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“退職代行”大手「モームリ」に強制捜査 「違法行為を口外しないようにと」元従業員が証言 弁護士から“紹介料”受領の疑いで警視庁が捜索【news23】

国内
2025-10-23 12:14

若者らを中心に利用が広がる退職代行サービス。その大手「モームリ」の運営会社などに、警視庁が弁護士法違反の疑いで家宅捜索に入りました。元従業員がJNNの取材に応じ、「違法行為を口外しないように言われていた」などと証言しました。


【写真を見る】「必ず弁護士に紹介してと会社からの指示」元従業員の証言


「健全に運営しています」利用広がる“退職代行”に捜査

若者らの間で利用が広がる「退職代行サービス」。仕事を辞めたい人が「退職代行サービス」に依頼すると、本人に代わって退職の意思を会社に通知。貸与品の返却など退職で必要となる実務も、「退職代行」が間に入って進めます。


転職が活発となる中、退職の際のトラブル・ストレスの軽減に需要が生まれ、2025年7月に行われた民間の調査では、退職代行サービスを「利用したことがある」と回答した転職者は18%に上りました。


その大手の一つが「退職代行モームリ」。2022年にサービスを開始し、積極的な広告・宣伝で急成長しました。

利用料金は正社員の場合2万2000円、パート・アルバイトは1万2000円で、24時間365日相談を受け付けています。


「累計4万件以上の退職を確定させた」とPRし、直近の売上高は前の期の3倍にあたる、3億円余りに伸ばしていましたが警視庁は22日、東京・品川区にあるモームリの運営会社「アルバトロス」の本社や都内の法律事務所などを家宅捜索しました。

捜査員およそ100人態勢、捜索の容疑は「弁護士法違反」です。


弁護士法では、弁護士資格を持たない人が報酬目的で▼代理で法律関連の交渉を行ったり、▼法的な仕事を第三者にあっせんしたりする「非弁」と呼ばれる行為を禁止しています。

今回の容疑に当たるのは「あっせん行為」です。


捜査関係者によると、アルバトロスは退職代行の法的な仕事を弁護士にあっせんし、さらに弁護士側から紹介料を受け取った疑いが持たれています。


「モームリ」運営会社 谷本慎二 社長(5月)
「もう本当に苦しんでる方々の駆け込み寺という形で、退職代行が増えたのかなと思っています。退職代行による退職者をどんどん増やしていって、企業の抑止力になって労務関係が良くなって、いずれ退職代行がなくなる。そういった姿を目指しています」


創業者の谷本慎二社長は、業界の“牽引役”として退職代行の「健全性」を訴えていました。


谷本慎二 社長(「モームリ」YouTubeより)
「(法的な)交渉しなければ退職代行は違法ではないです。退職代行が違法ではなく、違法な退職代行もあるというのが正しい見解です。私たちは健全に運営をしています」


「違法行為だから会社外で口にしないで、と」元従業員の証言

しかし、取材に応じた元従業員は谷本社長が「違法性を認識しながらあっせん行為に関与していた」と証言しました。


「モームリ」元従業員
「紹介して成約したら1万6500円のバックがありますよ。必ず弁護士に紹介してください。という会社からの案内というか、指示ですね。(谷本社長が)『売り上げに繋がるし、ちゃんと紹介してね』ということを社員全員の前で言われたので」

――違法な行為だとわかってやっていた?
「そうですね。『違法行為だから、絶対会社外で口にしないでね』って。(社長は)完全に違法だということは把握しています」


元従業員によると、弁護士へのあっせん行為は、1か月で多い時に20件から30件ほどあったといいます。


「モームリ」元従業員
「『依頼受け付けられません』って言って売り上げゼロで流すよりも、弁護士に紹介して、バックもらった方が売り上げになるよねっていうことで。周りの同僚や仲のいい社員に対しても『やめた方ががいいよ』ということは何度か口にしました」


谷本社長は2025年4月、自身のSNSで

谷本慎二社長のX
「弁護士から報酬はもらってないです。創業時から弁護士に相談して法律を遵守して行っています」


22日の家宅捜索を受け、「モームリ」を運営するアルバトロスに取材を申し込みましたが、回答はありませんでした。


捜査関係者によると、残業代の請求など法律に関わる交渉を弁護士以外の人が行う「非弁行為」も確認されているといいます。

警視庁は今後、押収した資料を分析するなどして他に違法性がある業務がないかを含め、実態解明を進める方針です。


“弁護士を紹介”がなぜ違法に?

藤森キャスター:
今回は退職代行サービス「モームリ」の運営会社アルバトロスが、退職希望者を法律事務所に紹介し、法律事務所から報酬を受け取った疑いです。

弁護士法では、弁護士以外の人が報酬目的で▼法律事務の仕事をあっせんすること、▼法律に関わる交渉を行うことを禁止しています。今回はあっせんしたとして、運営会社のアルバトロスと法律事務所に家宅捜索が入りました。また捜査関係者の話では、「法律に関わる交渉」にも関与している疑いがあるということです。


なぜ、弁護士以外のあっせんや交渉が禁止されているのか。東京弁護士会の小町谷悠介弁護士によると、「癒着が生まれ、紹介料をもらうことに躍起になる」「専門的な知識があって権利・義務に関する交渉が許される」といいます。

弁護士側が困っている人を助けるのではなく、事業者の利益のために動くようになってしまう恐れがあり、専門的な知識がないのに権利・義務に関する交渉に関与するのは、許される行為ではありません。

またサービスの利用者、退職希望者に罪が問われることは「基本的にはない」と小町谷弁護士は話しています。


トラウデン直美さん:
代表は否定していますが、もし違法性を認識していたのだったら、かなりまずいのではないかというところです。運営会社だけではなく、法律事務所側は法律のプロなので、確実に把握しているはずです。そちらもかなり問題だと思うので、きちんと真相を解明してほしいと思います。


「退職代行を利用したことがある」半数以上が20代…なぜ?

藤森キャスター:
この退職代行、実はいま、若い世代を中心に利用が広がっているというデータがあります。2025年7月の調査で転職した人のうち、「退職代行をこれまで一度でも利用したことがある」と答えた人が18%いました。内訳を見ると、半数以上が20代となっています。


【転職者のうち「退職代行」これまで一度でも利用したことがある】
18%(内訳 20代:51%、30代:30%、40代:13.3%、50代:5.6%)
※マイナビ調べ・一部参考値


小川彩佳キャスター:
時代の要請も退職代行にはあると思います。しかし、雇用する側のハラスメントや搾取がベースとなり、増えてしまっているところもあると考えると、退職代行が広がっていく社会はどうなのか、というところにも改めて目を向けていく必要がありそうです。


トラウデン直美さん:
ここまで伸びているのは、それだけのニーズがあったことの裏返しだと思います。辞めづらい、「辞める」と言えない環境、「ブラック企業だった」「人間関係があまりうまくいってない」だけではなく、人手不足の中で責任があり、自分が会社の中で役割を果たしているなか、辞めたいことに対する罪悪感もきっとあると思います。

一方で、人材不足だからこそ転職はしやすい。そういった時代の背景もかみ合って退職代行がものすごく伸びていることは、よく理解できる気がします。

ただ、このサービスで救われた人もたくさんいるとは思いますが、コミュニケーションをとることが大きなストレスになっているこの状況は、歪なものがあるのではないかと思います。


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<プロフィール>
トラウデン直美
Forbes JAPAN「世界を変える30歳未満」受賞
趣味は乗馬・園芸・旅行


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