
兵庫県政の問題を追及する県議らに、大量の脅迫メールが送られています。攻撃は県職員にも向かっていて、顔写真や住所までネットでさらされる深刻な事態になっています。実態を取材しました。
百条委員会の奥谷元委員長にも脅迫メール 1日で1700件超
混乱が続く兵庫県で、また新たな問題が浮上した。
ジャーナリストの菅野完氏に大量の脅迫メールが届いた。殺害を予告する内容で1分に1回、メールの件数は8000件を超える。
斎藤知事のパワハラなどを調査した百条委員会の奥谷元委員長も、同様の被害を受けている。脅迫メールの数は1日で1700件を超えた。自宅兼事務所の住所まで記されていた。
さらに脅迫メールは、元百条委員の丸尾県議にも。
丸尾牧 県議
「『お前もとっとと自殺しろよゴミ野郎』ということで書かれてまして。まさしく言論弾圧ですね。脅し・あるいは誹謗中傷にあたるようなことについては、しっかり考えていただいて、やめていただきたいなと思いますね」
「実名も自宅の住所も晒された」攻撃の対象は県職員にまで広がる
2025年2月、兵庫県庁の前には自殺した竹内英明元県議と元県民局長へ、追悼の文字が掲げられていた。ろうそくが灯され、訪れた人が2人を偲んだ。
同じ日、斎藤県政を問う集会が開かれた。特定されると誹謗中傷のおそれがあるとして、参加者の顔を写さないよう、撮影には配慮が求められた。
取材に応じた参加者はこのように話した。
集会に参加した人
「たくさんの命が犠牲になられたこともそうだし、百条委員会の方たちにいろんな嫌がらせをしていたり、分断も嫌だし、なんせ早く落ち着いて欲しい」
集会に参加した人
「最初は怒りだったんですけど、竹内議員が亡くなって、絶対にこれは許してはいけないと思いました」
この集会から1か月あまりがたった今、攻撃の対象は県職員にまで広がっている。
県の幹部職員だったOBが取材に応じた。このOBは斎藤県政を批判し、改善の必要性を訴えていた。ネット上の攻撃は誹謗中傷にとどまらなかった。
県職員OB
「実名を挙げられてますし、自宅の住所も晒されました。我々OBの人間は、いち民間人といいますか、あくまでも私人なんで。そういう人たちについて、いちいち実名をあげつらってありもしないことを、たくさん尾ひれはひれつけてネット上にさらすというのは、完全に人権侵害」
顔写真や個人名が晒される行為は現役職員にも及んでいる。
県職員OB
「いま県庁の中で起きていることが、自分の中では全く納得がいかない状態なので。本当に現職でいる職員のことだけです、心配なのは」
ネット上の書き込みは、なるべく目にしないようにしているというが…
県職員OB
「全くありもしないことを勝手に捏造されて、気分的に鬱々しますね。ネットの世界で、死に追いやられるということはあるじゃないですか。自分だけはそこには行かないようにはしたいなと思ってますけど」
悪質な書き込みには法的手段にでる準備を進めていると話した。問題はネット上にとどまらない。
「僕の名誉棄損罪やってるんですよ!」ライブ配信中に現れた立花氏…「言葉として表現できない恐ろしさ」
大阪市内の事務所からYouTube配信を続ける、元アナウンサーの子守康範氏。
子守康範 氏
「その攻撃力、爆破力たるや、普通の人の精神を破壊し、場合によっては命を落とすというところまで確実に行くだろうと」
兵庫県の公益通報の問題を発信し続けてきた。その中で触れたのが、立花孝志氏の選挙についての過去の発言だ。
立花孝志 氏(2022年 YouTube対談で)
「言い方はっきり言うけど、バカな人達をどうやってうまく利用するか」「この国の国民って、政治の問題、ウクライナの戦争の問題とかよりも、芸能人の下ネタのが好きなのよ」「そこに首突っ込むしかないのよ。この人たちに票をもらわなきゃいけない」
子守氏は、この発言を紹介し…
子守康範 氏
