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高市総理が労働規制の“緩和”検討を指示…「働き方改革」はどうなる? 「娘は働いて働いて亡くなった」過労死遺族は懸念【news23】

国内
2025-10-24 15:21

高市総理が“労働時間の規制緩和”について閣僚に検討するよう指示したことが波紋を呼んでいます。私たちの働き方が変わるんでしょうか?


【データを見る】「労働時間規制の緩和をどう思うか?」アンケートの回答


「娘は働いて亡くなった」遺族反発

横田早紀江さんら拉致被害者の家族会と面会した高市総理。27日から来日するトランプ大統領に拉致問題への理解と協力を求めていく考えを示しました。


新政権発足から3日目。23日も次々と公務をこなしていきます。


自民党 高市早苗新総裁 
「働いて、働いて、働いて、働いて、働いて参ります」


「働く」を連呼し、自民党総裁への意気込みを語っていた高市氏。その高市総理が21日、厚労大臣に出した指示書が波紋を広げています。


高市総理から厚労大臣への指示書
「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討を行う」


残業時間の上限を定めた労働時間規制について、緩和の検討を指示したのです。過労死などで家族を亡くした遺族たちには、不安が広がっています。


23日、国会内で開かれた会合では…


髙橋まつりさんの母 幸美さん
「みなさん娘のことをまだ覚えていてくださるでしょうか。10年前、2015年のクリスマスの朝、娘はマンションから飛び降りて亡くなりました。娘は正社員になってから、眠れないほど仕事の長時間労働で、心も身体も追い詰められてきました」


髙橋さんの娘、高橋まつりさん(当時24)は、大手広告会社「電通」に入社した2015年、過労の末、自ら命を絶ちました。


髙橋まつりさんの母 幸美さん
「本当に守ってあげられなくて。10年経つけど、娘との楽しかった日のことばかりが思い起こされて。生きてたら、もっともっと楽しい事がいっぱいあったのにと思うと…なんで死ななきゃいけなかったのか。本当に悲しいです」
「(Q高市総理の労働時間規制緩和の検討指示について)労働時間の規制緩和は本当にしないで欲しい。娘は『働いて、働いて』長時間労働の末、過労自殺で亡くなってしまった」


長時間労働による過労死をなくすために導入されたのが、残業時間の制限です。2019年に施行された「働き方改革関連法」では、時間外労働の上限は原則、1か月に45時間、1年で360時間までと定められました。


施行から5年。見直しの議論が続いてきた中での総理の指示に…


上野賢一郎 厚労大臣
「21日の総理からの指示も踏まえて、今後、総点検の結果を精査しながら、審議会等での議論を深めてまいりたい」


街の人はどう感じる? 懸念も

実際、街の人は「もっと働きたいのか」、それとも「今よりは働きたくないのか」聞いてきました。


働きたくない 20代 薬剤師
「まだ若くて、やりたいこともたくさんあるので、残業とかしないで仕事が終わったらすぐ切り上げて、今できることをやりたい」


働きたくない 事務職
「(以前の職場で)定時に上がるとあまり良い顔されないとか、遅くまで頑張っていると頑張っていて偉いねって褒めてもらえたりとか。明確に残業しなさい、残りなさいって言われるわけではないが、残業してる姿勢の方が好意的に思われる態度を、上司や周りの方からされることがあった」


もっと働きたい 60代 会社員
「もう私たちはバブルの世代なので、24時間働いていましたから。11時頃に帰ると寂しいくらいでした。(Qどのくらい残業してる?)もう残業はしていません。午前9時〜午後5時とか定時でやっています。契約的に、いくら残業しても1円もお金が増えない契約なので」


もっと働きたい 50代 会社員
「まず家のローンが残っているということ。あと老後を充実したい。収入の面でまだまだ稼ぎたいので、まだもっと働きたい」


一方で、自身は管理職の立場から部下には…


「部下に対しては‟残業ゼロ”にしていただき、私生活のほうを充実してもらいたいという思いはある」


いまのままで良い 20代 事務職 
「強制的になるとよくないかなと。法律があるから守ることが義務付けられていたところが、法律が緩和されて、みんな働くしかないみたいな形で、弱音を上げられない環境にはならないほうがいい」


本当に必要な“働き方改革”は?

藤森祥平キャスター:
労働環境全般として、現場ではいま人手不足に悩んでいる声が上がっています。2024年「労働力調査」によると、「労働時間を増やしたい」と思っている人は全体で約6.4%なんですね。これを受けて、国が実際どう動くのかという点です。


小川彩佳キャスター:
高市総理が指示したのは、「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした、労働時間規制の緩和の検討を行う」と。


街では「多様な選択肢が生まれるのであれば」と前向きな声も聞こえましたが、「働くことが強制的になるとよくない」という不安も聞こえました。中室さんは規制改革について、政府に提言する立場を務めてきましたが、伝えたいポイントはどういったことですか。


教育経済学者 中室牧子さん:
そうですね。まず約6%の人が「もっと働きたい」と言っている。その半分の人たちというのは、実は労働時間が週35時間未満のパートタイムやアルバイトの労働者なんです。


要するに、重要なポイントは「年収の壁の解消」だと思います。もっと働きたいと考えている人は年収の壁にぶちあたっている人で、パートタイムの人たちなどの「もっと働きたい」と思っている人たちが、年収の壁を気にせずに働けるようにすることが大事です。


つまり、いま政府で議論になっている「労働時間の規制」というのは、全ての職種や労働者に対して「残業時間を無制限に規制緩和をします」というような議論ではない、ということだと思います。どういう職種の人たちの、どういう労働時間について、どういう政策が必要かを見直そうということ。


藤森キャスター:
より丁寧な説明とか議論が必要になってくると思います。


「労働時間規制の緩和をどう思うか」というアンケートの回答です。過労死のリスクを高める可能性があるからなどの理由で「反対」が43.7%。「本人が望めば緩和」が37.3%と続いています。


教育経済学者 中室牧子さん:
私は規制改革推進会議の委員をしていて、大事なのは「時間」だけではなく「柔軟性」ではないかと思うんです。規制改革会議でいま議論をしているのは、例えば早番や遅番があって生活のリズムが乱れることが心配な人には、1日10時間働くと、週に4日で週休3日のような働き方を許すとか。あとは、有給も半日や1日の単位でしか現状は取れませんが、1時間単位で取れる有給のようなものを増やすとか。


働き方の「柔軟性」を高めるような規制緩和ができないかを議論しているわけです。こうすると、「もっと働きたい」と思う人が増える可能性や、いま働いてる人たちが定着し、同じ会社や人手不足の会社で長く働いてくれることがあるかもしれない。これは、社会の人手不足感を解消することに資するのではないかと思うんですね。


つまり、時間を延ばすことだけではなく、柔軟性を高めて、みんなの働き方の選択肢を増やすことが大事かなと。


小川キャスター:
具体的な議論はこれからですが、働き方改革は過労を苦に命を落としてしまった方たちや、そのご遺族のみなさんの訴えの上に議論が築かれてきたものです。そうした皆さんが不安に思うのも当然であると思います。丁寧な議論が必要です。


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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」

※動画内で紹介したアンケートは24日午前8時で終了します。


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