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自公連立解消の裏で・・・石破総理が「戦後80年所感」発表に込めた思い「なぜ、あの戦争を避けること出来なかったのか」現代に繋がる課題も浮き彫りに

国内
2025-10-12 06:30

10月10日午後4時前、永田町は衝撃に包まれた。公明党の斉藤代表が自民党との連立解消を表明したのだ。26年続いた自公の協力関係に終止符が打たれる歴史的な一日となった。


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そして、政治史に残るもう一つの出来事が、その裏でおこなわれていた。石破総理による戦後80年の総理所感の発表だ。総理官邸の記者会見室は、外の喧噪とは異なり、静謐な空気に包まれていた。会見の冒頭、石破総理は「所感は国民の皆様方と一緒に考えるためのもの」と呼びかけ、質疑を合わせ約1時間半の会見に臨んだ。石破総理が戦後80年の総理所感に込めた思いとは―


なぜ、あの戦争を避けることが出来なかったのか…「国民の皆様と共に考えたい」

石破総理の所感の発表に当たっては、自民党の保守派を中心に「安倍元総理の70年談話で『歴史認識の問題は決着済みだ』」などとして反対する声もあった。だが、石破総理はこうした声を受け止めながらも記者会見に踏み切った。


会見のはじめには「戦後50年、60年、70年の節目に、内閣総理大臣談話が発出をされており、歴史認識に関する歴代内閣の立場は私も引き継いでおります」と、懸念の声に配慮を見せた。


その上で、「過去3度の談話では、なぜあの戦争を避けることができなかったのかという点について、あまり触れられていない」と指摘し、「当時の日本の国内の政治システムは、なぜ歯止めたりえなかったのか。今回発出した所感は、これまでの談話における残された課題に対する私なりの考えであり、国民の皆様方と一緒に考えるためのものだ」と訴えた。


開戦前「日本必敗」の予測も…政治システム、メディアの問題点

1941年の日米開戦前、内閣が若手官僚ら精鋭を集め設置した「総力戦研究所」では、「日本必敗」の予測が出ていた。にもかかわらず、なぜ大きな路線の見直しが出来なかったのか、石破総理は会見で“軍人ではなく政治家などによる「文民統制」の原則が、制度上存在しなかった”と指摘した。

そして、「政党間の政権争いが激化し、政党が次第に国民の信頼を失う中、政府は軍部に対する統制を失っていった」と語った。


所感では、石破総理の強いこだわりが見えた部分もある。

それは、戦争の泥沼化を批判し、戦争の目的について政府を厳しく追及して除名処分となった斎藤隆夫衆院議員の「反軍演説」について触れたことだ。衆議院本会議でおこなわれたこの反軍演説は、内容が不適切との理由で、議事録から3分の2近くが削除されているのだが、会見では当時の議会について「軍に対する統制機能としては、予算審議が極めて重要だが、チェック機能を果たしていたとは全く言いがたい状況だった」と指摘した。

石破総理はこの「反軍演説」の議事録への復活に意欲を見せている。


そして、メディアの問題にも言及した。所感では「満州事変が起こった頃から、メディアの論調は、積極的な戦争支持に変わった。戦争報道が『売れた』からであり、新聞各紙は大きく発行部数を伸ばした。日本本土の数倍の土地を占領すると新聞はこれを大々的に報道し、多くの国民はこれに幻惑され、ナショナリズムは更に高まった」と検証している。


今日への教訓 「無責任なポピュリズム」と「偏狭なナショナリズム」に警鐘

石破総理は今回の戦争の検証を踏まえ、今日への教訓として

<政治に対して>
無責任なポピュリズムに屈しない大勢に流されない政治家としての矜持と責任感を持たなければならない

<メディアに対して>
過度な商業主義に陥ってはならず偏狭なナショナリズム、差別や排外主義を許してはならない

などと注文を付け、「過去を直視する勇気、誠実さ。他者の主張にも謙虚に耳を傾ける寛容さを持った本来のリベラリズム。健全で強靭な民主主義が何よりも大切だ」と訴えた。


石破総理が所感発表にこだわった理由

所感の発表に反発する声もある中、石破総理が戦後80年の節目に所感を発表することにこだわったのには、世界で「ポピュリズム」や「排外主義」が広がっていることへの危機感がある。

欧米を中心に今、国際社会では「分断と対立」が顕在化してきている。石破総理は「”対立と分断”や”無責任な言論”の土壌が作られないよう、政治が努力することが必要だと今強く思っている」と強調した。


国内を見てみれば、日本も今、「ポピュリズム」や「排外的」な主張による「分断と対立」の懸念が広がりを見せている。

会見で石破総理は、「今回の所感は、国内の政治状況を念頭に置いたものではなく、人類共通の課題」だと強調したが、戦後80年の所感は、戦争だけでなく、いま日本や世界が直面する諸課題にも通じるメッセージにもなっているように感じられた。


ただ、石破総理の戦後80年の所感は、当時の政治システムに焦点が当てられたこともあり、内容が不十分との声も上がる。


こうした声も踏まえ、石破総理は最後、「歴史に正面から向き合うことなくして、明るい未来が開けることはない」と強調した上で、次のように所感を締めくくった。

「私は、国民の皆様と共に、先の大戦の様々な教訓を踏まえ、二度とあのような惨禍を繰り返すことのないよう、能う限り(=できる限り)の努力をしてまいります」


在職期間は1年余り、まもなく退陣を迎える石破総理だが、その評価は歴史が証明することになるのだろう。


TBSテレビ報道局政治部
官邸キャップ 中島哲平


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