を絶った新井将敬 衆院議員「この場に帰って来れないかもしれないけども、最後の言葉に嘘はありませんから」【平成事件史の舞台裏(28)】
