
有名な「閑(しずか)さや 岩にしみ入る 蝉の声」との俳句が読まれたように、古くから「静けさ」を愛してきた日本人。しかし令和の今、私たちの周りにはイライラの原因となる「音」があふれています。ある調査では、職場で「音ハラ(サウンドハラスメント)」を感じたことがある人は、実に98%にのぼるという結果も出ています。
街では、「上の階の人が23時過ぎにかける掃除機の音が気になる」「職場のタイピング音で、相手の気持ちが伝わってきて気になる」といった声が聞かれました。
【写真を見る】「静か」が売れる!図書館レベルの洗濯機から会話できるドライヤーまで、最新“静音アイテム”事情【THE TIME,】
さらに、音に悩まされるだけでなく、「自分がイライラの原因になりたくない」と考える人も増えています。「椅子を引く音が下の階に響いてしまうことを懸念し、うるさくしないようにしようと思っている」と話す人もいました。
こうした悩みに応えるように、いま「静音アイテム」が続々と登場し、ヒットを記録しています。操作音を約90%カットしたロジクールの「K295サイレント ワイヤレス キーボード」(3,520円)や、耳障りなノック音を66%カットして累計850万本以上を売り上げたぺんてるのボールペン「カルム」(198円)。静音仕様となったプラスの修正テープ「ホワイパークワイエット」(363円)などが異例のメガヒットを記録しています。
さらに調査すると爆発的ヒットを遂げる驚きの「静音アイテム」も登場していました。
気になる生活音No.1? 図書館レベルの静かさを実現した洗濯機
日経トレンディの総編集長・澤原昇氏は、「今、家電やさまざまな製品について“静かさが価値になる時代”がきている」と指摘します。
「テレワークの普及で、家の中で仕事をする人とリラックスする人が混在し、音のストレスが増えた。騒音を出さないことが、ヒットを出す上での必要条件になりつつある」
そうした中で、気になる生活音として街で最も多く名前が挙がったのが「洗濯機」です。「土日の朝5時から回されると休日は厳しい」「タイマーをかけて寝ていても開始音で起きてしまう」など、洗濯機の音に対するイライラの声が多く聞かれました。
そんな悩みを解決するアイテムとして、2026年10月、東芝から発売されたのが最新のドラム式洗濯乾燥機「ZABOON(ザブーン)」(税抜 38万8,000円)です。5年ぶりのフルモデルチェンジでこだわったのは、ずばり「音」。商品企画部の秋田真吾部長は、「乾燥の音に特にこだわり、夜に運転していてもぐっすり眠れるような洗濯機を目指した」と話します。
従来モデル(約5年前)と乾燥時の音を比較すると、その差は歴然です。従来モデルが約49デシベルと、一般的なエアコンの室外機と同程度の音量なのに対し、最新モデルは約40デシベル。これはまさに「図書館の中にいるのと同じ」レベルです。
この静音化の秘密は「風の通り道」にあります。風は物にぶつかると空気の渦が発生し、音が鳴る原因になります。これまでの通り道は直線的で風がぶつかる場所が多くありましたが、最新モデルではなだらかなカーブ構造へと一新。空気の流れをスムーズにすることで、音の発生を劇的に抑えることに成功しました。発売直後から好評で、年間10万台の販売を見込んでいるそうです。
会話ができるドライヤーに “音が消えた” 電子レンジも
続いて気になる生活音として多く挙がったのが「ドライヤー」です。「聞きたくなくても耳に入ってくる」「ドライヤー中は家族に注意されても聞こえず、最後には『うるさい!』と大きい声で言われる」など、その“爆音”にストレスを感じている人は少なくありません。
この悩みを解消してくれるのが、パナソニックのヘアドライヤー「イオニティ」です。一般的なドライヤーの運転音が約70デシベルなのに対し、「イオニティ」は強風モードでも約55デシベル。実際に使用してみると、ドライヤーをかけながらでも普通に会話ができるほどです。価格も5,000円前後と手頃なことから、ヒット商品となっています。
一方、家族が寝静まったあとの“気まずい”生活音にも救世主が登場しています。深夜に電子レンジを使う際の「チン!」という出来上がりの音。「夜中に家族を起こしてしまった」という経験を語る人もいました。
そんな場面で活躍するのが、ツインバードの電子レンジ(税込2万4,800円)です。
この製品の最大の特徴は、出来上がりの合図を音ではなく「ライトの点滅」で知らせてくれる点にあります。出来上がりの音が鳴らないため、夜遅くに帰宅した時や、在宅ワーク中、赤ちゃんのお昼寝中など、周囲への音が気になる場面でも気兼ねなく使えます。
オフィスからスポーツまで、広がる“静音”の世界
静音化の波は、他の分野にも広がっています。個人情報の取り扱いに注意が必要な今、自宅や小規模オフィスで欠かせないシュレッダーにも静音モデルが登場。アイリスオーヤマが手掛ける超静音シュレッダー「SHIZCUT(シズカット)」(税込 1万5,000円)は、想定の1.2倍も売れている人気商品です。
従来品の運転音が約60~70デシベルと、間近でセミが鳴くほどの騒音なのに比べ、「シズカット」は約55デシベル。これはデパートの店内と同じレベルです。SNSでも「シュレッダーなのに音が気にならない」「この製品名はダテじゃない」などの声が上がっています。
さらに、スポーツの世界にも静音ヒットが生まれています。家の中での練習用に発売されたのが、リーディングエッジスポーツの静音バスケットボール「家練球 -極-」(税込6,980円)です。
通常のボールでドリブルをすると、音は70デシベル以上とストレスを感じるレベルになりますが、この静音バスケットボールはウレタンフォーム素材を使用することで、ドリブル音や振動を半分程度に軽減しています。SNS上では「とにかく静かで感動した」「重さもあるからちゃんと練習になる」といった投稿が多数寄せられ、シリーズ累計で2万個に迫るヒットを記録しています。
「静かさ」が新たな価値となり、ヒット商品を生み出す重要な要素となっている令和の時代。今後もこのトレンドから目が離せません。
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