
今回のイラン攻撃には、私たちの生活にも身近になったAI=人工知能が使われたといわれている。「AIファースト」を掲げるアメリカ軍。戦争の形は大きく、そして急速に変わっていきそうだ。
イラン製ドローンを独自進化 加速する軍事AI競争
射程500kmを超え、実践で初めて導入された精密攻撃ミサイル「PrSM(プリズム)」。今回のイラン攻撃では、新たな軍事技術が次々と使われた。
アメリカ軍の制服組トップは、サイバー攻撃でイランの通信インフラを麻痺させたと明かした。
ケイン統合参謀本部議長
「最初に動いたのはサイバー軍と宇宙軍です。イランの衛星・通信システムを遮断し、弱体化させました」
さらに…
ケイン統合参謀本部議長
「陸・海から100機以上の戦闘機と、アメリカ本土から爆撃機、そしてドローンが一体となって波状攻撃をかけました」
アメリカが初めて使った最新鋭の自爆型ドローンは、2025年7月に公開されたばかりのローコスト無人戦闘攻撃システム、通称「LUCAS(ルーカス)」だ。
アメリカ中央軍 クーパー司令官
「アメリカ軍の自爆ドローン部隊が、初めて大規模な攻撃をしかけ、大きな成果をあげました」
実は「LUCAS」は、イラン製のドローンがモデルになっている。
今回の戦闘でイランが使った自爆型のドローンは、1機数百万円という低コストで量産でき、ロシアによるウクライナ侵攻でも使われた。
アメリカ軍は、このイラン製ドローンをもとにしてさらに進化させたという。
アメリカ中央軍 クーパー司令官
「我々はイランが開発したドローンを回収し、それを改良してイランに反撃しました」
AIと安全保障に詳しい塩野誠氏は、ドローンにAIを搭載すれば、自ら標的を選別し、攻撃することも可能になるという。
経営共創基盤
塩野誠 代表取締役CEO
「今のドローンはジャミングと言われる電波妨害によって、途中から飛べなくなる可能性があり、ただ、もしドローンにAIが搭載されて、ドローン自体が自分で考えて自分で攻撃対象をみつけて、そこを攻撃することができれば、通信が必要なくなります」
トランプ政権は、AIの軍事利用を積極的に進めてきた。
2026年1月、ヘグセス国防長官は「AIファーストの戦闘部隊を作り上げ、軍事AI競争に勝つのです」と発言している。
AIに「人間の生死」委ねることに… 専門家「問い直すことは必要」
AIは軍事作戦においてどう使われるのか。
経営共創基盤
塩野誠 代表取締役CEO
「人工衛星や監視カメラのハッキングで出てくる情報とか、スマートフォンのGPS情報、そういったものをデータ統合するソフトウェアがある。統合されたデータから攻撃対象となる対象物を捕捉し、見つけ出し追跡し、今度は攻撃計画を立てる。本来であれば人間の司令官が行うところを、AIが人間の代わりに『頭脳』として考えてくれるという状況」
今回のイラン攻撃でアメリカ軍が使用したとみられるのは、IT企業・アンソロピック社の「Claude(クロード)」というAIだ。
衛星画像や監視カメラ映像など、膨大なデータの分析に長けているという。
経営共創基盤
塩野誠 代表取締役CEO
「米国がAIの軍事利用に対して、諸外国に比べて非常に有利な地位にある。アンソロピックのクロードのように、民間の巨大なテクノロジー企業が技術提供を行える。他国にAIの軍事利用において、もうすでに差をつけている状況」
しかし、AI企業側から懸念の声もあがっている。
イラン攻撃直前の2月26日。アンソロピック社のCEOは声明を発表。
自社のAIが国民の行動監視や、人の判断が介在しない自律型兵器に使われないよう求めた。
アンソロピック ダリオ・アモデイCEO
「危惧しているのは、AIの自律的な行動、個人や政府による悪用、そして経済的な混乱を引き起こす可能性です」
AIの軍事利用に歯止めをかけようとしたアンソロピックを、トランプ大統領は激しく非難した。
トランプ大統領(SNSより)
「過激な左翼のアンソロピックは、取り返しのつかない間違いを犯した。国の運命を決めるのは私たちだ」
結局アメリカ軍は、アンソロピックのAIをイラン攻撃に使用したとみられている。
しかし、アンソロピックは3月5日、国防総省からサプライチェーンリスクに指定されたと明らかにした。事実上、政府との取り引き排除を意味する。
塩野氏は、AIの軍事利用が加速していくことに警鐘を鳴らす。
経営共創基盤
塩野誠 代表取締役CEO
「AIに人間の生死に関わるプロセスを任せてしまっていいのか。人権問題として倫理といったものをAIの中で問い直すことは必要」
高市総理は「法的評価」を回避 イランとどう向き合う
今週、イランは石油輸送の要衝・ホルムズ海峡の封鎖を宣言。日本は原油の輸入を9割以上、中東に依存しているため、今後、物価高が加速する恐れもある。
イラン攻撃について国会で問われた高市総理は…
日本共産党 田村智子 委員長
