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中国が譲らぬ「レッドライン」の一方で...日本との前向きな「経済交流」の詳細が判明 不動産やAIにも言及 何立峰副首相の岩屋前外務大臣を厚遇の思惑は?

海外
2026-10-03 07:00

去年11月の高市総理の台湾を巡る答弁以降、日中関係は急速に悪化した。
旅行客は激減し、政治家や政府高官の往来も途絶えた。両国の関係について悲観的な声が多いが、最近、国会議員の訪中が相次いでいる。


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そうした中で、中国の副首相が「レッドライン」を強調しながら、経済交流に前向きな姿勢を見せた。さらに取材すると、非公開の場で更に踏み込んだやりとりをしていたことが判明した。中国側の狙いは何なのか。


悪化した日中関係…その中で相次ぐ国会議員の訪中、副首相とも会談

8月下旬に(当時)中道改革連合の伊佐進一(いさ・しんいち)氏ら、9月中旬に自民党の高村正大(こうむら・まさひろ)氏らがそれぞれ要人と面会。そして、岩屋毅(いわや・たけし)前外務大臣が北京の人民大会堂で、28日に王毅(おう・き)外相、29日に何立峰(か・りつほう)副首相と立て続けに会談した。
岩屋氏はこのほか、商務省の事務次官ら高官3人とも面会した。


日中外交の焦点は今年11月に中国で行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)における首脳会談の有無だが、現状では実現に厳しい見方が多くを占める。
では、中国側がこれまでと比べ会談の「格」を一気に上げた理由は何か。


「撤回」ではなく「是正」 中国が譲らぬ「レッドライン」の一方で…

いずれの会談でも中国側は高市総理の発言などに厳しい評価を下したが、これまで求めてきた発言の「撤回」ではなく、王毅氏は「是正」という表現を用いた。
ただ、岩屋氏は会談後の記者会見で、この表現の差異について聞かれ、「そこに違ったメッセージが込められているとは受け止めなかった」と話した。


何立峰副首相は高市総理の答弁を念頭に「中国のレッドラインに触れた」と強調していた。


中国側の関係者は取材に対し、「何が起ころうと、中国は台湾問題で日本に絶対に譲らない」と話した。中国政府の関係者は「関係が良いに越したことはないが、高市政権を含めた日本側の姿勢には心から憂慮している」と懸念を示した。中国は政治の問題については強硬姿勢を崩していないが、何立峰氏は別のメッセージも発していた。


現実的な経済交流に前向き――中国リスクの不安を和らげる

岩屋氏は日本国際貿易促進協会(国貿促)の会長という立場で、日本企業の幹部らと共に訪中した。
王毅氏は今年6月に亡くなった前会長の河野洋平元衆院議長について「軍国主義の侵略の罪を勇気をもって反省した」と評価していた。


何立峰副首相はメディア向けの冒頭撮影の場で、岩屋氏らの訪中について「経済・貿易の発展をさらに促すと確信している」と期待を示した。これに対し、岩屋氏は「経済交流や民間交流については中国側は決して後ろ向きではなく、むしろ前向き」と記者会見で述べた。


岩屋氏は経済団体のトップで、中国と関係が近い。中国側には、高市政権との政治的対立とは別に、経済交流を維持したい意図が窺えた。


国貿促によると岩屋氏ら訪中代表団は57人。会談に同席した日本企業の幹部はTBSのカメラ取材に対し「一気に雪解けとはいかないが、交流の機会を持てたのは大変いいこと」と話した。


「水到渠成」とは?条件さえ整えば…

関係者への取材を進めると、中国側から記者が退出させられた後の非公開の場で、何立峰副首相が経済交流について具体的に言及していたことが判明した。


経済担当の何立峰氏は、「不動産の在庫問題は解消に向かい、最も困難な時期は過ぎた」と述べた。次に、問題視されている国内需要の低迷を念頭に「消費の内容が変化したほか、高齢者などの消費も拡大し、巨大市場の魅力が増している」と発言した。
同席していた日本企業幹部向けの、「中国リスク」への不安を和らげるメッセージだったとも言える。


また、AI分野の可能性についても、「全ての家庭や産業に影響を与え、我々の予想を上回る」と強調した。さらに、「日本との経済協力を進め、ビジネスチャンスを探し、共に発展していきたい」と踏み込んだ。


中国側の意図についてはさまざまな見方がある。深刻な失業率など自国経済への問題意識に起因した可能性もあるが、中国経済に詳しい専門家は取材に対して否定的な見解を示した。ただ、別の識者は投資などを通じ、「日本企業と密接な関係にある地方政府にとっては重要な問題だ」と指摘した。


地方政府のことは会談でも言及された。
岩屋氏は何立峰氏に日本と中国の地方政府との交流再開を申し入れた。すると、何氏は自身の地方政府勤務経験に触れながら、「雰囲気の問題ではないか」と表現した。そして、「国貿促は日本政府の台湾発言を正すために役割を発揮して欲しい」と述べた。その問題が解決されれば、という条件を付けた上で「水到渠成(すいとうきょせい)」と述べた。直訳は「水が流れれば自然と水路ができる」という意味で、条件さえ整っていれば焦らずとも物事は自然に成就するという故事成語だ。


岩屋氏は高市政権に苦言を連発するなど、総理とは距離がある。岩屋氏らをここまで厚遇したことは、高市政権に対して「態度を変えれば相手にする」という具体的かつ戦略的なメッセージだったとみられる。経団連の筒井義信(つつい・よしのぶ)会長が定例記者会見で岩屋氏の会談について問われ、「非常に評価している。日中関係の改善に向けて率直な意見交換が行われたと期待する」と述べたことは重要だ。


岩屋氏「政府間の話し合いが進むように最大限努力したい」

岩屋氏は金杉憲治(かなすぎ・けんじ)駐中国大使が会談に同席していたことに触れ、「会談の内容は政府にも届いていると思う」とした上で「政府間の話し合いが進むように最大限努力したい」と述べた。


APECを前に、高市総理がこの会談の結果にどう向き合うのかが焦点になったともいえる。


日中国交正常化と同じ日

岩屋氏と何立峰氏の会談が行われた54年前の同じ日、同じ人民大会堂で、当時の田中角栄首相と周恩来首相が日中共同声明に調印した。


会談中、北京の日本大使館で、日中文化交流の催し物が開かれていた。1970年代から80年代に日本で流行した音楽、いわゆる「シティポップ」の紹介イベントだ。「シティポップ」は中国でも人気で、大使館によると約150人が来場した。その多くが中国人だった。


日本の曲をベースで弾くことが趣味だという男性は「偏見や誤解を放置すれば、コミュニケーションのチャンネルが閉ざされ、決して望ましい関係とは言えない。言語は違っても、文化や音楽といった共通点を通じてさらなる交流へと繋げて欲しい」と話した。


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