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アサド政権崩壊からまもなく1年のシリアで日本アニメが大人気 ダマスカスでは10年ぶりに日本語教室開設も

海外
2025-09-16 07:00

中東のシリアで、独裁的なアサド政権が去年12月に崩壊してから、まもなく1年となる。旧政権下で科せられたアメリカや日本などによる経済制裁の一部解除が進み、内戦からの復興に向けた期待が広がっている。
こうした中、いまシリアではアニメや漫画など、日本文化が大人気だ。


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日本アニメや漫画が人気 交流も活発に

漫画を手に取り、アラビア語で「『バガボンド』は最高の漫画です。絶対みなさん読むべきです」と熱く語るのは、日本のアニメや漫画を愛し、自らを“オタク”と称するラフマンさん(22)だ。


ラフマンさんによると、シリアでは内戦が始まる前から、衛星放送を通じて『ドラゴンボール』や『ワンピース』など日本のアニメが放送され、多くの人々に親しまれてきた。近年は、特に若者の間でSNSを通じて、日本アニメや漫画の最新情報をアラビア語で発信する投稿が増え、ファン同士の交流も活発になっている。これにより、日本コンテンツの人気はさらに高まっているという。


シリア国内では日本のアニメ専門の上映館が登場したほか、アニメや漫画のファンによるオフ会も開かれるようになった。好きなキャラクターを一緒に描くといったイベントなども、時折開催されている。


“くじけない心に共感” 『鬼滅の刃』がシリアで大人気

ラフマンさんは、日本のアニメや漫画にハマりすぎて、シリアでグッズ販売を生業にしている。一番人気の商品は、『鬼滅の刃』のグッズだというが、『鬼滅の刃』は特に若者を中心に高い支持を集めていると話す。その理由についてラフマンさんは、主人公の炭治郎がどんな困難にもくじけず、強くなりながら前に進んでいく姿が、「内戦が終わり、これから復興に向けて歩きださなければならない私たちシリア人の心に響くから」と強調した。


『鬼滅の刃』に限らず、日本のアニメや漫画に共通して描かれる、「仲間と力を合わせながら困難を乗り越え、成長していく主人公の物語」は、多くの若者にとって日々の苦難を乗り越えるための原動力になっているという。


シリアでは長年の内戦の影響で、住まいや水道設備といった基本的な生活基盤さえ整っておらず、人々の暮らしは厳しい状況にある。今年の夏は40度近い猛暑が続いているが、停電は日常化しており、電気が使えるのは1日あたりせいぜい3時間ほどとのこと。


そんな過酷な日常の中、若者たちは『鬼滅の刃』をはじめとした日本のアニメや漫画に、困難に立ち向かう勇気や、前に進むための力を見いだしている。


首都・ダマスカスに日本語教室が復活

このように、アニメや漫画を通じて日本に魅了された若者が増えているシリアだが、実は2011年に内戦が始まって以降、ダマスカス大学の日本語学科は新規学生の募集を停止し、ダマスカスの市民が日本語や日本文化に触れる機会は10年以上にわたって失われていた。


そうした中、今年7月、ダマスカスに日本語教室が開設された。NPO団体「シリアの友ネットワーク」による無料の授業で、日本語の学習だけでなく、七夕の笹飾りなど日本の伝統文化も体験できる内容となっている。


受講生はインターネット上で募集され、わずか2週間ほどで、10代から60代までの15人が集まるほどの人気ぶりだった。ある受講生は、「日本のように発展した国の言葉を学ぶことは大切。Google翻訳なしで日本の人たちと文化交流したい」と意気込みを語った。


講師のルアーさんは、シリアでこのような日本語教室が開設された意義について、「外国語を無料で学べる講座は、個人のスキル向上の機会となるだけでなく、社会進出・活動の支援にもつながり、将来的には国全体の経済復興に寄与する」と語った。特に日本語を学ぶことについては、シリアの復興につなげられると強調。第二次世界大戦で広島と長崎が原爆の被害を受けたにもかかわらず、日本が短期間で経済大国へと成長した点に着目し、「日本語を学ぶことで、日本が戦争の被害をどう乗り越え、復興に成功したかを知ることができる。その経験は、シリアの再建にもきっと役立つはずだ」と力を込めた。


専門家「依然として安定しないシリア国内情勢」

このように、市民たちの意識が再建に向かい、民間レベルで日本との文化交流も再び始まりつつあるシリアだが、国内の情勢は不安定なままだ。


シリア情勢に詳しい東京外国語大学の青山弘之教授は、アサド政権が崩壊してから半年以上が経過した現状について、「欧米を始め、日本など一部の国が経済制裁を解除したことにより、外交面で各国との関係改善が進み、復興は少しずつ進んでいる」と述べ、国の再建に一定の進展がみられると評価した。


一方で、6月にあった過激派組織「イスラム国」によるキリスト教会への自爆テロなどを挙げ、「イスラム過激派グループを統制する力が、今の政権にはないようにみえ、不安が残る」と内政面での問題点を言及した。


さらに、少数派であるイスラム教ドルーズ派と遊牧民勢力の衝突を発端に、7月にはイスラエルがダマスカスを空爆。加えて、南部スワイダ県ではこれまでに“殆どみられなかった”分離独立を求める大規模なデモが発生するなど、シリア国内の混乱は収束の兆しを見せていないとした。


――アサド政権崩壊からも治安や政治の混乱が続くシリア。そうした中でも、日本との文化から学びや希望を見出そうとする市民たちがいる。

アニメのキャラクターに勇気を重ね、日本語を通じて未来をつかもうとするその思いが、いつか本当の「復興」につながる日は来るだろうか。


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