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「『冷夏要因』があるのに今年の夏も高温に!」森田正光気象予報士が解説【調査情報デジタル】

国内
2026-05-02 09:00

気象庁が最高気温40℃以上になる日の名称を、これまで日本気象協会が使っていた「酷暑日」に決定した。ではその「酷暑日」は2026年の夏も観測されるのだろうか。今年の夏はエルニーニョ現象が発生する確率が高く、通常なら冷夏になりやすい。にもかかわらず暑い夏になる可能性を森田正光気象予報士が解説する。


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40℃以上の「酷暑日」は今年も観測される?

――気象庁は夏に高温を記録する年が頻発している状況を受けて、最高気温が40℃以上になる日の名称を決めるアンケートをネット上で実施しました。一般から寄せられた47万8296票のうち、日本気象協会が2022年から使ってきた「酷暑日」が、13の候補の中で最多の20万2954票を集めたことから、4月17日に名称として決定しました。森田さんはどの名称に投票しましたか?


森田 私は結局投票には参加しませんでした。ただ「酷暑日」は、実は私が2007年8月21日にTBSで放送された『イブニング・ファイブ』で提案したことがある名称です。


――2007年というと、今から19年前です。そんなに早く「酷暑日」を考えていたのですか?


森田 というのも、2006年までは、1933年7月25日に山形で観測された40.8Cが最高で、1875年に「東京気象台」による観測が始まって以来、40℃を超える日は12日しかありませんでした。


それが、2007年8月16日に埼玉県の熊谷と岐阜県の多治見で最高を更新する40.9℃が観測され、その年は1年間で7日も40℃以上が観測されたので思いついたのでしょう(笑)。


――「酷暑日」は今年の夏も観測されそうですか。


森田 2023年に夏の平均気温が観測開始以来最高を記録し、30年に1度の猛暑と言われました。ところが、2024年も2025年も過去最高を更新して、3年連続猛暑が続いています。40℃以上の酷暑日はこれまで108回観測されていて、そのうち41回が2023年から2025年の3年間に集中しています。


そして今年の夏は、4年連続で過去最高になるかどうかはわからないものの、やはり平年よりも暑くなることが予想されています。気象庁は6月から8月の平均気温が平年を上回る確率を、北日本と沖縄・奄美で50%、東・西日本で60%と発表しました。「酷暑日」と35℃以上の「猛暑日」は、2023年と同じくらいの日数は観測される可能性があります。


エルニーニョ現象発生で本来は冷夏になるはずなのに

――今年の夏も暑くなるという予想の根拠は何でしょうか。


森田 まず、温室効果ガスの増大による地球温暖化の影響で、大気全体の温度が高くなっていることが大前提です。


一方で、今年の夏はエルニーニョ現象が発生する確率が60%と高くなっています。実は、私たち気象予報士の常識では、エルニーニョ現象が発生すると、通常は冷夏になると考えられているんです。


冷夏になるとともに、大雨も降りやすくなります。エルニーニョ現象の影響で、日本では1993年に戦後最悪の冷夏になり、8月に鹿児島県内で集中豪雨が発生しました。つまり、エルニーニョ現象が起こるにもかかわらず猛暑になると予想されているのは、これまでにない新たなケースなんです。


――そもそもエルニーニョ現象とは、どのようなものでしょうか。


森田 太平洋赤道域の東部で海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。海面水温が高くなると上昇気流が起きて、その北側では下降気流になります。そうなると日本では、夏は湿った空気が下降して、冷夏になって大雨が降りやすくなり、冬は暖冬になります。


エルニーニョとは逆の異常気象に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続くラニーニャ現象があります。日本に限って言えば、冬は寒くなり、夏は猛烈に暑くなります。


エルニーニョはスペイン語で「男の子」や「幼子イエス・キリスト」、ラニーニャは「女の子」を意味します。もともとペルー北部の漁民が、クリスマスの頃に魚が獲れるようになる小さな暖流をエルニーニョと呼んでいました。


――今年の夏はエルニーニョ現象が起きる可能性が高いのに、なぜ暑くなることが予想されているのでしょうか。


森田 様々な要因があると考えられます。先ほど述べた地球温暖化の影響や、海面水温の上昇によって、地球全体の大気の温度である層厚温度がもともと高くなっているのが一因です。今年の層厚温度は、2024年や2025年よりは低いものの、平年より高くなっています。わかりやすく言えば、大気の温度が上がって膨張している状態です。


