E START

E START トップページ > 経済 > ニュース > 大学入学の53.6%が「一般入試以外」の時代 4タイプに分かれる親のニーズと塾の価値

大学入学の53.6%が「一般入試以外」の時代 4タイプに分かれる親のニーズと塾の価値

経済
2026-07-14 07:00

いま大学に入学する人のうち、半分以上が共通テストや一般入試といった「ペーパーテストの一発勝負」ではないルートで入学していることをご存じでしょうか。親世代が思い浮かべる「偏差値を上げて一般入試で戦う」という一本道は、もう主流ですらなくなっています。受験の地図はどう変わり、塾や予備校はどう選ばれるようになったのか。その核心について、リサーチャーのcomugiが解説します。


(TBS Podcast『コムギコ:資本主義をハックしろ!!』2026年7月12日配信『AI時代「子どもの教育どうする?」学校・塾・予備校の生存競争』より)


大学に入る人の半分以上が「一発勝負」ではない

まず、衝撃的な数字から紹介します。文部科学省の2025年度の集計によると、大学に入学した人のうち、総合型選抜で入った人が19.5%、学校推薦型選抜で入った人が34.1%。合わせると53.6%になります。総合型選抜というのは、昔でいうAO入試です。学力試験の点数だけではなく、志望理由書や面接、高校時代の活動などをもとに、その人まるごとを評価する入試です。


つまり、いまや大学に入る人の半分以上が、ペーパーテストの一発勝負「ではない」ルートで入学しているのです。この変化を親の側から見ると、教育に求めるものが大きく4つのタイプに分かれてきています。これは子どもの学力レベルの分類ではありません。「教育において何をリスクと考え、何を成果と考えるか」という、価値観の分類です。


タイプ①「競争環境」を買う家庭と、「安心環境」を買う家庭

1つ目のタイプは、難関大学を目指して一直線に進む層と、附属校や中高一貫校に入って大学受験そのものを回避する層です。同じ「教育熱心な家庭」に見えますが、中身には2つの顔があります。


難関大一直線の層にとっていちばん大事なのは、実は授業のわかりやすさではなく「競争環境」です。同じレベルの生徒が集まる場所に子どもを置くこと。中高一貫校の生徒だけを対象にした東大受験専門塾の鉄緑会や、中学受験のSAPIX、早稲田アカデミーが「上位の生徒が集まるから合格実績が出る。実績が出るからまた上位の生徒が集まる」という循環をつくっています。


一方、附属校・中高一貫校で大学受験を回避する層が買っているのは「先の見えなさ」を減らすこと、いわば「安心環境」です。首都圏の中学受験者数は2026年で推定5万2050人。受験率はおよそ18%と、少子化にもかかわらず過去40年で見てもトップクラスの高い水準が続いています。文部科学省の調査では、幼稚園から高校まですべて公立の場合の学習費は15年間でおよそ614万円、すべて私立ならおよそ1969万円と3.2倍の差があります。それでも払える家庭が、早い段階で環境を確定させにいくのです。


タイプ②「自分は何者か」を言葉にする力を伸ばす

2つ目のタイプが、冒頭の数字にも出てきた、総合型・推薦型の入試を使う層です。この層にとって大事なのは、偏差値よりも「自分は何者で、なぜこの大学で学びたいのか」を言葉にする力。志望理由書、小論文、面接、そして高校時代の活動実績です。


ここに最適化された塾もすでに存在しています。早稲田塾や、総合型選抜の専門塾AOIなどが代表格で、こうした塾がやっているのは、もはや授業というよりコーチングに近いものです。生徒の経験を掘り起こして大学に伝わる物語に整理する編集者のような役割、活動や出願準備をスケジュール化するコーチのような役割、大学ごとの相性を見極める戦略家のような役割です。


タイプ③不登校35万人、まず「居場所」から組み立てる

3つ目のタイプが、不登校や通信制の学校から進路を組み立てる層です。いま、不登校の小中学生は全国で35万人を超えていて、12年連続で増え続けています。もう、めずらしい話ではありません。