「ああ、なるほどね、と。だから下ネタ好きなんやと。下ネタ好きな人に、下ネタの撒き餌をしてはんのやわと。そこはもう、なんかすごくつながってきますよね」
この日の配信に、立花氏は…
立花孝志 氏(立花氏のYouTubeライブより)
「こいつ、ほんまとんでもないね、こいつ。でたらめばっか言って。みんなこいつの、ここ行ってさ、コメントいっぱい書いてきてよ」
それだけでは済まなかった。配信が終わりにさしかかった頃――
立花氏「ここで聞いてていい?」
子守氏「聞いていただくのは結構ですが」
立花氏「話しようよ。人の名前使ってやってるんやから。嫌なん?」
子守氏「嫌です」
立花氏「嫌なん?じゃここでやるわ、この人はこんな感じや。警察呼ぶで」
このとき、立花氏もライブ配信をしていた。
立花孝志 氏(立花氏のYouTubeライブより)
「ちょっと110番してもらっていいですか?この人に嘘つかれてるんで、こうやって逃げるんですよ。僕の名誉棄損罪やってるんですよ今!」
「迷惑なん、ここの人やからね!覚えといて、おばちゃん。確かに大きな声、迷惑やな。そやけど、迷惑なことしてんの、てんこもりスタジオの子守とかいう」
兵庫県知事選に出ていた立花氏。1時間以上、“嘘をばらまくのは公職選挙法違反“と主張し続けた。
子守康範 氏
「その段階で、ネット上ではいわゆる炎上しているわけですね。立花さんと話をしろと、出てこいと、もうびっくりするほど長い書き込みが続くわけです。外では騒いでいる、警察も来ている、スマホで見たら、私を批判するコメントがずっと続くわけです。
元アナウンサーとして非常に忸怩たる部分ですけれども、言葉として表現できない恐ろしさなんですよ。頭というよりも、お腹の辺りがゾワゾワするような攻撃が、間断なく続くっていうことですね」
翌日、立花氏は街頭演説と言って、百条委の奥谷元委員長の自宅兼事務所に向かった。
子守康範 氏
「要はフラグを立てられる、旗を立てられたらもうおしまいなんですね、ある意味。だから、みんなおとなしくするんだと思うんです。それはもうよくわかります。旗立てられたら困りますもん。経済的損失があることもわかるわけだし、家族が分断されることもわかっているので、だからみんな、カメのように首をすくめるしかないんですよ」
――そうやって人を黙らせているっていう?
子守康範 氏
「そこです。一般の人がそこに乗っかってくることで簡単に人は死にますよ、と。そんな世の中でいいんですか?っていう話を私はしたいですし、し続けているつもりです」
“10万円の懸賞金”立花氏の呼びかけで自宅に2人の男性が…恐怖語る「明確に嫌がらせのため」
立花氏を長年取材し、批判する記事を書いている、選挙ウォッチャーちだい氏。記事をめぐって立花氏側から様々な裁判を起こされてきた。
2020年、ちだい氏がブログに書いた10本で1320円の有料記事。
選挙ウォッチャーちだい氏
「(記事は)10本保証だったのですが、そのうちの1回に、ネタ回と言いますか、楽しませるために書いた記事がありまして」
この1本の記事について、立花氏は購読料をだまし取られたとしてYouTubeでこう呼びかけた。
立花孝志氏
「選挙ウォッチャーを名乗っている『ちだい』というのは、もう明らかに逃亡を企ててます。おそらく、自宅にいるとは思うんですが、ちょっと彼を見つけたらカメラを構えて、立花さんが言っている詐欺罪についてどう思いますかと、ちょっと映像を撮ってほしい。この映像を撮っていただいた方には、少なくとも10万円。現金で振り込みさせていただきます」
その日のうちに、ちだい氏の自宅付近に2人の男性が現れた。自家用車に乗っていたちだい氏を見つけ、2人は立花氏と電話をつなぎながらスマホで撮影し続けた。
ちだい氏
「何の用ですか」
ちだい氏の自宅に来た男性
「立花さんからお話聞いたが、詐欺の容疑で?」
ちだい氏
「詐欺じゃないです」
ちだい氏の自宅に来た男性
