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中間選挙でトランプ大統領に“逆風” 高まる「反イスラエル感情」 揺らぐユダヤ系アメリカ人の影響力【報道特集】

海外
2026-10-31 20:30

11月3日に行われるアメリカの中間選挙で注目されているのがイスラエルの存在です。
これまでは党派を問わずイスラエルを支持することが常識とされてきましたが、その常識がいま揺らいでいます。アメリカ政治に大きな影響力を持ってきたイスラエルをめぐる問題の現状を取材しました。


【写真を見る】「想像はしていたが、それ以上」 “全米最強” ロビー団体「AIPAC」の影響力


激戦州で注目のイスラム教徒初の上院議員を目指す候補

取材に入ったのは、アメリカのミシガン州・デトロイトから約200キロ離れた人口7万人ほどの「カラマズー」という街。


中間選挙の激戦州のひとつで、ある民主党候補の集会が行われていた。


村瀬健介 キャスター
「行列が長く続いています。かなりの支持が集まっているのがわかります」


会場にも人が溢れる。


村瀬キャスター
「いまエルサイード候補がステージに登場しました。今回の上院議員選挙で最も注目されている候補者の一人。当選すれば、アメリカ史上で最も珍しい候補者となります」


トランプ氏「絶対に許さない」 候補者の宗教やルーツを非難

現地時間11月3日に投票が行われるアメリカ中間選挙。

民主党で注目候補となっているのが、イスラム教徒で急進左派のエルサイード氏だ。


民主党 エルサイード候補
「トランプの是非が問われている。イラン戦争の是非がこの選挙にかかっている」


物価高対策など、低所得者に向けた政策をアピールする。


民主党 エルサイード候補
「トランプ政権下で食品の価格があまりにも高い。『国民はラマダン=断食をすればいい。これぞトランプ流の物価対策だ』『一日中断食していればいい。食料品店はつぶれろ』と言っているようなものだ」


一方、トランプ大統領はエルサイード氏を「イスラム過激派だ」と決めつけ、非難した。


共和党 トランプ大統領
「私がここにいるのは、ジハード主義者でムスリム同胞団のメンバーが、アメリカの上院議員になるのを阻止するためだ。彼が上院議員になるのは絶対に許さない」


こうした発言に対し、エルサイード氏の集会に参加した人は…


――アラブ系やイスラム教徒といった(エルサイード氏の)経歴を批判する人もいるが?


集会参加者
「何の問題もありません。アメリカは移民の国です。多様性があり、キリスト教だけの国ではありません」


エルサイード氏は、パレスチナ・ガザ地区を攻撃しているイスラエルへの軍事支援を停止するよう訴えているが…


集会参加者
「私はユダヤ人ですが、気になりませんよ。ユダヤ人とパレスチナ人は、平和に暮らすために協力すべき。エルサイード氏が後押ししてくれると願っています」


――彼がアラブ系やイスラム教徒であることに懸念は?


「全く気にしません。アメリカ人は、出身国を気にしてはいけません。それがアメリカンドリームなのです」


トランプ大統領の判断に影響与えるイスラエル 蜜月の歴史

10月22日~26日にロイター通信が行った世論調査によると、「きょう選挙が行われるとしたらどちらの党の候補に投票す​るか」との質問に、47%が民主党と答え、共和党と答えたのは36%だった。


共和党への支持が伸び悩む背景にあると考えられているのが、トランプ大統領が進めたイランへの軍事攻撃を機に急速に進んだ物価高だ。


しかし、トランプ大統領は強硬姿勢を崩さない。


トランプ大統領
「短期的には影響が出るが、大したことはない。狂ったイランから核兵器を取り上げるには安いくらいだ」


トランプ大統領の判断に影響を与えているのが、ともにイランへの軍事攻撃に踏み切ったイスラエルだ。


27日、総選挙が行われたイスラエルの街中にも、ネタニヤフ首相とトランプ大統領を描いた広告が掲げられていた。


1948年、「ユダヤ教徒の悲願」として建国されたイスラエルに対し、アメリカは絶えず支援を行ってきた。その関係の深さを物語る場所がニューヨークにある。


村瀬キャスター
「ニューヨークの中でも特にユダヤ人の多い地域です。この街を見ると、ヘブライ語の看板も並んでいます。アメリカの中にあって、まるでこの地域だけがイスラエルにいるような雰囲気も漂う街になっています」


この地区では、第二次世界大戦中のヨーロッパでの迫害を逃れてきたユダヤ人らが、独自のコミュニティを作って暮らしてきた。


――まもなく中間選挙ですね。投票する予定ですか?


