ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続くなか、代替ルートの紅海でも原油の輸送が危機に瀕しています。いま、親イランの武装組織がサウジアラビアへの攻撃を拡大。さらなる原油高騰が危惧されています。いま、サウジで何が起きているのでしょうか。
“フーシ派”によるサウジアラビア攻撃が激化 石油施設への攻撃で原油市場への影響が懸念
サウジアラビアの首都・リヤドで19日、複数回の爆発音が聞かれ、国際空港の近くにある燃料タンクが炎上しました。はるか遠くからでも、空高く立ち上る黒煙が見えます。
フーシ派報道官(19日)
「リヤドにある重要施設を、弾道ミサイルやドローンなどで攻撃した」
攻撃を行ったと声明を出したのは、イランの支援を受けるイエメンの反政府勢力「フーシ派」です。紅海沿岸の都市・ヤンブーの石油関連施設も攻撃したと明らかにしました。
中東情勢の緊迫を受けて、原油価格は9月、約4か月ぶりに一時1バレル=100ドルを超えるなど、高い水準となっています。サウジアラビアの石油施設への攻撃により、原油市場へのさらなる影響が懸念されています。
イランによるホルムズ海峡の封鎖を受け、サウジアラビアは原油をペルシャ湾側の主要産地から、紅海側のヤンブー港にパイプラインで輸送。バブ・エル・マンデブ海峡を通って、アジアへと輸出する動きを強めていました。
仏大統領「戦略備蓄の放出も検討」石油備蓄の追加放出の可能性について言及
ところが7月以降、サウジアラビアとフーシ派は報復の応酬を激化させています。フーシ派は、サウジアラビア船舶に対する「海上封鎖」を宣言。
イエメンの紅海沿いの港湾都市などが制圧され、航行の安全への懸念が高まったことで、サウジアラビアの原油の輸出量は落ち込んでいます。
また、紅海沿岸まで原油を運ぶ「パイプライン」が複数回攻撃を受け、操業を停止しました。
アメリカ・ブルームバーグ通信は、パイプラインの停止を受け、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが、ヨーロッパの顧客に対し10月分の原油の供給を見送ると通知したと報じています。
フランス マクロン大統領
「戦略備蓄の放出についても検討する」
フランスのマクロン大統領は18日、石油備蓄の追加放出の可能性について言及しました。
石油脱却したいサウジアラビア 攻撃多発で国家プロジェクトに痛手か
フーシ派が攻撃したリアドの国際空港周辺や、ヤンブーの石油関連施設を所有しているのはサウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」。フーシ派は、このサウジアラムコの施設を狙ったとされています。
サウジアラムコは、サウジアラビアの石油ビジネスを一手に担い、国家の財政を支える存在で、国際石油市場で大きな影響力を持っています。
なぜ、フーシ派はサウジアラムコを攻撃の標的にしたのでしょうか。専門家は…
慶応義塾大学大学院 田中浩一郎教授
「サウジアラビアの収入を断つということを狙っている。当然、サウジアラビアは国家財政が非常に厳しくなるので、フーシ派の要求を飲まざるを得なくなるだろうと。サウジアラビアにとっても、そして世界の原油市場にとっても大きな影響を与えることになる」
さらに、フーシ派の攻撃はいま、サウジアラビアが進める国家プロジェクトにも大きな打撃となるかもしれません。
2016年に「石油依存からの脱却」や「経済の多角化」を掲げ発表した「ビジョン2030」。現在、巨大な国際空港や大規模リゾート施設の建設が進んでいます。
サウジアラビアは2019年に観光ビザを導入し、外国人客の受け入れを本格化しました。観光省によると、ここ数年、海外からの観光客が急増。2024年には、約3000万人と過去最多を更新しています。
こうした巨大プロジェクトの最中、フーシ派による攻撃が行われたのです。
慶応義塾大学大学院 田中教授
「投資マインドも一気に冷え込むので、このあと4年をかけて、この国家プロジェクトを遂行していく上で、黄色信号が灯ったと言える。
機関投資家、あるいは外国というのは一時的であるにせよ手を引くので、その点では計画に大きな狂いが生じる」
活発化するフーシ派 アメリカの対応は?
緊迫する中東情勢に新たな緊張をもたらしているフーシ派の活動。サウジアラビアと同盟関係のアメリカは、どのように対応するのでしょうか。
ニューヨーク・タイムズによると、トランプ大統領は17日、サウジアラビアのムハンマド皇太子から要請を受け、フーシ派への攻撃の準備を、国防総省に指示したということです。
しかし、トランプ氏は方針を転換。フーシ派への攻撃は直前の段階で当面見送りとなったといいます。
専門家は本来、アメリカはこの状況を放置することはできないとしつつも...
慶応義塾大学大学院 田中教授
「2月以降のイラン紛争を仕掛けたことによって、アメリカ自身の防空体制とりわけ、迎撃ミサイルが大きく不足し始めているということや、攻撃用兵器に関してもだいぶ消耗が進んだということ。新たな戦線をここで開くことは、消極的にならざるを得ない」
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