E START

E START トップページ > 経済 > ニュース > スシローは43%、くら寿司は43.9%。飲食店の常識より高い原価で、回転ずしはなぜ儲かるのか

スシローは43%、くら寿司は43.9%。飲食店の常識より高い原価で、回転ずしはなぜ儲かるのか

経済
2026-08-12 10:00

回転寿司の席に着いて、レーンに寿司が流れていないことに気づいたことはないでしょうか。かっぱ寿司は299店の全店が、はま寿司も681店のうち657店が、すでに「回さない」方式に切り替わっています。それでいて回転寿司チェーンは、一般の飲食店より10ポイントも高い原価をかけながら、利益を出し続けています。安いのに、ネタにお金をかけていて、それでも成り立つ。その仕組みの核心について、リサーチャーのcomugiが解説します。


(TBS Podcast『コムギコ:資本主義をハックしろ!!』2026年8月10日配信『なぜ回転寿司は「まわる」のか?:すしチェーンをめぐる冒険 #コムギコ #89』より)


飲食店の原価率は3割。回転寿司は4割強

原価率という言葉があります。売上のうち、売上原価が占める割合のことです。ここでひとつ断っておくと、売上原価に何を含めるかは会社によって違います。材料の仕入れだけを指すこともあれば、店舗でかかる費用まで含むこともある。だから会社をまたいで並べるときは、あくまで目安として見る必要があります。そのうえで、飲食店の世界では昔から「原価は3割」が目安と言われてきました。日本政策金融公庫の2025年度の調査でも、一般の飲食店の売上原価率は35%です。


では、回転寿司はどうでしょうか。決算資料で確認できる直近の数字を並べてみます。スシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIESはグループ全体で43%。くら寿司は43.9%で、このうち単体の損益計算書にある「材料費」だけを取り出しても39.4%あります。はま寿司を抱えるゼンショーホールディングスは、牛丼などを含むグループ全体で45.7%です。


ざっくり言えば4割強。一般の飲食店より10ポイント近く高い原価をかけていることになります。


「回転寿司は原価率50%」という有名な説もあります。これは完全な都市伝説ではなく、スシローの前身の店は1975年の創業時におおむね50%をかけていたと会社の資料にあります。正確にいうなら「かつて5割、いまは4割強」です。


回転しない寿司店も含めたすし店全体の平均原価率は41.1%。寿司という食べ物自体が、そもそも原価の高いジャンルなのです。それでも大手チェーンは、ちゃんと利益を出しています。


回転寿司の多くは、もう回っていない

その謎を解く前に、冒頭の話に戻ります。


かっぱ寿司のフルオーダー方式、はま寿司のストレートレーンに加えて、スシローも2023年から、注文された商品以外をレーンで回すことをやめました。大手4チェーンのうち、いまも全店で寿司を回し続けているのは、くら寿司だけです。


やめた理由は、衛生面からだけではありません。かっぱ寿司が回転レーンを減らし始めたのは2015年ごろ、はま寿司は2016年ごろからです。狙いは廃棄を減らすことと、人手を省くこと。迷惑動画の騒動は2023年で、回転寿司が回らなくなったことを決定づけた要因だったといえるのかもしれません。


そしてこの「回すのをやめた」という判断が、高い原価率の話と、そのままつながっています。


高い原価が成り立つのは、捨てなくなったから

回転寿司には、ほかの外食にない弱点がありました。見込みで握ってレーンに流すので、誰にも取られなかった寿司はそのまま捨てることになる。生ものですから、時間が経てば売れません。


ここで威力を発揮したのが、データ化の仕組みです。くら寿司は皿カバーのコードで「この皿がいつレーンに載ったか」を追いかけ、店の混み具合から「いま何をつくるべきか」を計算する製造管理を磨いてきました。その結果、同社が公表している廃棄率は、導入前の平均12%超から2021年時点で約3%まで下がっています。つくったものの1割以上を捨てていた事業が、ほとんど捨てない事業に変わりました。


12%超から3%は、9ポイントの低下です。相対で見れば、捨てる量が4分の1近くまで減ったことになります。売上原価率と廃棄率は分母も対象範囲も違うので、この2つを差し引きして「だから原価を1割上げられる」と計算することはできません。それでも、捨てる量がここまで減れば、同じ売上でも使える原資は確実に増えます。高い原価率は、いいネタと、捨てない仕組みのセットで成り立っています。


はま寿司も、注文品を直送するストレートレーンへの切り替えに約72億円を投資して、食品の廃棄を年間1,100トン規模で減らす見込みだと発表しています。冒頭で触れた「もう回っていない」の裏側には、この計算がありました。


寿司以外のメニューが、店の性格を変えた

もうひとつの柱が、寿司ではないメニューです。回転寿司のラーメンを食べたことはあるでしょうか。くら寿司は2012年に始めて3年ほどで2,300万食を売り、かっぱ寿司も2018年からの累計で1,800万食を超えています。