ユダヤ系アメリカ人
「私は大の共和党支持者です。トランプの大ファンです。次の救世主・メシアだと信じています。トランプほど、イスラエルに尽くしてくれた人が過去にいたでしょうか」


ユダヤ系アメリカ人
「誰に投票するかは言えませんが、この地区の住民ならユダヤ系アメリカ人の保護に最も適した人物を支持するでしょう。反ユダヤ主義と闘い、イスラエルの地を守ってくれる人物です。神を信じていれば心配ありません。神が私たちを守ってくれます」


「想像はしていたが、それ以上」 “全米最強” ロビー団体「AIPAC」の影響力

ユダヤ系アメリカ人は人口の約2%しかいないが、政治では絶大な影響力がある。


そのなかで、「全米最強」とも言われるロビー団体が「アメリカ・イスラエル公共問題委員会=AIPAC」だ。


共和党か民主党かを問わず、「イスラエル支持」を表明する政治家を支援し、「反イスラエル」を掲げると徹底的に追い詰める。無視できない存在であることは、集会に数多くの政治家が登壇することからもうかがえる。


その強大な影響力に直面した人物が民主党の元下院議員、ジャマール・ボウマン氏だ。


元下院議員 ジャマール・ボウマン氏
「想像はしていたが、実際の影響はそれ以上だった」


ニューヨーク生まれの元教師で2020年に初当選し、2期下院議員を務めた。


ガザ地区で犠牲者が増え続けるなか、ボウマン氏はイスラエルの軍事侵攻を厳しく批判してきた。


ジャマール・ボウマン氏(2024年)
「無差別な民間人への報復、これは自衛ではなく一線を越えている」


こうした発言で、ボウマン氏は標的となった。3期目を目指し、民主党内の公認を争った2年前の予備選挙で、AIPACは巨額の資金を投じて、対立候補を後押ししたのだ。


元下院議員 ジャマール・ボウマン氏
「家に帰って郵便物をチェックすると、15通中10通が私への誹謗中傷。娘がYouTubeを開くと、父である私を批判する広告が流れてきた」


その一つが、当時大統領だった民主党のバイデン氏に否定的だと決めつける広告だ。


当時の広告
「ジャマール・ボウマンはバイデン大統領に攻撃的でニューヨークに損害をもたらしている」


作ったのはAIPACの関連団体だった。ボウマン氏を批判する広告など、ネガティブキャンペーンに約1500万ドル(約24億円)が使われたと報じられている。


元下院議員 ジャマール・ボウマン氏
「重要なのは、私のイスラエルに対する意見をAIPAC側は攻撃対象にしなかったということ。あたかも私が『反・大統領』かのような広告を作った。イスラエル問題は大きな争点にならないとわかっていたため、完全に隠した」


AIPACによる総攻撃を受けた2024年、ボウマン氏は現職でありながら予備選で敗退した。


元下院議員 ジャマール・ボウマン氏
「AIPACの影響力は大きかったが、焦りも見えた。ガザからは学校や教会、モスク、病院が破壊される様子が直接伝わってきた。すべて戦争犯罪だ。世論が急速に変化していたため、私に対する彼らの攻撃は力を示すことよりも、焦りによるもの」


米社会で急速に高まる「反イスラエル感情」 

今、アメリカ社会では「対イスラエル感情」に大きな変化が起きている。


記者
「ペンシルベニア州フィラデルフィアに来ています。弾薬メーカーの目の前でパレスチナへの支持を訴えるデモが行われています」


デモの参加者
「イスラエルの政策は、帝国主義と虐殺の上に成り立っていて、それにアメリカが資金提供している」


変化はデータからも読み取れる。
2026年2月に公表された世論調査では、中東情勢をめぐり「パレスチナ人により共感する」と答えた人(41%)が「イスラエル人により共感する」と答えた人(36%)を2001年の調査開始以来初めて上回った。


