国内
2025-09-19 09:10

夜空を舞台に展開される光と動きの演出が目にも楽しいドローンショー。その斬新なエンタメ性はもとより、昨今はその役割も多様化しており、今年の「長岡まつり大花火大会」ではドローンを活用した分散退場を促す取り組みが、「第59回おたる潮まつり大花火大会」、全国花火競技大会「大曲の花火」では大合唱を先導する演出が話題を集めた。技術の進化で表現の幅もますます広がるドローンショー。社会にマッチングした多様性の展望について、大阪・関西万博をはじめ大型ドローンショーを数多く手掛ける業界最大手の株式会社レッドクリフ代表に聞いた。
【写真】大混雑の万博も「どっちに帰ればいいか分かる」…東ゲートと西ゲートを案内するドローン
■“空をメディア化”したドローンショー「エンタメと広告が違和感なく共存できるのも価値の1つ」
花火大会を筆頭にドローンショーを導入する屋外イベントが増えている。その視覚的な華やかさや斬新性はニュース素材として最適で、この夏は多くのメディアが花火大会とともにドローンショーの模様を報じていた印象だ。
ドローンショーを企画・運営する(株)レッドクリフの代表取締役/CEO・佐々木孔明さんによると、今年初めてドローンショーを開催した花火大会も多く、「全国の主要花火大会のほぼすべてに導入されたのではないか」とその急激な普及の現状を語る。
「ドローンショーの需要が伸びているのは、空をメディア化した情報伝達ツールとして非常に優れているからです。中でも広告との相性はバツグンにいい。エンタメ性と広告性が違和感なく共存できているのも、ドローンショーの価値の1つだと言えます。例えば、広告というのは積極的に見たいものではなく、目障りだと感じる方も多いでしょう。ですがドローンショーであれば能動的に見てくれるきっかけを作れますし、多くの方がSNSに投稿してくれるため、2次拡散効果も高いんです」
イベントにとっては企業から協賛金が集まる、企業にとってはプロモーション効果が高い。そして来場者はもちろん見て楽しい。ドローンショーはまさに"三方よし"のビジネスモデルと言えるだろう。
「このビジネスモデルにおいて、弊社は"空のメディア"を販売する立ち位置にあります。ドローンショーが定着した昨今、企業からはさらに斬新かつ最先端な演出が求められるようになりました。そうした高い要求に対して、いかにクオリティ高くアイデアに溢れたドローンショーを提案できるかはますます勝負どころになっています」
■ドローンショーが担う多様性、どれだけ強調するのか“塩梅”を見極める
国内最多のドローン機体を保有するレッドクリフは、手掛けるイベントの数や規模でも他の追随を許さない実績を誇る。さらに昨今は「見て楽しい」だけにとどまらない“機能”を付加したドローンショーでも注目を集めている。
その1例は100万人以上が来場した「長岡まつり大花火大会」で、フィナーレ演出を務めた同社のドローンショーが“分散退場”の役割を担ったとして、SNSでは高く評価をする声が上がっている。
「長岡の花火大会は慰霊の思いが込められた伝統行事です。ですからドローンショーが目立ってはいけない。あくまで主催側のメッセージを伝えることに徹するなど、派手な演出で多くの方の足を止めないよう"塩梅"に配慮しました。ひいてはこれがドローンを見上げる方と帰路を急ぐ方を分散することにも繋がるなど、安全に退場していただける人流作りに貢献できたのではないかと実感しています」
実はドローンショーを活用したレッドクリフの人流誘導の取り組みは、先行事例がある。大阪・関西万博で毎晩行われているドローンショーには、東西のゲート位置を示す演出を盛り込んだ。特に夜は迷いやすいとされる万博会場で、空を見上げれば進む方向がわかる動線設計がされたというわけだ。
「何十万人と人の集まるイベントにおいては、適切な人流誘導が欠かせません。長岡花火と万博の手応えを得て、今後さらに安全なイベント運営のためのドローンショー活用が広がることに期待しています」
一方で広告プロモーションとしてのドローンショーは“バズる”ことも大きな目的の1つ。いかにSNS映えするか、さらに拡散したくなるための仕掛けや工夫にも余念がない。
たとえばこの夏に開催された「立川まつり 国営昭和記念公園花火×シャウエッセン花火」では、誰でも魅力的な動画や写真が撮れるように「花火がまわるよ シャッターチャンス」という文字を空に浮かび上がらせるなどした。
