
12月10日は1948年の国連総会で「世界人権宣言」が採択されたことを記念した「世界人権デー」です。
今回は世界人権デー企画として、神保町で開催された「写真展『香港、消された声』」を取材しました。
香港は1997年にイギリスから中国へ返還されましたが、中国は香港に対し「高度な自治を保障する」という「一国二制度」を導入しました。
しかし、徐々に中国による干渉が強まり、2019年には香港市民による民主化デモが本格化しました。
中国は2020年に「香港国家安全維持法」を制定し、反政府的な活動を取り締まるようになっています。
今回の写真展では、民主化デモの際に、香港市民によって街の壁に描かれたスローガンが香港政府に塗りつぶされた様子や、取り締まりによってさまざまな「自由」が奪われた香港の街の写真などが展示されていました。
「体感としては再植民」 奪われる香港人の自決権
写真展会期中の12月14日には、今回の写真展に写真を提供した香港人ジャーナリストのクレ・カオルさん、民主活動家のサム・イップさんによるトークイベントが行われました。
クレ・カオルさん
「いろいろなところで分裂があります。言葉だったり、歴史的な経緯だったり。香港はそもそも移民社会。歴史をたどれば大体2~4代ぐらい前は、中国やミャンマーなどからの移民が多い。この世代の間でできたような『香港人』という意識のため、意外と歴史が若いです」
サム・イップさん
「主権移譲150年の歴史の中では、香港自らの文化体系が生じています。新たに押し付けられるような形で、中国に奪われているというのは、香港人の『自決権』を奪われていることになる。それも人権侵害のひとつ」
クレ・カオルさん
「体感としては再植民だと思います」
近年では、学校で学ぶことについても中国政府からの干渉が強くなってきていて、世代間で中国や香港への意識に違いが生まれていると話します。
投票率向上と比例して失われていく「政治参加の自由」
12月上旬に行われた香港の議会にあたる「立法会」の選挙では、候補者は「中国の愛国者」に限られていました。
反対勢力の「民主派」が排除されていて、民主的ではないなどの批判も起きているということです。
昨今の香港での選挙事情についてサム・イップさんに聞きました。
サム・イップさん
「とある医療系のNGOの話です。
部署ごとに投票済み証明書を持っている人を実名で登録しています。
その情報を人事部にあげないといけない。
人事部からどこへ行くかは分かりませんが、そもそも記録している時点で、投票の強要です。
政治の参加・非参加、それも政治権利の一種です。
政治参加の自由にあたるものが強要されているのは政治参加ではない。
今まで我々には『投票しない権利』、あるいは投票の内容を明かさない『秘密投票』が約束されていて、政治自由、表現の自由、報道の自由などが存在していました。
それがこの何年間かで失われていっているんです」
日本でも、投票した証明書を見せると、割引してくれるお店がありますが、今回の香港の選挙では、証明書を持っていると会社を選挙のために半休できるところもあったそうです。
しかし、こうした投票率を上げるために行われた施策が、政治参加の自由を奪うためのものにもなっています。
「自発的にお互いのことを知る」ことから人権問題の解決は始まる
今後の人権問題解決のためにクレ・カオルさんはこう話します
クレ・カオルさん
「やっぱり、基礎になるのは教育です。
『全員良い』というのを学ぶこと。
お互いに優しくしようというところから人権の行動が生み出されます。
国や上の立場の人が『人権とはこうです』とルールを作るのではなく、
自発的にお互いのことや相手の痛みをわかることが大事。
国際条約とか偉い人が言っているから仕方なく受け入れるのではなくて、
この人たちはこんな感じだから助けようよっていう声がもっとないと、
人権は空っぽです」
香港の人権侵害を目の当たりにしてきたクレさんの発言だからこそ、重みを感じた言葉でした。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:恒藤泰輝)
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