男性
「何十年にもわたるユダヤ人への抑圧には同情するが、ガザへの攻撃は間違っている」


男性
「イスラエルを無条件に支援すべきとは思わない。アメリカ国内には、お金を使うべきところがある」


アメリカで急速に高まる反イスラエル感情。ユダヤ系アメリカ人の若い世代はどう感じているのか。


ユダヤ人の“誇り”を守るため 親イスラエル団体の教育現場では…

ユダヤ系の男性(29)
「ニューヨークでも破壊行為がよく起きます。ナチスのマークが描かれたり、ユダヤ系の店が標的にされたりしています」


ユダヤ系の男性(34)
「マッチングアプリのプロフィールでも『シオニストお断り』『ユダヤ人お断り』と書いている人もいます」


ユダヤ系の女性(20)
「間違った責任転嫁もある。ホルムズ海峡を封鎖したのはイランなのに、ガソリン価格などの高騰を『アメリカやイスラエルのせいだ』と責める人もいる」


一方、ニューヨーク郊外では…


記者
「こちらの住宅では、子どもたちを集めて、ユダヤ人の歴史や伝統を教える集会が開かれています」


室内には10代のユダヤ系アメリカ人たちが集まっていた。ユダヤ民族の誇りを持てるよう、子どもたちを教育している「CLUB Z」という親イスラエル団体の施設だ。


この「Z」は、イスラエルの地にユダヤ人の祖国を再建し、独立と主権を取り戻す運動「Zionism(シオニズム)」の頭文字だ。


この日の講義は地理。


「クラブZ」講師
「イスラエルの外にはイスラム教の国が約50か国あります。イスラエルがいかに小さいか、よくわかりますよね」


イスラエルはパレスチナ自治区に入植地を作り、土地を占領していると国際的に非難されているが…


参加者
「これは領土争いだと誰もが言いますが、そうではないことは明らか。もし本当に領土が目的なら、余っている他の場所を探すはず。だからこれは宗教戦争なんです」


「クラブZ」講師
「そう、宗教戦争です」


講師のダニエル・ブルックスさんは、団体の活動の意義をこう語る。


「クラブZ」講師 ダニエル・ブルックスさん
「ユダヤ人は3000年続く鎖のようなもの。その鎖が途切れないように、若い世代の絆を強めることが目的。今、世界中のユダヤ人の子どもたちがイスラエルと距離を置くようにという圧力や、イスラエルに関する偽情報を信じ込ませようとする圧力に直面している」


参加者に話を聞くと…。


参加者(15)
「事実や歴史を知らない人たちが、SNSやネットで聞きかじった知識で紛争の歴史や全体像を理解しないまま、パレスチナを支持しているのだと思います」


イスラエルは「悪役として描かれる」 ユダヤ系の子どもたちは

続いて行われたのは、グループに分かれてのディスカッション。並べているのは、年代の異なる6枚のイスラエル周辺の地図だ。


イスラエルとパレスチナ自治区をめぐっては、戦争や合意などを経て何度も境界線が変更されてきた。


「クラブZ」講師 ダニエル・ブルックスさん
「ガザ地区と呼ばれる土地をエジプトのあとに支配していたのは誰?」

参加者
「ハマスですか?」

「クラブZ」講師 ダニエル・ブルックスさん
「ハマスはもっと後だね」


講義中は「ガザ」という言葉が何度も使われる。


この3年間で、イスラエルによるガザ地区への攻撃により7万4000人以上が死亡した。


――イスラエル政府はパレスチナの民間人に大きな損害を与えたと思いますか?


「クラブZ」講師 ダニエル・ブルックスさん
「損害を数字で判断するのは難しい。戦争は悲劇的です。イスラエルに対して誰が戦争を仕掛けているのかを問う必要があります。イスラエルは大きな力を持っているため、しばしば悪役として描かれます」


子どもたちもイスラエルへの感情の変化を感じ取っている。


参加者(16)
「親パレスチナの人と話すと実感します。私がユダヤ人だとわかると、ピリピリし始め、私がすべてのアラブ人やイスラム教徒を憎んでいると思い込むのです。とても悲しい。私はみんなを愛しています」


――アメリカとイスラエルの関係について、どのような未来を望みますか?
「ここアメリカには平等な権利や民主主義などの価値観があり、イスラエルは中東でその道しるべの役割を担っています。今後もイスラエルとアメリカが緊密に連携して、『西洋の理想』を世界に広めていってほしいです」


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