海面水温が上昇している理由として、最近は太平洋で十年規模振動という現象が起きているとみられています。原因はよくわからないけれども、北太平洋のある部分が10年ほどの規模で温かくなったり、冷たくなったりを繰り返しています。


それに、大気汚染の問題が以前よりも解決してきて、空気がきれいになったことで、海面水温が上昇しているのではないかと指摘する学説も出てきています。


――つまり、そのような要因が、エルニーニョの影響を上回って、今年の夏の暑さにつながるということですね。


森田 はい。


――今年の夏が暑くなると考えられる、日本特有の要因はありますか。


森田 日本特有の要因は、日本の上空でチベット高気圧と太平洋高気圧が重なることです。高気圧が重なれば当然温度は上昇します。2025年も重なったことで、大変な猛暑になりました。


――2つの高気圧が重なるのはどのような理由ですか。


森田 エルニーニョ現象と同じことがインド洋でも起きていて、ダイポールモード現象と呼ばれています。赤道の海域はどこでも海面水温が高くなっている状態です。


インド洋の海水温が上がることで、北ではチベット高気圧が強まります。そして太平洋高気圧が日本の本州付近に張り出すことで、2つの高気圧が日本上空で重なることが予想されています。去年ほどではないものの、今年も猛暑になる可能性が高いでしょう。


今年の夏も大雨や熱中症に警戒が必要

――エルニーニョ現象では大雨が降りやすくなるということですが、大雨についてはどうですか。


森田 梅雨自体は平年並みと考えられます。ただ、夏は豪雨による災害にも気をつける必要があります。大気中の水蒸気の量が多くなっているため、低気圧になったときに大雨が降りやすくなります。


下の図は、集中豪雨の回数と雨量に関するグラフです。大雨が降ると報道では「何県のどこで1時間に何ミリの雨が降った」と表現しますよね。この図は少し変わっていて、低気圧が来て大雨になったときに、その一連の雨によって各地で観測された雨量を足し合わせて、総雨量ごとに回数を計算してグラフにしたものです。


――最も回数が多いのは、4万ミリから5万ミリくらいの降水量ですね。


森田 一般的に大雨として報道される際の降水量が、4万ミリから5万ミリくらいです。ところが、最近はこれまででは考えられなかったような集中豪雨が降ることがあり、大災害につながっています。


矢印①で示しているのが2014年に広島市で土砂災害を起こした豪雨で、総雨量は16万ミリを超えています。④は2018年7月に西日本を中心に河川の氾濫などが発生した豪雨で、約20万ミリです。そして2021年8月に全国の広い範囲で降った豪雨の総雨量は突出して多く、28万ミリを超えています。


これらの集中豪雨では、多くの死者や行方不明者、住宅の全壊など甚大な被害が出ました。災害級の豪雨が降りやすい状態になっているのは今年も同じです。


――今年の夏は高温と大雨の両方に警戒が必要ということですね。


森田 もう一つ警戒が必要なのが熱中症です。高温が続くと、日本は湿度が高いため、体感温度も高くなります。熱中症も多くの人の命を奪っています。


――厚生労働省によりますと、2024年は熱中症で2160人が亡くなりました。統計を取り始めてからは過去最多の人数です。そのうち65歳以上が1835人と、85%を占めています。


森田 熱中症による死亡者数は右肩上がりになっていて、統計に出ているようにお年寄りは特に注意が必要です。記録的な高温が続いている今の状態は、異常気象というよりは気候変動の段階に入っているといえます。夏の暑さが災害級になっていることを知ってもらって、十分な対策をとってほしいですね。


<森田正光(もりた・まさみつ)氏略歴>


1950年名古屋市生まれ。財団法人日本気象協会を経て、1992年にフリーお天気キャスターになる。同年、民間の気象会社、株式会社ウェザーマップを設立。親しみやすいキャラクターと個性的な気象解説で人気を集め、テレビやラジオ出演のほか全国で講演活動も行っている。


2005年より公益財団法人日本生態系協会理事に就任し、2010年からは環境省が結成した生物多様性に関する広報組織「地球いきもの応援団」のメンバーとして活動。環境問題や異常気象についての分析にも定評がある。学校法人桑沢学園東京造形大学客員教授、一般社団法人島バナナ協会代表、将棋ペンクラブ審査員。


(インタビュアー・田中圭太郎)


【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。


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