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李在明大統領来日でシャトル外交スタート 国交正常化から60年 「未来志向」の高校生らが語る日韓関係

海外
2025-08-24 07:00

23日、韓国の李在明大統領が就任後初めて来日し、韓国の新政権による「シャトル外交」がスタートした。日韓国交正常化から60年が経つ中、「未来」を担う高校生たちに両国の関係について率直な考えを聞いた。


【写真で見る】韓国のゲームで盛り上がる参加者たち


「日本と未来志向的な協力の道を模索する」“実用外交”を目指す李在明大統領

8月15日、韓国では日本による植民地支配からの解放を記念する「光復節」の式典が行われた。日韓国交正常化から60年の今年、李在明大統領は日本政府に対して歴史を直視するよう求めた一方、日本を「経済発展において切り離せないパートナー」だとして「日本と未来志向的な協力の道を模索する」と述べた。今年6月に就任して以降、李大統領はこの「未来志向」という言葉を何度も使用して、国益中心の“実用外交”を原則とする姿勢を示している。


こうした中、これからの「未来」を担う日韓の若者たちは両国の関係をどう捉えているのか。東京で行われた日韓青少年交流キャンプ(7月29日〜8月4日、主催:社団法人韓日協会、一般社団法人国際人流振興協会)を取材した。


「『鬼滅の刃』の公開待ちきれない」アニメがきっかけの韓国人 日本人はKPOPが入り口に「BLACKPINKに衝撃受けた」

この交流キャンプはディスカッションや文化体験、班ごとの東京観光などを通じて互いの国への理解を深めることが目的で、韓国から21名、日本から10名の高校生が参加した。
それぞれ互いの言語を学んでいる参加者がほとんどで、最初は「実際に会話をする機会は少ないため、緊張している」と少し固い表情を見せていたものの、ゲームなどをするうちにすぐに打ち解けていた。


両国の生徒にそれぞれの国を好きになったきっかけを聞いた。韓国の高校生は「アニメ」という答えが多く、イ・ソヒョンさん(高3)はアニメ『鬼滅の刃』が好きで、日本でも記録的ヒットとなっている新作映画の韓国での公開が待ちきれないと話した。また、JPOPも人気で、アニメの主題歌を歌うOfficial髭男dismや米津玄師、日本の若者にも人気があるMrs. GREEN APPLEといったアーティストの名前があがった。他にも、医療ドラマをはじめとした“恋愛要素を含まない”日本のドラマや、祭りが好きな生徒もいた。


一方、日本の高校生はKPOPを通じて韓国を好きになった生徒が多くを占めた。中畑咲紀さん(高1)は、小学6年生の頃からKPOPに興味をもち、さらにBLACKPINKのライブに行ったことで「ドハマりした」。好きになった理由について、「日本でああいう感じの女性アイドルはいない。かっこよくて、すごく衝撃を受けた」と魅力を語った。渡韓した際には、ファンが“推し”アイドルの誕生日を祝うために駅などに出す「センイル(=誕生日)広告」を見に行くなど、韓国ならではの文化も楽しんでいるそうだ。


日韓両国の世論調査で好感度が上昇 交流多い「Z世代」が牽引

韓国のシンクタンク「東アジア研究院」が今年6月に発表した世論調査では、2013年の調査開始以来初めて、日本に対する印象が「良い」と答えた人の割合(63.3%)が「悪い」と答えた人の割合(30.6%)を上回った。「良い」と答えた人の割合は2020年には12.3%だったため、5年間で約5倍と急上昇している。


中でも、「Z世代」と呼ばれる18~29歳の若年層では74%の人が日本に対する印象が「良い」と答えている。同シンクタンクは、韓国の若い世代が頻繁に日本を訪れ、日本の文化やコンテンツに積極的に関わっていることが、日本に対する好意的な感情の上昇傾向に大きな影響を与えていると分析する。


一方、内閣府が去年実施した外交に関する世論調査でも、韓国に「親しみを感じる」とする人の割合は前回より5ポイント増えた56.3%で、「親しみを感じない」とする人の割合(43.0%)を上回った。18~29歳では、韓国での調査と同様に70%を超えた。