「詐欺じゃない?」
ちだい氏
「詐欺じゃないですよ」
ちだい氏の自宅に来た男性
「いま立花さんと電話つながってますけど、よければ、電話していただけないですか」
ちだい氏
「あっじゃあ警察をいま呼びましたので。警察と一緒に話しましょう」
電話口の立花孝志氏
「じゃあ、警察来るまで待ちましょうか」
ちだい氏
「僕の家まで、10万円の懸賞金で来たのですか」
電話口の立花孝志氏
「そうですって。はい」
ちだい氏はこのときの恐怖をこう話す。
選挙ウォッチャーちだい氏
「これは明確に、嫌がらせのためにやっているわけですから、それはやはり恐怖ですし、対処のしようが難しい。私の家族や、あるいは近所に住む方。そういった方も、やはり怖い思いをするんです。
これは奥谷さんとか、他の県議の方もそうですが、家をさらして、ここの家に攻撃するんですよというメッセージ、あるいは住所も平気でさらしていきます。これも厄介なことですね」
スラップ訴訟、目的は「勝つか負けるかより、相手の言論を萎縮させること」
さらに、立花氏は支援者を募り、この1本の記事について裁判を起こすことを呼びかけた。
購読料としてすでに支払った1320円。重要な情報が見られなかった精神的苦痛として30万円など、あわせて33万1452円を請求。控訴審の判決では、このうち購読料132円と弁護士費用13円の請求が認められた。
立花氏は、ちだい氏側との裁判でこの1件について勝訴だと主張。
立花孝志氏
「数百円ですけど、(ちだい氏が)負けてはいるんです。それを全部勝ったと言うのだったら、逆に、そういうことで言うと、請求額よりも(判決で額が)小さくとなった時にそれを、まあそういう意味で言ったら、確かに勝ち負けというのはどう定義するかなんでしょうけどね」
これに対しちだい氏は、精神的苦痛だとした30万円についての賠償は、一切認められず、購読料の返還にしても、ごく一部だったことから実質的な勝訴だと主張した。
ちだい氏と記事を掲載した出版社などと、立花氏やその関係者などの間ではきょうまでに少なくとも20の判決があり、この1件をのぞき全てでちだい氏側が勝訴してきた。
だが、こうした裁判には大きな負担がかかるという。
選挙ウォッチャーちだい氏
「この裁判も精神攻撃なんです。実際には、スラップ訴訟という形で経済的ということを(立花氏は)言っていますけれども、経済が困るとやはり精神的にくると。
この裁判の勝ち負けというのはどうでもよくて、訴えて、経済的に疲弊させる、あるいはたくさんこの裁判に対応しなきゃいけないので、(自分の仕事で)原稿を書いたりとか、そういうリソースを奪って、それで困らせる、諦めさせる。その批判の口を封じる。じゃあ立花さんの追及はやめようか、ということになってしまう」
「スラップ訴訟」は30年以上前にアメリカで生まれた言葉だと、弁護士の紀藤氏は解説する。
紀藤正樹 弁護士
「Strategic Lawsuit Against Public Participationの頭文字。公的参加に対抗する戦略的な訴訟という意味合い。目的は勝つか負けるかより、相手の言論を萎縮させることが目的」
近年はスラップの定義が広がり、訴訟だけでなく、兵庫県職員やジャーナリストらに向けられているような攻撃も含まれるという。
こうしたスラップが放置されていることが問題だと話す。
紀藤正樹 弁護士
「公的な表現に対する恫喝や、脅迫誹謗中傷をやってはいけないんだと。そもそも国民としてのコンセンサスができていない。国連やEUでも、各国に(スラップ)法制を整備しろ、と勧告や、指導原則が出ている。(民主主義の)大元になっている市民の活動が萎縮する事態は、メディアにとっても大問題。表現の自由を守る活動を、立場を超えて一致しないといけない」
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