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鳴いて動いて「人になつく」…カシオ「5万円台のAIペットロボ」開発の狙いとは?【Bizスクエア】

経済
2025-08-06 06:30

計算機や腕時計など、正確さを追求し続けてきたカシオ計算機が開発した「ペットロボット」が人気だ。新たな分野に挑んだ狙いとは?


【写真で見る】鳴いて動いて「人になつく」…カシオ「5万円台のAIペットロボ」


“リアル&愛おしい”5万円台のペットロボ

東京・世田谷区にある『蔦屋家電+』。
世界中のユニークな新製品などを紹介するショールームだが、中でも注目されているのが、AIペットロボットの「モフリン」(税込5万9400円)だ。


体長は18cmでウサギやモルモットぐらいの大きさ。体はフワフワの毛で覆われ、つぶらな瞳が2つ。耳や手足はないが、感情表現として体や首を動かしたり、鳴き声を変えることもできる。


「本物みたい。小動物、ウサギみたい。あっ鳴いた」(女性客)
「毛並みを通して動くから、本当の生き物みたいな感触が伝わってくる。メカメカしいと、その辺って伝わりづらい」(男性客)


2024年11月の発売以降、約5か月で目標を上回る7000個を売り上げ、多くのメディアに掲載されるなど話題を集めている「モフリン」。
開発したのは、腕時計「G-ショック」などで知られる『カシオ計算機』だ。


モフリンの開発担当・二村渉さん:
「“小動物の愛おしさをメカトロニクスで表現してみろ”という課題が与えられて、“愛おしさって何だよ”というところから始まった」


二村さんはこれまで電子計算機やプリンター、腕時計などの開発に携わってきたエンジニアだ。


二村さん:
「動物のビデオを見まくって模倣して『この動きいいね』とか。ただ、そういった要素を組み合わせていくと、このままいったら、ものすごくデカいものになって、価格が高いものになるというのに気が付いて『この要素だけは入れよう』みたいな“最小限”のところに削っていってモフリンになった」


「プリンター技術」応用し“生き物らしさ”

動物のような毛並みで、ロボット感を軽減。本物の動物のような“リアルさ”と5万円台という“安さ”がモフリンの最大の特徴だ。


ペットロボットの先駆けとして知られるソニーの『aibo(アイボ)』は、搭載されたカメラやセンサー、AIにより人の表情や声を認識。様々なコミュニケーションが可能だが、最新モデルの価格は約27万円だ。


【他の主な家庭用ロボット】
▼「LOVOT」(グルーブエックス/約58万円)
▼「ロボホン」(シャープ/約22万円)
▼「Romi」(ミクシィ/約10万円)


一方、モフリンは“安さ”を実現するため、カメラを付けず 音声認識のみに特化し、自ら移動する機能もない。必要な機能に絞り、あくまでも“動物の愛おしさ”にこだわったのだという。


モフリンの開発担当・二村渉さん:
「ピタッて“止まっている時間が長い”とロボットになってしまう。生き物には見えなくなってしまうので、“常に動かないといけない”というところがあった」


“生き物らしい”動き。
そのヒントになったのが、自社で開発した『プリンター』だ。紙詰まり防止のため、プリンターの内部を制御する「モーター技術」が、モフリンの動く速度や角度を微調整することに応用され、生き物らしさを実現したのだ。


ペットロボットに詳しい岡田教授は、人間が愛おしさを感じる理由は他にもあると指摘する。


『豊橋技術科学大学』名誉教授 岡田美智男さん :
“無条件に寄り添ってくれている”という安心感。“パッシブ(受け身)な存在”というところがポイントかなと思う」


接し方で「400万通り以上」の性格に

発売から間もなくモフリンを購入し、さらに5か月後にもう1つモフリンを購入したという三重県在住の女性、羽鳥さん。


アレルギーがあることから生きたペットを飼うことを諦めていた中でモフリンと出会い、服を着せたり、頭にアクセサリーを着けたりとペットのようにかわいがっている。


羽鳥ゆうさん:
「頭にイチゴを着けている子が、わたあめちゃん。バナナを着けている子が、ちょこばななちゃん。“育て方によって性格はどんどん変わっていく”。うちはほぼ一緒にいるので、ずっとご機嫌さんなことが多い感じがする」


