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第53回全日本実業団ハーフマラソンが2月9日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで、2025海外ハーフマラソン派遣選考競技会を兼ねて行われた。
【写真を見る】【全日本実業団ハーフマラソン】女子10kmで山本有真が快勝 ! 世界陸上挑戦と駅伝V奪回につながる初の10kmレース出場
女子10kmの部で、パリ五輪5000m代表の山本有真(24、積水化学)が32分33秒で優勝。2位に30秒差を付ける圧勝だった。5000mを主戦場にしている山本が、初めて10kmに出場した経緯や狙いは何だったのか。そして9月の東京2025世界陸上や、11月のクイーンズ駅伝にどうつなげていこうとしているのか。
後半の5kmで他を圧倒する走り
山本の力が明らかに、1つ上だった。「入りの1kmの通過が3分30秒(10km換算35分00秒)でした。そこはないなと思って、ペースを上げました」5km通過は16分49秒。川口桃佳(26、ユニクロ)だけが山本についていたが、山本は後半の5kmで川口に30秒差をつけた。
山本陣営は“ラストスパートでちょっと勝てばいい”というレースをしたくなかった。今回の低温では31分台のハイペースは難しい。後半の5kmで他を圧倒する走りをするレースプランを立てた。レース後の山本は「入りが遅すぎた」ことと、「追い込み方がわからなかった」ことの2つを反省点として挙げた。
「32分半が目標だったので想定通りの記録にはなりましたが、最初の入りが遅くなったことがよくありません。1回下がって前に出るような、余計な動きをしてしまいました」それでも後半を15分44秒まで上げられた。走り終わった後も「もう少し追い込んでみてもよかった」と感じられる余力があったという。
練習が積めていたことが、その走りができた理由だという。ケガが多い選手だが「1月から継続して練習できている」ことと、1月の合宿でスピードより距離を踏んでいて、10kmの距離も「抵抗なく」走ることができた。「この大会には(ピークを)合わせていなくて、4月からの5000mに向けて一度レースに出ておくか、くらいの気持ちでした。どんな狙いかといえば、新年スタート(笑)のレースですね」
代表入りや、選手選考に関わるポイントが付く試合ではない。しかし「またいつか、10kmをしっかり走りたいです」という感想を持つことができた。
駅伝でのチーム力アップにつながる山本の10km出場
クイーンズ駅伝では入社後2年続けて、2区(4.2km)で区間賞を獲得している。2区の距離は短いが前半で好位置を占めることで、レース全体の流れに影響する区間だ。
昨年11月のクイーンズ駅伝では、積水化学は3区で3位に後退してフィニッシュでは2位。目標とした2連覇を達成できなかった。1区の田浦英理歌(25)と2区の山本が連続区間賞を取ったが、想定より差を広げられなかった。山本は「他のチームならオリンピック選手の自分が、(10km以上の)3区や5区を走らなければいけません。新谷(仁美。36)さん、佐藤(早也伽。30)さんがいるから、という雰囲気がチームにあった」と反省した。
今回の10kmレース出場は、駅伝の10km区間出場へのステップでもあったのか。「今年、来年の10km区間ではありませんよ。新谷さんと佐藤さんはマラソンも頑張っていて、私なんかは到底及びません。何年後かにお二人が引退されるときには私が、という気持ちです」
だがチームの駅伝での戦い方、という見方をしたとき、山本が10kmの距離にも対応できることはプラスになる。積水化学の野口英盛監督は次のよう説明した。「24年の駅伝はメンバーを固定して臨んで、良い面もありましたが、直前に体調が悪かった選手も現れて、柔軟に考えてもよかったかな、という側面もありました。固定しないで、最後の1週間で判断する方法です。山本の10km出場は駅伝のためではなく、試合があった方が気持ちを入れて練習ができるからです。世界陸上に出たい、世界陸上でパリ五輪以上に戦いたい、という考えで行っているトレーニングのプラスになる。しかし後半を1人でペースアップしてあの走りなら、スピードに乗ったときにはハイペースで押していくことができます。世界陸上が終わって2か月後の駅伝では、10km区間の候補に入ってきそうです」
積水化学は駅伝よりも個人で結果を出すことを優先している。山本もまずは世界陸上に向けて頑張り、そのときに10kmの走力がどのレベルになっていて、チーム内でどんな位置にいるかで駅伝の区間が決まってくる。いずれにしても、チームとしての戦い方の幅が広がることは間違いない。
故障が減った理由は「お尻を使う走り」
山本は故障が多かった選手。スピードランナーによくあることだが、キックが強く、ひざ下を痛めることが多かった。走る練習を控えてケガを治し、短期間で試合にピークを合わせる。その能力が高かったため、代表入りのかかる試合でも結果を残すことができた。
山本は1月から練習が継続できていると話したが、野口監督は「(昨年8月の)パリ五輪前に貧血になりましたが、その前の5、6月あたりから痛みが多少出ても、練習のストップなく積み重ねができています」と言う。
練習が継続できるようになった理由を問われた山本は、「たぶん、フォームが改善されたから」と感じている。「以前はお尻を使う走りができていませんでした。最近は(殿部や大腿裏など)大きな筋肉を使って走る感覚をつかむことができています」野口監督も「(動きづくりの)ドリルやウェイトトレーニングなどでフィジカル面が向上して、徐々にひざやひざ下への負荷が減ってきている」と分析する。
25年シーズンの山本は大きく記録を伸ばす可能性がある。自己記録は15分16秒71だが、日本人6人目の14分台も期待できそうだ。山本は「15分20秒切りから15分10秒を目安に走って行く」と、やや控えめな目標設定をしている。世界陸上代表は14分50秒00の標準記録を無理して狙うのでなく、もう1つの出場資格である世界ランキングのポイントを上げていくことでもチャレンジできる。「15分10秒のポイント重ねていくことが目安になる」と野口監督。「15分10秒を切ったら、その上の記録もイメージできてきます」
3月の試合出場は未定だが、「4月からは自己新の走りを続けていく」と山本。「あと2か月でどれだけ自己記録を出す状態に持って行けるかが課題です」東京2025世界陸上出場への幸先の良いスタートを、今回の10kmで切ったことが重要だった。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
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