「いかにスマホを向けていただくか、シェアしたくなるかという演出のアイデアを常に考え続けています。中でも昨今のヒットは"ドローンショーQR(R)"でした。空に二次元コードが表示されるという意外性に『本当に読めるの?』と思わずスマホを向けたくなり、『本当に読めた!』という驚きからSNSに拡散したくなる。さらにそのSNSを見た人が二次元コードを読み込んでくれるという副次的な効果まで生まれています」
■オワコン化するか、定着するか…決め手は「社会に必要とされる」こと
ドローンショーは空をスクリーンとした壮大なドット絵のようなもの。ドローンの機体が増えれば、それだけ表現の幅も広がるわけで、正確に読み取れる二次元コードもその1つの活用例だ。
さらに昨年9月には中国のドローンメーカーと共同で、7998機のドローンによって初音ミクの楽曲『Intergalactic Bound』MVを夜空で再現。世界最大のスクリーンを夜空に映し出したこの挑戦は、ギネス世界記録にも認定されている。
「今年から来年にかけて、本格的に海外展開を視野に入れています。ドローンショーの会社は世界に数多くありますが、弊社の強みはなんと言ってもドローンショーのアニメーションを描けるほどの精度とクオリティ。昨今は海外の企業からもその点が認められ、依頼も増えています。今後はさらに『日本発のドローンショー会社』として、アニメをはじめとする日本のコンテンツとコラボしたドローンショーの創出に力を入れていきたいと考えています」
もちろん国内でもまだドローンショーを目撃したことのない人も多いだけに、「さらに多くのイベントに進出したい」と意欲を燃やす。
「どんなコンテンツもいつかは新規性を失うものです。その時にオワコン化するか、定着するか。ドローンショーもやがて必ずその岐路に立たされる時が来ます。その時の生き残りの決め手となるのが、いかに社会に必要とされるかということだと思うんですね。昨今はドローンショーの導入によって協賛企業が獲得しやすくなった、有料開催が可能になった等の評価をいただくことが増えました。特に地方では、資金不足などの問題から開催を見送るイベントが増えているだけに、イベントの持続可能性に貢献できるドローンショーのあり方を、今後はさらに追求していきたいです」と語る佐々木氏。
さらに現在のドローンは機能性に優れ、煙などを用いた昼のショー演出も可能になっているという。「ブルーインパルスならぬ“ドローンインパルス”の実現や、ドローンショー大会の開催などにも挑戦していきたい」と、未来への展望を力強く語った。
(取材・文/児玉澄子)
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■“空をメディア化”したドローンショー「エンタメと広告が違和感なく共存できるのも価値の1つ」
花火大会を筆頭にドローンショーを導入する屋外イベントが増えている。その視覚的な華やかさや斬新性はニュース素材として最適で、この夏は多くのメディアが花火大会とともにドローンショーの模様を報じていた印象だ。
ドローンショーを企画・運営する(株)レッドクリフの代表取締役/CEO・佐々木孔明さんによると、今年初めてドローンショーを開催した花火大会も多く、「全国の主要花火大会のほぼすべてに導入されたのではないか」とその急激な普及の現状を語る。
「ドローンショーの需要が伸びているのは、空をメディア化した情報伝達ツールとして非常に優れているからです。中でも広告との相性はバツグンにいい。エンタメ性と広告性が違和感なく共存できているのも、ドローンショーの価値の1つだと言えます。例えば、広告というのは積極的に見たいものではなく、目障りだと感じる方も多いでしょう。ですがドローンショーであれば能動的に見てくれるきっかけを作れますし、多くの方がSNSに投稿してくれるため、2次拡散効果も高いんです」
イベントにとっては企業から協賛金が集まる、企業にとってはプロモーション効果が高い。そして来場者はもちろん見て楽しい。ドローンショーはまさに"三方よし"のビジネスモデルと言えるだろう。
「このビジネスモデルにおいて、弊社は"空のメディア"を販売する立ち位置にあります。ドローンショーが定着した昨今、企業からはさらに斬新かつ最先端な演出が求められるようになりました。そうした高い要求に対して、いかにクオリティ高くアイデアに溢れたドローンショーを提案できるかはますます勝負どころになっています」
■ドローンショーが担う多様性、どれだけ強調するのか“塩梅”を見極める
