イスラエルからの攻撃が止まないレバノン。いま、その標的となっているのが、救急隊員たちです。命を落とす隊員も後を絶ちません。なぜ救急隊員までもが狙われるのか。その実情を追いました。
【写真で見る】「標的にされていた」救急隊員が語る非道な攻撃“ダブルタップ”の実態
停戦は形骸化…攻撃が集中するレバノン南部を取材
増尾聡 記者
「今見えてきました。救急車の明かりも確認できます。停戦後、初めてイスラエル軍による攻撃がベイルートで確認されました。今も、救助でしょうか、行われている様子が見えます」
5月6日、イスラエル軍が攻撃したのは、隣国レバノンの首都ベイルート。
イスラエルは、レバノンを拠点とする親イランのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」との戦闘を続けていましたが、4月17日、停戦合意していました。
しかし、停戦後もイスラエル軍はレバノンに対する攻撃を継続。ヒズボラもイスラエルに対して報復攻撃を続けるなど、停戦は形骸化しています。
増尾聡 記者
「南部・ナバティエですが、いたるところに破壊された建物がずらっと続いています。このあたりはイスラエル軍が連日のように攻撃を続けています」
JNNが取材に入ったのは、イスラエル軍が特に攻撃を集中させるレバノン南部・ナバティエ。攻撃に巻き込まれる危険を避けるため、クルーも車の速度を上げ、緊張のなか現場へ向かいます。
空爆が続く町で救急隊は24時間体制 配給を受け取る住民も「本当に大変」
訪れたのは、地元救急隊の本部。ここでは35人の救急隊員が、泊まり込みながら、24時間体制で活動を続けています。
増尾聡 記者
「今、煙が上がっているのがわかるかと思います。ここから2キロほど先でしょうか、今まさにイスラエル軍が攻撃しました」
この建物のすぐ近くにも、連日のようにイスラエル軍の攻撃が。それでも隊員たちは、ひるむことなく出動を続けます。負傷者の救助だけでなく、住民への食料配給も担っているのです。
ナバティエでは高齢者を中心に、退避が叶わない住民約100人が、今もこの町での生活を余儀なくされています。
食料を受け取りに来た住民
「食べるものを取りにきました。どの店も閉まっているので、ここに来るしかないんです。道中も本当に大変ですし、空爆に巻き込まれるかもしれませんが」
しかし、配給中でも気が抜けません。
増尾聡 記者
「爆発音が、付近で連続していますね」
空爆が続くこの町では、住民だけでなく、活動にあたる救急隊員たちもまた、命の危険にさらされています。
「標的にされていた」 狙われる救急隊…“4重攻撃”で4人が犠牲に
4月15日に負傷者の救助活動を行っていた際のボディカメラの映像があります。ナバティエ近郊の町で、イスラエル軍による空爆が発生した直後のことでした。
救急隊員 ハマディさん
「通報が入ったんです。『仲間の救急車が3度も攻撃され、負傷した隊員が取り残されている。彼らの救助に向かってくれ』と」
この時、救助活動にあたったハマディさんは、同僚のアブ・ザイドさんとともに活動にあたりました。「最初の爆発後にかけつけた救急隊が攻撃を受け、さらに増援の救急隊が連続して攻撃を受けた」との通報を受け、急行したといいます。
救急隊員 ハマディさん
「私と彼は負傷者を運び、別の仲間も一緒でした」
負傷者を救急車に搬送し、治療を始めた次の瞬間、イスラエル軍による4度目の攻撃。破片が救急車を貫き、アブ・ザイドさんは腹部に被弾。その場で死亡しました。
最初の攻撃のあと、かけつけた救急隊に攻撃を加える「ダブルタップ」。今回はそれが4回に及んだことから、“4重攻撃”とも呼ばれています。一連の攻撃で、4人が犠牲になりました。
救急隊員 ハマディさん
「私たちが攻撃を受けたのは初めてではありません。ただ、これほど強力な攻撃で、直接狙われていると感じたのは初めてでした」
「標的にされていた」と話すハマディさん。戦時下においても、救急隊員や医療機関への攻撃は、ジュネーブ条約などの国際法で明確に禁じられています。
レバノン保健当局によりますと、2026年3月のイスラエルとヒズボラの戦闘開始以降、レバノンでは救急隊を含め、少なくとも100人以上の医療従事者が殺害されたということです。
「これが私たちの使命」 息子を失った救急隊リーダーが語る現実
隊をまとめるスレイマンさんは、次のように話します。
救急隊リーダー スレイマンさん
「医療チームの任務を妨げる“心理戦”のようなものだと思います。まだ生きている人たちのもとに到達するのを阻止するためです。より多くの犯罪を重ね、多くの人々を殺害するためです」
スレイマンさん自身も3月に、15歳の息子・ジュードさんをイスラエル軍の攻撃で失っていました。
6歳のころからスレイマンさんとともに地域の人のために活動していたジュードさん。今回も、ベイルートに避難するよう求める父の説得を断り、食料配給の手伝いをしていた際に犠牲になりました。
救急隊リーダー スレイマンさん
「これが私たちの使命です。必要とされる限り、この役目を果たし続けます。亡くなった若者たちも、そのために命を落としました。困っている人がいる限り、支え続けます。犠牲を払うことも覚悟しています」
停戦後も空爆が続くレバノン。命を救おうとする人たち自身が、命を落としていく現実があります。
イスラエル側は救急車の攻撃を正当化…その理由は
喜入友浩キャスター:
レバノンでは、すでに100人以上の医療従事者が犠牲になっているということです。
イスラエル側は、救急車を攻撃した理由について「救急車が武器の運搬や負傷した戦闘員の救助に使われている」と主張しています。
上村彩子キャスター:
攻撃を正当化しているわけですが、これは国際法違反であるだけでなく、人道的な救護活動そのものを根底から揺るがす行為です。
医療従事者の方たちは、勇敢に使命を果たそうとしていますが、このまま救急車や医療従事者の方たちが攻撃されるような状況が続いてしまうと、現場に近づけなくなったり、けが人が救助を恐れたりするようなことになってしまうのではないかと思います。
喜入キャスター:
まさにそれが狙いなのかもしれませんが、恐ろしいことです。
上村キャスター:
命を救う“最後の砦”さえも標的になってしまう、この今の状況に言葉を失います。
喜入キャスター:
両者にそれぞれ言い分があるのかもしれませんが、決して許される行為ではありません。
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