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「物価高対策でインフレ加速も…」どうなる?株高・円安・物価高【Bizスクエアで学ぶ 投資のキホン#38】

経済
2025-11-26 07:00

高市政権による物価高対策では「むしろインフレを加速させる可能性もある」との指摘も。株高・円安・物価高の現状と今後を、2人の“お金のプロ”はどう見ているのか?


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株価は「ある程度高いままいく」

まずは、ここ数か月の【株価】の動きと今後について。


「夏以降かなり楽観的なムードが続いていたが、それは一旦完全に終わったなという感じ」というのは、『ニッセイ基礎研究所』の井出さんだ。


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「最近だとAIバブルみたいなのが警戒されたり、アメリカの景気に対する懸念材料とか、FRBの利下げが遠のいたのではとか、株式市場としてはネガティブなところがやたら目につくようになってきた。4万5000円ぐらいまでいつ下がってもおかしくないと思うが、長期的な上昇トレンドは変わってない。AIバブルへの警戒などで株価が上下する場面はいくらでもあり得るが、本源的にAIへの需要が弱まるとか、半導体を作らなくていいとかはあり得ないので」


『BNPパリバ証券』グローバルマーケット統括本部副会長の中空さんも「株価はある程度高いまま」と見ている。


『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「株はやはりインフレによって資産価格の調整を受けていると思うので、インフレになっていくのであれば株価はある一定程度は上がったままでいくのではないか。また、コーポレートガバナンス・コードが10年を迎えて定着してきたり、PBR(株価純資産倍率)を1倍にということが根付いてきた。それも評価できることから、株価はある程度高いままでいくのではと思っている」


長期金利の上昇は「市場の警鐘」

では、【債券市場】はどうか。


20日には長期金利の代表的な指標である「10年物国債」の利回りが一時1.835%まで上昇。“約17年半ぶり”の高い水準となった。


『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「債券のマーケットは、やはり財政の弛緩が始まっているということで“警鐘を鳴らしてきている”と思う。なので、財政を使った分だけ景気が良くなるという確信に繋がるようなことが起こらなかったら、『この金利上昇は財政弛緩を警戒してるぞ』という懸念に繋がったり、あるいは国債の格付け機関に格下げ方向で見直しと言われてしまうとか、そういうことはあり得る。債券の方は金利上昇という意味では若干注意が必要になってきている」


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「今見えている経済政策は、即効性はあるかもしれないけど、“目先のことばかり”。中長期的に日本の国力を高める、成長を後押しするみたいなものがあまり見えないことも原因ではないか」


物価高対策で「インフレ加速」?

目先の政策ー


21日に閣議決定された【物価高対策】はバラマキ感も否めず、“インフレに拍車をかけるリスク”もあるという。


<物価高対策>
▼18歳までの子どもひとり一律2万円給付
▼電気・ガス料金7000円程度補助(26年1~3月)
▼3000円相当の「おこめ券」など食料品支援
▼ガソリン・軽油 1万2000円程度減税(世帯あたり)
▼「年収の壁」引き上げ 2~4万円程度減税(1人あたり)


『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「今の物価高対策は、物価高で困っている人をどう手助けするかに焦点が当たっている。それも必要かもしれないが、“物価高を元から絶つことが一番大事”。そのためには日銀が金利を上げるのが一丁目一番地だと思う」


――「利上げ」が物価高対策?


中空さん:
「そもそもそういうために金融政策があるわけだから、物価が上がっているのを止めるには金利を上げていくしかない。困っている人への対策も必要だとは思うが、一丁目一番地をやらないから結局いつまでもバラマキが続くことになる」


――給付金やおこめ券などを配ることで即効性はある程度あったとしても、それだけだと結局インフレは止まらないと


中空さん:
「むしろ“インフレが加速する可能性”も出てくる。過去の事例や他国を見ても、物価が高くなって給付金を配った結果もっとインフレになったことは多々ある」


必要なのは「利上げでインフレ抑制」

中空さんが懸念するのは、
【財政拡張】⇒【国債費増】⇒【円安】⇒【物価高】⇒【財政拡張】…という悪循環だ。


『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「円安は金利を上げることで変わると思うし、もしかしたらアメリカの景気が悪くなることでドル安になって結果円高に…ということもあり得る。なのでカギを握ってるのは為替水準が大きい。そこが変わらないのに物価高だけ表面的に取り繕っても、やっぱり同じことが起きてしまう」


一方、井出さんは、「利上げでインフレを抑える」ことについて疑問を口にする。


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「円高に持っていってインフレを抑えるという効果はあると思うが、そもそも金融政策でインフレをコントロールするというのは“需要サイド”をコントロールする話。今日本で起きているインフレは、主にコストプッシュ型のインフレで、円安や人手不足、原材料費の高騰などが原因。需要はそんなに強くない。そんなに強くない需要を、利上げで抑え込めるものなのかどうかその辺も今ひとつピンとこない」


中空さん:
「確かにその通りだが、需要がちょこっとあるけど供給はもっとないという状況なので、需要も供給も一応合わせるところまで合わせないと、供給不足で結局景気が回らないということになってしまう。少しでも需要はあるので、まずは物価を抑えて、それによって消費マインドにもっと火をつけることが必要だと思う。4000円もらうのも7000円もらうのもそれなりに効果はあるけれど1回きり。それでどんどん消費しましょうとなるわけじゃないから、根本的に消費をしていくような政策をとらないといけない。それが利上げによるインフレ抑制」


税金は「勝ち筋」に使うべし

続いては、高市政権が掲げる【積極財政】について。


井出さんは足元の物価高対策のような近視眼的目線だけでなく、長い目でみた税金の使い方が必要だという。


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「投資というか、将来キャッシュフローを日本に及ぼすような、日本の稼ぎになるような税金の使い方。例えば熊本のTSMCの第一工場だけでも政府が5000億円ぐらい突っ込む。結構大きい額だがおそらく将来5000億円よりもっと大きいキャッシュフローが返ってくるということだろうし、地元経済もすごく潤っている。そういう戻ってくる、おつりが返ってくるぐらいの税金の使い方を、もっともっと増やしてほしい」


『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「大賛成。私はよく“勝ち筋”という言い方をするけど、日本の勝ち筋はどれなのか。その勝ち筋にきちんとお金をつけていくことが大事」


重点投資の“勝ち筋”は「GX」「海洋」

では、高市総理が掲げた【重点投資対象】の中に“勝ち筋”はあるのだろうか?