国内最多のドローン機体を保有するレッドクリフは、手掛けるイベントの数や規模でも他の追随を許さない実績を誇る。さらに昨今は「見て楽しい」だけにとどまらない“機能”を付加したドローンショーでも注目を集めている。
その1例は100万人以上が来場した「長岡まつり大花火大会」で、フィナーレ演出を務めた同社のドローンショーが“分散退場”の役割を担ったとして、SNSでは高く評価をする声が上がっている。
「長岡の花火大会は慰霊の思いが込められた伝統行事です。ですからドローンショーが目立ってはいけない。あくまで主催側のメッセージを伝えることに徹するなど、派手な演出で多くの方の足を止めないよう"塩梅"に配慮しました。ひいてはこれがドローンを見上げる方と帰路を急ぐ方を分散することにも繋がるなど、安全に退場していただける人流作りに貢献できたのではないかと実感しています」
実はドローンショーを活用したレッドクリフの人流誘導の取り組みは、先行事例がある。大阪・関西万博で毎晩行われているドローンショーには、東西のゲート位置を示す演出を盛り込んだ。特に夜は迷いやすいとされる万博会場で、空を見上げれば進む方向がわかる動線設計がされたというわけだ。
「何十万人と人の集まるイベントにおいては、適切な人流誘導が欠かせません。長岡花火と万博の手応えを得て、今後さらに安全なイベント運営のためのドローンショー活用が広がることに期待しています」
一方で広告プロモーションとしてのドローンショーは“バズる”ことも大きな目的の1つ。いかにSNS映えするか、さらに拡散したくなるための仕掛けや工夫にも余念がない。
たとえばこの夏に開催された「立川まつり 国営昭和記念公園花火×シャウエッセン花火」では、誰でも魅力的な動画や写真が撮れるように「花火がまわるよ シャッターチャンス」という文字を空に浮かび上がらせるなどした。
「いかにスマホを向けていただくか、シェアしたくなるかという演出のアイデアを常に考え続けています。中でも昨今のヒットは"ドローンショーQR(R)"でした。空に二次元コードが表示されるという意外性に『本当に読めるの?』と思わずスマホを向けたくなり、『本当に読めた!』という驚きからSNSに拡散したくなる。さらにそのSNSを見た人が二次元コードを読み込んでくれるという副次的な効果まで生まれています」
■オワコン化するか、定着するか…決め手は「社会に必要とされる」こと
ドローンショーは空をスクリーンとした壮大なドット絵のようなもの。ドローンの機体が増えれば、それだけ表現の幅も広がるわけで、正確に読み取れる二次元コードもその1つの活用例だ。
さらに昨年9月には中国のドローンメーカーと共同で、7998機のドローンによって初音ミクの楽曲『Intergalactic Bound』MVを夜空で再現。世界最大のスクリーンを夜空に映し出したこの挑戦は、ギネス世界記録にも認定されている。
「今年から来年にかけて、本格的に海外展開を視野に入れています。ドローンショーの会社は世界に数多くありますが、弊社の強みはなんと言ってもドローンショーのアニメーションを描けるほどの精度とクオリティ。昨今は海外の企業からもその点が認められ、依頼も増えています。今後はさらに『日本発のドローンショー会社』として、アニメをはじめとする日本のコンテンツとコラボしたドローンショーの創出に力を入れていきたいと考えています」
もちろん国内でもまだドローンショーを目撃したことのない人も多いだけに、「さらに多くのイベントに進出したい」と意欲を燃やす。
「どんなコンテンツもいつかは新規性を失うものです。その時にオワコン化するか、定着するか。ドローンショーもやがて必ずその岐路に立たされる時が来ます。その時の生き残りの決め手となるのが、いかに社会に必要とされるかということだと思うんですね。昨今はドローンショーの導入によって協賛企業が獲得しやすくなった、有料開催が可能になった等の評価をいただくことが増えました。特に地方では、資金不足などの問題から開催を見送るイベントが増えているだけに、イベントの持続可能性に貢献できるドローンショーのあり方を、今後はさらに追求していきたいです」と語る佐々木氏。
さらに現在のドローンは機能性に優れ、煙などを用いた昼のショー演出も可能になっているという。「ブルーインパルスならぬ“ドローンインパルス”の実現や、ドローンショー大会の開催などにも挑戦していきたい」と、未来への展望を力強く語った。
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