経営陣を刷新して「変革を進める」というフジテレビと親会社ですが、大株主が提案する新たな取締役候補12人全員を外す方針を固めたことがわかりました。
改革に意欲を見せていた人物も外す、その狙いとは。
大株主の提案人事“拒否” ポイントは「フジが新たな案を出せたこと」
日比麻音子キャスター:
これまでのフジHD取締役選任をめぐる経緯を振り返っていきます。
▼3月27日
フジ・メディアHDの取締役 10人の退任発表
▼4月16日
大株主「ダルトン」12人の取締役候補を提案
▼4月30日
フジ・メディアHD 金光社長ら4人の退任が発表
フジテレビの清水社長以外、役員取締役が刷新されるということになりました。
フジテレビ、フジ・メディアHDにおいて、新しい人事のポイントはどこでしょうか?
【「ダルトン」提案する取締役12人】
北尾吉孝 SBI HD 会長兼社長
北谷賢司 ワーナー・ミュージック・ジャパン会長
福田 淳 STARTO ENTERTAINMENT CEO
堤 伸輔 「フォーサイト」元編集長
坂野 尚子 元フジテレビアナウンサー
岡村宏太郎 サッポロHD 社外取締役
菊岡 稔 元ジャパンディスプレイ社長
松島 恵美 弁護士
近藤太香巳 NEXYZ.Group社長
田中 渓 ゴールドマン・サックス証券 出身
水落一隆 弁護士
西田 真澄 ダルトン パートナー
※敬称略
河西邦剛弁護士:
一番のポイントは「新たな案を出せた」というところです。
今回、金光社長が退任するので、新たなトップとして元ファミリーマート社長の澤田貴司氏が選ばれました。世の中やスポンサー(への信頼)回復に向けて強いアピールをしていくことが目的だったのかなと思います。
日比キャスター:
6月に株主総会が控えていますが、新たな人事は、やはりスポンサーに対する説明、視聴者に対する刷新感というのもポイントになりますか?
河西邦剛弁護士:
一番のポイントは、スポンサーの回復です。ここについては今、ダルトンや様々なファンド側と対立するような形になっていますが、スポンサー回復という点については、全員の利害関係が一致しています。
4月16日に、ダルトンが提案していた候補もありましたが、今回の新役員案をフジテレビ側が出したことによって、スポンサーが帰ってきたら、ある意味、目的達成できたという見方もできると思います。
提案人事“拒否” 新たに計4人を選出 狙いは?
日比キャスター:
16日、フジ・メディアHDが新たな取締役候補として、ファミリーマート元社長の澤田貴司氏、その他、フジテレビの柳敦史財経局長ら計4人を選出しました。6月の株主総会で提案するということです。
ダルトンが提案した取締役12人を踏まえた上で、どんなことをフジ・メディアHD側に求めたとみられますか?
河西邦剛弁護士:
状況がどんどん変化していて、これは、ちょうど1か月前の状況です。
まさに1か月前は、3月31日に報告書が出され、旧経営者陣の責任が強く追及された内容になっています。
当時のフジテレビは、旧経営者陣を残したまま人事案を提案していたので、それに対して、大株主としては「これでは、スポンサーが帰ってこないじゃないか」というような牽制や圧力、人事案を新しく変えてくれ、というような第一案だったという見方ができると思います。
これが全てではなく、まず一発目の牽制球を投げたという見方が1か月前の状況かなと思いました。
フジは拒否するも…「ある程度、ダルトン側の要求を飲んだ」
日比キャスター:
この1か月というのは、どういった協議が行われてきたとみられるのでしょうか。
河西邦剛弁護士:
この1か月間で何が変わったかというと、フジテレビの金光社長が退任することが明らかになりました。ダルトン側から「5人辞めてくれ」と言われていましたが、清水社長を除く4人が辞めるということになりました。
フジ側は、ある程度、ダルトン側の要求を飲んだ状態になっていて、スポンサー回復に向けて現実的な案を出してきたという流れになっていると思います。
日比キャスター:
“ダルトン側の提案を拒否した”とお伝えしましたが、提案を受けた上で、1か月協議が行われ、4人が辞めるということになったということですね。
「ダルトン」「フジ」 どうしても一致できなかった部分とは?
