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ホルムズ海峡への自衛隊派遣「極めて難しい」 河野元統幕長インタビュー

国内
2026-03-19 06:30

中東情勢が混乱の一途をたどるなか、日米首脳会談のために就任後、初めてアメリカを訪問する高市総理。


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対するのは、日本などに対しホルムズ海峡への艦船派遣要請について発言がぶれるトランプ大統領。


高市総理は自衛隊派遣をめぐり「法律に従い、出来ないことは出来ないと伝える」との考えを示しているが、中東情勢をめぐりどのような議論が交わされるのかは先行きが見通せない。


自衛隊の「艦船の派遣」は現実味を帯びるのか。自衛隊・制服組の元トップ、河野克俊元統合幕僚長に話を聞いた。(※インタビューは3月18日実施)


「トランプ大統領としても想定しなかったことが起きている」

―現在の中東情勢、ホルムズ海峡の状況をどのようにご覧になっているか。


河野克俊 元統合幕僚長:
トランプ大統領は短期で終わらせるという目論見でやられたと思います。最初に声明に出されている通り、空爆をやって、それでイランの指導部を倒して、そしてそれに応じて民衆が立ち上がるという図柄を描いたと思うんですけど、これが思い通りにいかず、それがさらに経済的な戦争にまで何か及んできているんですよね。その象徴が今焦点が当たっているホルムズ海峡を巡る攻防だと思います。これについては今、世界的にももう影響が出ていますし、トランプ大統領としてはあまり想定していなかったことが今起きていて、トランプ大統領の心情としては、とにかくどこかでけりをつけたい・終結したいという思いは強いんじゃないかと思います。


―その中で日本が置かれている状況はどのようにご覧になられていますか。


河野元統幕長:
トランプ大統領から護衛艦の派遣を求められていると。その理由は「ホルムズ海峡に大きく依存しているのは日本でしょ」と。「あるいは韓国、中国でしょ」と。ホルムズ海峡からタンカーが出られない状況になっているということについて「利害が大きく関わっている日本、あるいは韓国、中国はやはり手助けすべきじゃないか」と。こういうことで日本に要求が突きつけられているという状況で、まさにホルムズ海峡を巡って、ついに日本にまで影響が出てきたということだと思います。


―日本が艦艇の派遣を求められましたが、大統領の発言が連日二転三転していく中で、こういう事態のときに日本は何ができるのでしょうか。


河野元統幕長:
いずれにしてもですね、自衛隊は法律に規定されているものしかできないんですよね。ここがちょっと他の国とは違うところで、日本の場合は警察予備隊からの流れを自衛隊が汲んでいるものですから、自衛隊法の成り立ちが一般の軍隊のような作りじゃないんですよね。要するにやっていいこと・だめなことで規定されているわけです。ここのところがトランプ大統領があまり理解できていないところだと思うんですよ。これはトランプ大統領の感覚でいけば「高市総理が決断すればできるはずだ」と、おそらく見ていると思うんです。ただし、日本の場合は高市総理が決断しようにも、法律以外のことはできないわけですから。ここのところがおそらくトランプ大統領は認識ができていないと思うんですね。


想定される自衛隊派遣の“4ケース”

―仮に日本の護衛艦を派遣する場合、どういったケースが考えられるのでしょうか。


河野元統幕長:
派遣する目的というのが、タンカーがホルムズ海峡を通過できるようにしてもらいたいと。「それは、利害が大きく絡んでる日本の役目でしょ」というのがトランプ大統領の見方ですよね。それで考えられるのは4つ。1つは存立危機事態。これは限定的・集団的自衛権に基づくものですから、自衛隊としては武力の行使が可能になりますので、必要な武力を使うことができると。ただしこの非常に厳しく、それをクリアしているかどうかという問題があります。現時点で木原官房長官は「そういう状況にない」と。私も今はそういう事態ではないと思います。ただし今後これが長期化して、本当に石油の備蓄が全部放出したという状況、国民生活に大きな影響を与えるような事態になったときに、それはやはり1つのターニングポイントが来る可能性はあります。


もう1つ、海上警備行動です。これは治安維持ということが基本的な目的なんです。しかし、武器使用について非常に制約がかかるということと、海上警備行動というある種、治安維持ですから犯罪行為を取り締まるという思想なんですよね。今回の場合ですと、イランが主権国家で、これは海上警備行動の範疇を超えるわけです。これも適用できないと私は思います。


もう1つが現にホルムズ海峡の外側でやっている情報収集・警戒監視というものなんですけども、これは調査・研究という規定があって、これに基づいてやっているんですね。これを範囲を広げてホルムズ海峡の辺りまで広げてやるということも考えられるわけですけども、平時の任務とか、平常でできることなんですね。基本的に武器の使用というのは全然想定していないもので、(タンカーの)護衛という任務ができるのかということと、自分の国のためにやってるんですよね。今回ホルムズ海峡にトランプ大統領のリクエストに基づいて派遣するとなると、この警戒監視・情報収集をしたその情報は、アメリカに提供しないと意味がないわけです。アメリカは今度提供した情報に基づいてイランに対する攻撃をする可能性だってあるわけですよね。ということは、そういう意味では戦闘行為に加担をするわけです。その根拠法規が行政組織法である防衛省設置法を根拠にして、戦闘行為に加担する、これもちょっと極めて無理があると思います。