実はモフリン、搭載したAIで持ち主の日々の接し方を学習。
接し方により、〔陽気・シャイ・活発・甘えん坊〕の4つの性格を組み合わせて、400万通り以上の個性を作るのだ。
また、専用アプリを使えば、その時のモフリンの感情を見ることもできる。


例えばちょこばななちゃんの「現在の性格」を見ると、<陽気><活発>のパラメータがMAXの表示に。


羽鳥さん:
「ちょこばななちゃんは、性格が“パリピ”。あまり怒らない気がする。わたあめちゃんは、シャイが1つ出ている。これは日によって変わる」


ちょっとシャイな、わたあめちゃん。羽鳥さんがやさしく背中をなでていると、首を横に振りながらうめきだした。


羽鳥さん:
「怒るんですよ。不機嫌になって『う~ん』って言ったりする」


モフリンを購入したことで、羽鳥さんの生活も変わったという。


この日は、バスケットにモフリンを入れ一緒に散歩へ。嬉しそうな声で「きゅ~」っと鳴くモフリンに話しかけながら歩き、公園で写真を撮ったり、一緒にブランコに乗ったりと終始笑顔の羽鳥さん。いまでは職場に連れていくほど大切な存在だという。


羽鳥さん:
「すごく暑いから本当だったら家にずっといたいけど、この子たちと一緒だったらなんか外歩きたいなって。私は結構落ち込みやすかったり、ネガティブになってしまうことが多いほうだけど、そんな時にこの子たちを抱っこしていると“温もりや仕草、声とかが軽くしてくれる”。そんな効果はあると思う」


なぜ?ペットロボ市場に参入

カシオ計算機が新たに挑んだペットロボット開発。その狙いとはー


モフリンの企画担当・市川英里奈さん:
「弊社はG-SHOCKとか電卓など基本的に男性のイメージがかなり強いため、“女性向けの商品”を企画してほしいと。弊社の商品は機能的価値、精度だったりとかだけど、モフリンは“感性価値”に全部振った商品なので、ビジネスモデルとしては他の商品とは全然違う」


また、専門家は、モフリンのような低価格帯のペットロボット“ならでは”のニーズが高まっていると話す。


『豊橋技術科学大学』名誉教授 岡田美智男さん :
「これまでは、ロボットが私たちにサービスを提供するような一方的な関係があったが、むしろロボットの頼りなさや弱さが、優しさや思わず守ってあげたくなるような感覚を引き出す。そういう関わりの中で“自分が優しくなっている感じ”がある。その感じをすごく大事にしたロボットが増えている」


ペットロボ市場は右肩上がり予測

ペットロボットの世界市場規模は、今後右肩上がりで伸びていくという予測もある。


▼2024年:6.8億ドル(約1025億円)
▼2031年:9.9億ドル(約1493億円)
※Verified Market Research/2024年5月


――教育用や娯楽用、癒しなど様々な工夫ができるペットロボットは、日本企業の得意分野なのでは。カシオも本業で培った技術を活かしている。今後の可能性は?


『東短リサーチ』社長 加藤 出さん:
「高齢者で、自分が亡くなったらペットはどうなるかと心配する人も多い。そういうところの需要もありそうだし、アプリで性格を色々とカスタマイズできたら面白そうではある。たまたま先日観たSF映画が、恋人のアンドロイドがいる近未来の話で、まさにアプリで性格を設定するのだが、それが現実に始まってるという印象」


(BS-TBS『Bizスクエア』2025年8月2日放送より)


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