“海のダイヤ”とも言われる高級魚のクロマグロ。実はいま、日本の近海で“異例の豊漁”となっているんです。日本は、漁獲枠の拡大を目指して国際交渉に臨みましたが、意外な幕切れとなりました。
【写真で見る】豊漁の“海のダイヤ” なのに漁師は「沖に行って捨てる」
クロマグロ豊漁なのに...漁師は「良い迷惑」 背景に漁獲枠
深い霧に包まれた北海道・釧路沖で、漁船が狙うのは、春から夏にかけて獲れる若い鮭。
しかし、現れたのは“海のダイヤ”、100キロ級のクロマグロです。
この日に引き揚げた3つの網には、5匹ものマグロが入っていました。しかし、漁師は喜びません。
売れば1匹10万円ほどのマグロですが…
幌内漁業部 川原田良己代表
「組合で水揚げできる数量をもう達成しちゃったの。だからもう水揚げできない」
背景にあるのが、国際的な取り決めによる漁獲枠です。
この地域では、マグロ漁の解禁からわずか1日で漁獲枠の上限に達しました。そのため、定置網に入っても水揚げすることができないのです。
かつて「絶滅危惧種」に指定されていたクロマグロ。
国際的な取り決めで規制を続けた結果、最も少なかった2010年ごろから増え続け、2022年には約12倍に。
漁の現場では、現在の漁獲枠では対応しきれないほど、クロマグロが網に入るようになっているのです。
鮭を狙う漁船の網には大きな穴。マグロが暴れて破れてしまったのです。
幌内漁業部 川原田良己代表
「穴からみんな出て何も魚入ってない。商売にならない」
“豊漁”で仕入れが不安定になる可能性 影響は寿司店にも
“獲れすぎ”の影響はほかにも。
東京・築地の寿司店「築地すし鮮」では、一本買いのマグロを使った寿司や鉄火丼が人気です。
しかし、獲れるマグロの量が早い時期に偏れば、仕入れが不安定になる可能性があります。
築地すし鮮 総本店 青山杏友さん
「適切な価格・適切な間隔で入ってくるのが一番嬉しい」
漁獲枠拡大“合意ならず”なぜ?メキシコが別案を強く支持
クロマグロが増え続ける中、新たな漁獲ルールを話し合う国際会議が14日に終了。
日本は、大型魚で25%増える案を提案していました。
直前までは合意に向けて議論が進んでいましたが、最終日になってメキシコが別の案を強く支持し、合意に至りませんでした。
水産庁の担当者
「1か国の不合理な対応により、合意できない事態となったことについては強い憤りを感じている」
今回、合意に至らなかったことで、専門家は漁業者への影響を懸念します。
近畿大学 有路昌彦教授
「クロマグロというのは非常に生態系の上位にいる魚種。いっぱいいるということは他の魚が獲れないということでもありますので、思ったより状況は深刻だと思う」
決裂で今年中の合意は厳しい状況 乱獲防ぐための“新しい管理”実現は?
小川彩佳キャスター:
国際会議で決まる各国の漁獲枠ですが、日本の提案では太平洋全体の漁獲枠の上限を増やした上で、太平洋の西側と東側の漁獲枠の配分を「西側8:東側2」としていました。
一方、メキシコは東側の割合を増やす「西側7:東側3」という配分を強硬に主張。
妥協点を探りましたが、東西の配分の点で折り合えず合意は持ち越しとなってしまいました。今年中の合意は厳しい状況になったということになります。
教育経済学者 中室牧子さん:
国際会議に参加していた環境NGOの方に話を聞くと、合意に向けて協議が進んでいた中で、最終的にメキシコが一転して反対したことで、折り合えなくなってしまったとのことです。
国際的な枠組みを決める場にもかかわらず、一方的に反対して歩み寄りを見せないのは問題ではないかと指摘しています。
漁獲枠を増やすということに関心を持っている方も多いかと思いますが、今回の会議で重要だったのは、乱獲に陥ることがないようにコンピューターのシミュレーションに基づいて漁獲枠を決めるといった、“新しい管理のあり方”にアップグレードし、それに伴って漁獲枠を増やそうという点でした。
新しい管理のあり方へのアップグレードについて、国際的に合意できなかったことは非常に残念だと思います。
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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
「教育にエビデンスを」慶應大学・教授
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