「過去は過去、今は今」 “未来志向”の考え方浸透

互いの国の文化に強い関心がある生徒たちだが、日韓の歴史・過去についてはどう考えているのだろうか。


歴史に関心がある韓国人のコ・ハヨンさん(高3)は、学校で日韓の歴史について学んだ時のことをこう振り返った。「日本が悪いことをしたと知り、そこまでしなくて良かったのにと思った。侵略したとしても、隣の国だからもう少し仲良くしながらやればよかったのにと、少し怒りを感じた時もあった。でも、実際に日本人と接する中では、悪い印象を抱くことはない」


ユン・ジェミンさん(6月に海外の高校卒業)は、「『あれ』(日本による統治)について(韓国の)中学校の授業で学んだ。別に何も感じなかった。歴史は歴史だし、過ぎたこと。だから、未来に向かっていったほうが今はいいんじゃないかなって思う」と語った。


母親が日本人、父親が韓国人で韓国在住のキム・リエさん(高1)は、日本が朝鮮半島を統治していたことを母親から聞いたという。その話を聞いた時にどう感じたかを尋ねると、「『なるほど』と。嬉しくもないし、いやでもないし。『そっか』って感じだった」と率直な思いを明かした。


日本人の中畑咲紀さんは「学校の授業で伊藤博文暗殺事件などについて習った」と話したうえで、「そういう過去はあったんだなと思うが、実際見てないから、頭の片隅に置いて、それを踏まえて韓国を好きという感じ。文化的に尊敬している」と語った。


生徒たちの話から、若者の間で、過去の出来事・歴史を知りながらも「過去は過去、今は今」と考えて「未来」に重きを置く「未来志向」の考え方が広まっている現状が垣間見えた。


「若者は互いの文化が好きだけど、政治家はそうはならない」「争いながらの解決には賛成しない」 高校生が考える今後の日韓関係

李在明大統領も就任して以降、日韓の「未来志向的な発展」を目指していく主旨の発言を繰り返している。ただ過去には、福島第一原発の処理水放出を非難する発言をしたり、日本を「敵性国家」と表現したりと強硬的な姿勢をみせていた。専門家の間では、李大統領が日本への姿勢を変えた背景には、日本に好意的な若者の増加や、北朝鮮、中国、ロシアなど周辺国の脅威が強まっていることがあるとの見方もある。


韓国の世論形成に強い影響を与える大統領の今後の動きに注目が集まるが、日々SNSやコンテンツ、旅行を通じて互いの国と身近に接している生徒たちに、日韓関係の「今」と「今後」についてどう考えているのかも聞いてみた。


ユン・ジェミンさんは今後の日韓関係について「李在明大統領は日本に対してネガティブな印象なので、不安定になるんじゃないかなと思い、心配している。いまは日韓の若者は両方の文化が好き。でも政治家はそういう気持ちにならないのだろう」と懸念を示した。


中畑咲紀さんは、「政治面ではちょっと良くないのかもしれないが、文化的な交流に支障は生じていないと感じる」と自らの経験をもとに述べた。


「やっぱり韓国でも日本でも問題が色々あって、仲良くできるのかまではわからない。不安定だと思う」と答えたのは、母親が韓国人、父親が日本人で日本在住の李臾池(イ・ユジ)さん(高1)。「だからこそ韓国の大学に行って、そこで学んでから日本に戻り、さらに交流を深めたい。日韓の交流を大事にして、社会に活かしたい」と語った。


コ・ハヨンさんは、「歴史的な問題は課題として克服していかなければいけないと思っているが、争いながら問題を解決することには賛成しない。もっと良い方法でやれないかなと思う」と話した。


キム・リエさんは日韓の更なる関係改善に期待を寄せた。「クラスの約半数が日本の文化に興味がある。韓国も日本の影響を受けていて、他の国より一番仲良しな国だと思う。いま以上に仲良くなれればいいなと思っている」


生徒たちの多くは、現在と今後の日韓関係について、歴史問題と自分たちが行っている交流を明確に分けて考えているようだった。彼ら/彼女らは、これから社会に出て、それぞれ日韓の社会を担っていく。こうした市民による文化交流や草の根での対話は今後も日韓関係に大きな影響を与えていくだろう。


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