もう1つは重要影響事態ですね。放置したら我が国の安全保障に重要な影響を及ぼす。なおかつ、我が国に対する武力行使に発展しかねないといった状況のときに、アメリカに対して後方支援ができると、こういう話なんです。これを今回のホルムズ海峡に適用したときに、これが日本に対する武力攻撃に発展する可能性っていうのは、これはちょっと考えづらいですよね。なおかつこの重要影響事態というのは法律的に戦闘地域でやれないんですよ。そうなるとやはり、ホルムズ海峡の外側でやるということになるんですよね。


—連日報道でも出てますけれども、今のご説明も踏まえてもやはり法的枠組みの中では、自衛隊が艦船派遣というのはなかなか難しいのかなと。


河野元統幕長:
やはりピタリとは来ないんですよ。それぞれハードルがあるんですよね。そこは政府も十分承知されていると思うのでそこら辺を踏まえて今検討がなされてると思うんですが、一方で、日本の戦後の歩みですけど、安全保障防衛はアメリカにやはり頼ってきたわけですよね。だからアメリカにプレゼンスを示してもらうのが日本の安全保障にとって重要なんですよね。こういった日本の安全保障についてはアメリカに対してこうやってリクエストをするわけですよね。今回アメリカは、ホルムズ海峡に苦労してるわけです。そのときに「あなた関係深いでしょ」「だから助けてくれ」ということですよね今回は。それに対してゼロ回答っていうのはね、日本としてとれるのかということなんです。それが国益を照らした場合に非常に難しい。だから(日本はアメリカに対して)ゼロ回答は私はやはり、ないと思うんですよね。


“板挟み”の日本「ゼロ回答は日本の立場としては国益には沿わない」

—日本のルールの中の難しさと唯一の同盟国であるアメリカの要求というバランス感、板挟み感みたいなものを感じるんですが。


河野元統幕長:
まさにそうなんですよ。だからもうこんなの蹴ってしまえって話は簡単なんですけれども、でも今後のことを考えて本当にその選択肢が日本の国益になるかということは考えないといけませんよね。日本の場合は2国間安保なので。


—仮に日本が艦船をいまホルムズ海峡に派遣したとなれば、ある意味、紛争行為に加担したと見られかねないが。


河野元統幕長:
要はそういうことですよね。イランとアメリカが戦争終結していない状況でやるとなれば、これは当然、イランから見れば敵対行為になるわけですよね。当然、それはアメリカ側に立ってオペレーションするということは、ごまかしようがないですね。


—2019年に同様にホルムズ海峡で有事が起きて、日本がアメリカから有志連合への加盟を求められた際に、日本は独自の判断で、事態がある程度おさまった後に艦船を近海に送りました。


河野元統幕長:
いま同じことをやるとなると、ここで収集した情報は当然アメリカに渡すというのが前提になると思うんですよ。それは戦闘に利用することになるわけですよね。だからこの警戒監視、情報収集という選択をした場合も、アメリカの戦闘行為に組み込まれるということが十分想定されるんですよね。その根拠法規を行政組織法で、防衛省設置法4条をその根拠にするかとなると、それはあまりにもちょっと乱暴ですよね。


—いずれにせよ、現時点で自衛隊が取りうる行動はなかなかやはり難しいと。


河野元統幕長:
まず自衛隊は法律的根拠がないとできない。今のトランプ大統領のニーズにぴったり合う、いわゆるホルムズ海峡におけるタンカーの護衛ということを実施するためにぴったり合う法律はなかなかないんですが、しかしながら、ゼロ回答というのはやはり日本の立場としてはちょっと、国益には沿わないと思うんですよね。だから今、政府は苦労していると思うんです。だからここはいま、政府内で大激論されているんじゃないかと思いますよね。


—どうして日本はこうした厳しいハードルを設けているんでしょうか。


河野元統幕長:
まず自衛隊法の作りが、いわゆる警察の延長としての位置づけだったので、軍隊として出発していないので、法律で書かれていることしかできない組織なんです。それがある意味、自衛隊の行動に制約をかけるという意味に作用してきたんですけどね。自衛隊というのはやはり軍隊ではない、戦力ではない、という前提で出発したものですから、他の軍隊とは違ういろんな制約を背負っているということです。


—総理は、トランプ大統領は日本の自衛隊を巡るルールも把握されていると答弁もされているが、どこまで理解が得られるのか。


河野元統幕長:
おそらくそれは(アメリカ側に)説明はしていると思います。日本っていうのは、やはり憲法9条からこういうことになってるということで、自衛隊は国際的にはいわゆる軍隊なんですけど、国内的には軍隊でない戦力以下という位置づけなんですよね。ここからくる制約というものがありますと。それはトランプ大統領が理解できるかどうかは別にして、説明をしているんだろうと思います。


アメリカとイラン、そして法的根拠との“板挟み”のなか、平和国家・日本はどのような説明をするのかー。2度目の日米首脳会談、その行く末が注目される。


TBS報道局政治部・防衛省担当 渡部将伍


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