ひとつ、正直にお伝えしておきます。よく「サイドメニューは原価が安いから、その利益で寿司を支えている」といわれますが、各社はメニューごとの利益を公表していません。ただ、違う業界にはわかりやすい実例があります。牛丼の吉野家は2026年に牛丼と油そばのセットを売り出し、直近の四半期決算では営業利益が前の年の2.4倍になったと報じられています。一杯で完結する牛丼に麺が一品加わるだけで、客単価も利益も動く。回転寿司で起きていることも、おそらく同じでしょう。


メニューが寿司の外へ広がったことの、いちばん大きな意味は、店の性格が変わったことだと思います。生魚がまだ苦手な小さな子どもも、ポテトとうどんがあれば席に座っていられる。茶碗蒸し、唐揚げ、パフェなどの充実したメニューによって、どんな世代の家族も取り残されない。回転寿司は、寿司の店というより、ファミリーレストランに近づいたのです。くら寿司の「ビッくらポン」も同じで、皿を5枚入れるとガチャの抽選が1回できる仕掛けが2000年から続いています。家族連れにとっての回転寿司は、食事であると同時に、ちょっとしたアトラクションになっています。


四大チェーンがもつそれぞれの強み

同じ仕組みを持っていても、各社の顔つきははっきり違います。


王道のスシロー。 会社の資料に「競合より高い売上原価率を維持し、品質と味で差別化する」という方針をはっきり書いています。高い原価は、迷った結果ではなく、選んだ結果です。


エンターテイナーのくら寿司。 ガチャの「ビッくらポン」、皿の抗菌カバー「鮮度くん」など、特許は80件。店そのものを発明と遊びのかたまりにしてきた会社です。全国116の漁港と直接つながって天然魚を仕入れ、AIを使った養殖の子会社まで持っています。


鉄壁のはま寿司。 強みは、親会社ゼンショーの巨大な裏方チームです。調達から加工、物流、店舗までをできるかぎりグループで一貫して手がけていて、自社工場は33、物流センターは26あります。すき家の牛丼も、はま寿司の寿司も、同じ工場でつくって同じトラックで運んでいるわけです。だから新しい業態を始めるときも、工場や配送網をゼロからつくる必要がありません。すでに動いている流れに、扱う商品を一種類足すだけで済む。ゼンショーだけが外のブランドを買わずに自前で育てられるのは、この土台があるからです。


古豪のかっぱ寿司。 1990年代の業界王者です。その後3社に抜かれましたが、いまも税込110円以下の商品を100種類以上そろえて、100円の看板にこだわり続けています。


国内の利益率は薄いが、答えは海外に

ここまで読むと、回転寿司は盤石のように見えるかもしれません。ところが各社の利益率は意外と薄く、直近の営業利益率は、かっぱ寿司が1%弱、くら寿司が2.5%、国内のスシローが6.8%、はま寿司が8.4%です。仕組みを磨き抜いても、国内では値上げのしにくさも薄利も消えていません。デフレの30年をかけてコストを下げてきたぶん、客の側にも「回転寿司は安いもの」という感覚が根づきました。せっかく安くつくれるようになっても、その安さが値段の相場として定着してしまい、値上げの余地がなくなる。下げた努力が、そのまま自分の首を絞めている状態です。


ところが、この仕組みを海外へ持ち出すと話が一変します。アメリカのくら寿司では、回転レーンの皿が全店平均で約3.8ドル。いまの為替だと1皿600円ほどです。日本では120円や150円の皿が、アメリカでは600円で売れて、それでも店は行列。スシローの海外事業は、店の数では国内の半分以下なのに営業利益では国内を上回り、利益率は海外が12%台、国内が6.8%です。日本で磨いた仕組みが、海外では倍の利益率で回っていることになります。


2026年秋、スシローはニューヨークのタイムズスクエアにアメリカ1号店を出す予定です。発表資料には「日本で磨いたブランドを、そのまま世界へ」とあります。2015年にも一度アメリカへ出ていますが、そのときは現地の好みに寄せた創作和食の店で、翌年に閉店しました。今度は、つくり変えずに持っていくという方針です。


回転寿司の安さは、仕入れを買いたたいて生まれたものではありません。捨てる量を減らして生まれたものです。そしてその仕組みは、いま海を渡ろうとしています。次に席に着いて、レーンに寿司が流れていなかったら、それは手を抜いているわけではありません。注文を受けてから握ることで捨てる量を減らし、浮いたぶんをネタに回している。目の前の1皿の裏側では、そういう計算が動いています。


<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本を読むビジネス系VTuberのリサーチャーであるコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2026年8月10日配信『なぜ回転寿司は「まわる」のか?:すしチェーンをめぐる冒険 #コムギコ #89』から抜粋してまとめたものです。


「蚊の10倍」猛烈かゆみが襲う 水辺にいる“スケベ虫”に注意
エアコン「1℃下げる」OR「風量を強にする」どっちが節電?「除湿」はいつ使う?賢いエアコンの使い方【ひるおび】
【冒頭全文】イオン吉田昭夫社長「死亡した方が、なぜ1時間館内にいたか我々としては認識しておりません」会見で避難状況を説明


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