河西邦剛弁護士:
ダルトン側とフジ側で、どこが相容れなかったのかというと、不動産事業の分離の話です。フジ・メディアHDは、テレビ事業と不動産事業の両方から売り上げを得ています。
ダルトン側としては「不動産事業を分離してほしい」という意見でしたが、フジ側は基本的に「ノー」としています。ここはどうしても一致できなかった部分だと思います。
日比キャスター:
その部分は、今後どのように進んでいくのでしょうか?
河西邦剛弁護士:
まず、今回のポイントとしてはフジ側が役員を出しました。ここで、世の中やスポンサーがどう評価するかだと思います。
ここでスポンサーが帰ってくるとなれば、フジ側は優勢になり、浮動票が集まってきて、フジ側の支持になってくるかと思います。
これでスポンサーが帰ってこないとなると、6月の株主総会で、フジ側が選んだ役員候補が選任されるのか、それともそうではないファンド側などになって対立構造になるのか。決めていくのは株主というよりも、スポンサーの動向が現実的なところだと思います。
日比キャスター:
以前から提案されていた12人を拒否したということで、6月の株主総会が荒れるのではないかという見立てもあります。
河西邦剛弁護士:
スポンサーが帰ってくれば、おそらく荒れないと思います。ただ、ここで帰ってこないとなると、ダルトン側も当然、不満を持つでしょうから新たな候補者を出したり、自分たちの役員をさらに提案したりするということがあり得るかと思います。
もし仮にバトルが続いていく場合には、株主総会に向けて、それぞれの委任状争奪戦のような、どっちが多くの支持者を集められるかというバトルになってくると思います。
SBI HD会長兼社長 北尾氏「激怒」と報道 そのワケは?
日比キャスター:
SBIホールディングス会長兼社長の北尾氏が、候補が拒否されたということを受け、激怒しているという報道もありました。
ダルトン関係者によりますと、提案を拒否した理由としては「フジ側に北尾氏への強い嫌悪感があった。北尾氏の会見がフジにとってネガティブに捉えられた。それでダルトンの推薦者全員に不安感が広まった」ということです。
河西邦剛弁護士:
北尾氏が激怒しているということですが、何について激怒しているのかという点です。今回、選ばれなかったことに対して激怒しているのか、それとも、従前ダルトンやフジから聞いていた話と違うじゃないかというところに激怒しているのか、現状不明確です。
元々、北尾氏は「自ら役員になります」と言ったわけではありません。ダルトン側から提案されて、ということになります。
ここで、ダルトンがどういう動きをするかも関係してきて、ダルトンが北尾氏に対して「特に候補者になってもらわなくても構いません」と言ったら、まるではしごを外されたような形になる。その場合には、自分自身で自分自身を提案していくという流れになる可能性もあるかとは思います。何について北尾氏が不満を持っているのかにもよってくると思います。
単純に選ばれなかったから、激怒しているわけではないと思います。
SBI HD会長兼社長 北尾氏「5%目指す」 連携でフジに対抗?
日比キャスター:
今後、北尾氏が野村氏らと連携してフジ側に対抗するかもしれません。
フジ・メディアHDの株式の状況は
・野村氏 11.8%
・ダルトン系 7.2%
・レオス 5.1%
・北尾氏 今後5%超の取得目指す?
河西弁護士によると「株式の保有が50%をこえると、役員人事権を握られる」といいます。
河西邦剛弁護士:
株主総会において、50%を超えないと送り込めません。誰も50%を超えてこない場合、誰も選任することができないという状態になりかねません。
そうすると、法律上は今の役員陣がずっと続いていく可能性もあるので、このあたりについて、誰が51%を超えるような候補者を出せるかどうかが非常に大きなポイントになってくるかと思います。
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<プロフィール>
河西邦剛
レイ法律事務所パートナー弁護士
芸能・エンターテインメント分野の法律問題が専門
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