この層で親が最初に求めるのは、成績ではありません。順番があるのです。まず安心できる居場所。次に生活リズムの回復。それから少しずつ学習を再開して、高校卒業の資格を取得して、最後に進路を考える。この順番に寄り添えるかどうかがサービスの価値になります。そして、この3つ目のタイプこそ、いまの教育でいちばん大きく伸びている領域です。その主役が、生徒数3万6371人と日本最大の高校になった、ネットの通信制高校N高です。


タイプ④偏差値のかわりに「ポートフォリオ」を育てる

4つ目のタイプが、英語・海外・STEAM・探究を重視する層です。STEAMというのは、科学、技術、工学、芸術、数学の頭文字で、プログラミングやものづくりを含めた理系横断の教育のことです。この層は偏差値競争から降りたというより、別の競争軸に移った人たちです。偏差値のかわりに「ポートフォリオ」、つまり英語で議論できる、アプリを作った、研究発表をしたという作品や実績の積み重ねを育てています。


海外の大学の入試は、日本の一般入試のようなペーパーテストの一発勝負ではなく、高校の成績に加えてエッセイや課外活動で評価されます。日本の総合型選抜とも相性がいい。こうした学び方を制度の側から支えるのが、国際バカロレア(IB)と呼ばれる世界共通の教育プログラムで、文部科学省が推進し、認定校は2026年3月末時点で国内265校まで増えています。


なぜ「一貫囲い込み」はうまくいかないのか

この4タイプの地図を頭に入れると、教育業界で長年の夢だった戦略がなぜうまくいかないのかが見えてきます。幼児教育から大学受験まで、同じグループのなかで1つの家庭を長くお客さんとして持ち続ける「一貫囲い込み」です。ベネッセが2007年に鉄緑会を傘下に収めたのも、この発想でした。しかし2026年、ベネッセは鉄緑会の運営会社を手放すことになりました。


なぜかというと、親は節目ごとに、その局面でいちばん強い専門店を選び直すからです。中学受験はSAPIX、東大受験は鉄緑会、総合型選抜なら専門塾。進学塾のブランドの価値は教材や講師だけでは決まらず、「周囲にどんな生徒がいるか」「合格実績がどの層で出ているか」で決まります。だから、グループ内で顧客を送り合おうとしても親はついてこないのです。興味深いことに、SAPIXと代々木ゼミナールを持つグループでも、SAPIXを卒業した生徒が大学受験ではグループ外の鉄緑会を選んでしまう、という同じジレンマが指摘されています。


塾の価値は「教える」から「設計する」へ

教育ニーズが4つのタイプに分かれたことは、塾・予備校という商売の中身そのものを変えつつあります。かつての塾の価値はシンプルに「教えること」でした。ところがいまは、無料の解説動画やAI教材が広がって「授業」そのものの価値は下がり、かわりに進路のコーチング、出願の戦略、書類の添削、日々の学習管理が求められています。塾の価値は「教える」ことから「学習を設計し、続けさせ、進路に接続する」ことへ移っているのです。


この変化についていけない塾は淘汰されはじめています。東京商工リサーチによると、2025年の学習塾の倒産は55件で3年連続の過去最多。その大半が、「地域にある普通の塾」でした。逆にいえば、4つのタイプのうち誰の、どんな不安に答えるのかがはっきりしている塾は、少子化のなかでも伸びる余地があるということです。


だとすると、親が問うべきなのは「どのルートが勝ちか」ではないのだと思います。競争のなかで伸びる子もいれば、探究で火がつく子も、安心できる場所でこそ成長していく子もいる。「この子はどんな環境でよく伸びるのか」。それが、正解のルートが消えた時代の、新しい地図の読み方なのではないでしょうか。


<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2026年7月12日配信『AI時代「子どもの教育どうする?」学校・塾・予備校の生存競争』から抜粋してまとめたものです。


「蚊の10倍」猛烈かゆみが襲う 水辺にいる“スケベ虫”に注意
「コバエが、料理に一瞬だけ止まってしまった!」その料理、衛生的に大丈夫?専門家に聞いた
「少女は捨て駒」小5で初めてパパ活…非行が低年齢化 “居場所”を求め公園をさまよう少女たち【報道特集】


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