<重点投資対象17分野>
▼AI・半導体▼造船▼量子▼合成生物学・バイオ▼航空・宇宙▼デジタル・サイバーセキュリティ▼コンテンツ▼フードテック▼防衛産業▼情報通信▼防災・国土強靭化▼創薬・先端医療▼海洋▼フュージョンエネルギー(核融合)▼マテリアル(重要鉱物・部素材)▼港湾ロジスティクス▼資源・エネルギー安全保障・GX


『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「これだけ上がってくると何が落ちてる?というぐらいだが、私がずっと注目していたのは【GX】(グリーントランスフォーメーション)。気候変動とかの対策になるような技術。今は寒くなったから暑かった夏を忘れているけど、地球はどんどん暑くなっている。やはり止めないと色々な問題が出てくると思う」


さらに、【海洋】も注目だという。


中空さん:
「日本は国土は小さいとみんな思っているけど、海岸線を足すと世界で第6位。すごい海岸線を持っているので、海洋に関わるビジネスチャンスも結構あると思っている」


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「何となく株の人間からすると、どうしても【AI・半導体】に目が行く…」


中空さん:
「それもやらないわけにいかないと思う。なので多少やるけれども、No.1になれないと、お金になっていかない可能性がある。世界のどこで何を作っても『この分野は日本の力を借りないとダメだ』みたいなことをいっぱい作りたいわけで、そうしていくことがこれからの日本の安全保障にも繋がっていくかもしれない。お金になりそうなものがどれかを決めてお金をかけていく。それでちゃんとリターンを出すようにしていくことが大事だと思う」


日本が「技術力をお金にできない」2つの理由

日本の成長に必要な“勝ち筋”の見極め。
さらに、【お金にする仕組み作り】も不可欠だという。


『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「日本は、0から1を作る技術はあまりないが、1を10や100にするのが大得意と言われてきた。また、元々あるものを改善する力はものすごく強いと世界でも評価されてきた。この日本の技術力の評価が正しいとすると、絶対お金ができてくると思う。今年日本からノーベル賞受賞者が2人も出た。それだけの研究力があるのに、これがお金になっていない。“お金にする仕組みができていなさすぎ”ではないか」


例えばコンテンツにしても、日本は漫画やアニメなど沢山ある。
高い技術もあるのに、それを「ビジネス化」するのが下手だと言われているのはなぜなのだろうか?


中空さん:
「1つは国のお金のつけ方。例えば2000億つけるとなっても、1社に2000億円だと危険だからと200社につけたりする。そうすると10億円ずつになっちゃって何ができるの?となる。かつ、出した資金をうまく活用しているかどうかのチェックが入る。紙ベースの申請をしたり、評価をしたりといろんな面倒が来るので『じゃあ要らないわ』となる。お金は小粒になってしまうし、面倒だからなかなか次に行けないと、そういうことがある」


さらに、「産官学の連携」の悪さも大きいという。


中空さん:
「大学との連携が取れなさすぎ。産官学の連携ができていないから、ノーベル賞を取れるような技術も日本の産業の中に生きてこない。もっと連携ができて、うまく回せるようなシステムができてくるとだいぶ変わると思う」


「生産性」を上げるためには?

では、日本の【生産性】を上げるためには、何が必要なのだろうか?


『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「日本の生産性が他国に比べて残念なことになっている原因の1つは、『働き方に見合う報酬制度ができていない』こと。例えば働きたくない人はそんなに頑張らないけど、でも働いた分だけはお金は欲しいとなるし、すごく働きたい人には働いてもらってそれに見合うだけのお金をもらうべきだと思うが、それができていない。そこを変えていけば生産性は上がるのではないかなと。日本だから」


さらに、デジタルやロボットの活用を進める必要もあるという。


中空さん:
「それこそ猫の配膳ロボットとかもウケたわけだし、もっといろんなとこでロボットで代替できるものがあると思う。日本が積極的に取り入れて生産性を上げたとなれば、参考になる国がいっぱい出てくる。省力化のDXロボット化も工夫の余地があるかなと思う」


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「そういう技術は、日本でうまくいったものは輸出できる。中国なんてもう高齢化まっしぐらだから、ビジネスチャンスも生まれてくるだろうし面白い」


勝ち筋を見つけて「競争力強化」

最後に、中空さんの金言<競争力の強化>


『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「日本にはいろんな問題点があるが、一番懸念しているのは競争力。産業だけに限らず大学とかもランキングが落ちていて、何もかもがだいぶ落ちてきていると感じる。そういう意味では、勝ち筋を早めに見つけてそこにみんなで資源を投下し、そこでリターンを取れるようにしていく。失われた30年って自虐ネタみたいになってるけど、一つでも二つでも勝ち筋を見つけて、成功体験をまず体現する。その後に色々な選択肢がまた増えると思うので競争力の強化が一番」


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