「アメリカとイスラエルに、国連憲章、国際法違反の先制攻撃をやめるよう求めるべきではありませんか」
高市総理
「我が国として、法的評価をすることは差し控えさせていただきます」
一方で、ドイツのメルツ首相との電話会談では、イランの報復によって民間人の死者が出ていることなどから、イランの行動を非難したという。
日本はイランとどう向き合うべきなのか。
日本船「日章丸」が繋いだイランとの関係
実は日本とイランの関係は深い。そのきっかけが、約70年前に起きたいわゆる「日章丸事件」だ。
当時、イランの原油はイギリスの会社が独占していた。これにイラン政府が反発、石油会社を国有化した。
ところが、イギリスは対抗措置としてペルシャ湾を封鎖。それまでイランから原油を購入していた国々が取り止めたため、イラン経済は立ち行かなくなった。
そのとき動いたのが、出光興産のタンカー「日章丸」だった。イギリス側から拿捕される危険がある中、封鎖をかいくぐりイランから原油を購入したのだ。
当時のイランの新聞
「世界が見捨てた時、日本だけが助けに来てくれた」
この出来事はイランで語り継がれた。
駐日イラン大使に聞くと、日章丸の名前を挙げ、こう続けた。
イラン セアダット駐日大使
「イラン国民に心強いメッセージを送ってくれました。我々が知る日本はイランでの評判が非常に高く、人々は感謝を忘れていません。これはイランと日本にとっての財産なのです」
その後も日本は、イランなど中東諸国との関係も重視してきた。
中東も重視 アメリカに日本の立場示した過去
トイレットペーパーが不足するなど、第一次オイルショックが起きた1973年。イスラエルとエジプト・シリアなどとの第四次中東戦争が引き金だった。
そして、イスラエルを支援していたアメリカのキッシンジャー国務長官が来日する。迎えたのは田中角栄総理だった。
その場に立ち会っていた、小長啓一氏は当時の緊迫したやりとりを明かす。
田中総理の元秘書官 小長啓一氏
「キッシンジャー氏が何を言いに(日本に)来るのか、来るまで分からなかった。大変、緊張した感じで(会談の場に)入ってきたことは間違いない」
キッシンジャー氏は「日本は中東に石油を依存しているが、アメリカの立場を考えて、石油の輸入を断ってくれ。中東諸国の味方はやめて欲しい」と切り出したという。
これに対し、田中総理は「石油の大半は中東から輸入しておるんだ。『買うのをやめろ』というならその分をアメリカが全部肩代わりしてくれますか」と返す。
田中総理の元秘書官 小長啓一氏
「さすがにそれはキッシンジャー氏も『OK』とは言えません。沈黙が流れた。そして、田中さんが『そうでしょう』と。日米の同盟関係というのは不変だけれども、こと油に関しては、経済生活を維持するためにも、中東に依存せざるを得ないんだ、分かってくれと」
1週間後、イスラエルに対し、それまでに占領した地域からの撤退を求めるなど、中東支持を示す官房長官談話が発表され、原油の輸入は続いた。
田中総理の元秘書官 小長啓一氏
「あのときはやっぱり田中さんでなければ、日本の立場をはっきり友好国(アメリカ)に対しても、示せたということにはならなかったのではないか」
「日本は野次馬ではなく、当事者」日本外交の役割は
そして、半世紀後の2018年、トランプ大統領はイランへの経済制裁を再開。その後、日本など8つの国と地域はイランからの原油の輸入が認められなくなった。
この事態を受け、当時の安倍総理がアメリカとの関係修復に向けてイランを訪問。今回、殺害された最高指導者ハメネイ師と会談した。
ロウハニ大統領にも「なんとしても武力衝突は避ける必要がある」と訴えた。
安倍晋三総理(2019年・当時)
「現在の地域の緊張の高まりを友人として深刻に懸念している」
イラン大使として、この場にいた齊藤貢氏は…
関西学院大学客員教授 齊藤貢 元イラン大使
「(安倍氏から)ハメネイ師に会うのが絶対条件だと言われた。ハメネイ師はほとんど外国の要人に会わないので中々大変だった。西側諸国の中では(日本が)一番イランに近いから、日本なら何かやってくれるのではないかと期待があったから、ハメネイ師も会ったと思う」
だが、その後、日本はイランからの原油を輸入していない。
トランプ大統領との首脳会談を控えている高市総理。イラン攻撃について日本が果たすべき役割は…
関西学院大学客員教授 齊藤貢 元イラン大使
「1980年代、1990年代、2000年代に入ってもよく言われたのは、アメリカからは必ず『日本がイランと付き合うな』と言ってくると、結局『Agree to disagree』と、“意見の不一致”で日本側は頑張っていた。イラン側がそこは評価してくれたと思う。
いま起きている戦争というのは、日本は野次馬ではなく、当事者だと思っている。日本は衝突を回避するために、努力をする必要性は十分にあると思う」
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