
能登半島を襲った豪雨からまもなく1年。「人間が消えた」。甚大な被害を受けた地域では、人口の流出が深刻となっています。そんな中、復興に向けた新たな取り組みも。奮闘するのは大切な姉を亡くした男性です。喜入キャスターが現地で取材しました。
「人間消えた」 奥能登豪雨から1年…被災地の今
2024年9月、地震の爪痕が残る能登半島を襲った豪雨。死者は災害関連死を含めて19人、約1900棟の住宅が被災しました。
「うちらの集落はもう破壊的で終わりやわ」
「もう笑うしかないんですよ。なぜ能登にこんな1年も経たず」
甚大な被害を受けた、石川県輪島市町野町。川沿いはえぐられ、道路も大きく崩れました。
あれから1年――
喜入友浩キャスター
「この辺りはだいぶ整備されましたね。道路も補強されていますし、川の護岸を見てみますと、綺麗に整えられています。ただ、あちらを見てください。崩れた家がそのままになっています」
復旧は進んでいますが、至るところに残る被害の跡。町を離れる人も増えました。
輪島市町野町に住む 堀井哲雄さん
「今年特にがらんとして、『人間、消えたな』って感じですよ。消え方がすごい。前でも少なかったけど、たまにしか人間見ないぐらいまで減っとる」
町野町の人口は、震災前より2割ほど減り、残る住民も約4割が仮設住宅で暮らしています。
「1回見たところだったのに…」豪雨で大切な姉を亡くした男性の後悔
地震で自宅が全壊した中山真さん(29)。
中山真さん
「残念ながら置くところが無くて、こちらに置くことになっちゃいましたね。やむを得ず」
3歳上の姉・美紀さんを、2024年の豪雨で亡くしました。
喜入友浩キャスター
「真さんにとっては、どんなお姉さまですか」
中山真さん
「家族の中心的な存在でした。太陽のように笑顔が絶えない姉です。めっちゃ仲良かったんです。お互いの休みが合えば、必ずというくらい映画館によく観に行っていた」
1年ぶりに、美紀さんが亡くなった現場へ向かうといいます。
中山真さん
「豪雨から1年ということで、そろそろ行かない訳にはいかないかなと」
喜入友浩キャスター
「この1年間行こうって思ったことは、ありますか」
中山真さん
「何度もありましたけど、思い出したくない気持ちがあったんでしょうね。行かなかったです、正しくは」
命日を前に、姉の最後と向き合うことにしたそうです。
中山真さん
「ここだ、ここですね。あの時の赤いシールが残ってる。車が見つかりましたっていう印のシールですね」
2024年の豪雨の後、この場所で発見された美紀さんの車。美紀さんは、職場から帰宅途中に脱輪し、外に出た際に、足を滑らせて流される様子がドライブレコーダーに映っていました。
行方がわからなくなった美紀さんを、真さんは必死に探しました。
中山真さん
「ほぼほぼ毎日ここの現場に来て、ずっとここを歩いていました。どこにいるかなって」
1か月後、約500m下流で美紀さんの遺体が見つかりました。
中山真さん
「あそこ見たのになって、1回見たところだったんですよ。めっちゃ悔しかったです、助けてあげられなかったって。心臓が握りつぶされるような痛さでした。
あふれてきました、いろんな気持ちが。逃げたい気持ちと、向き合わなければいけない気持ちが闘っている感じなんです、私の心の中で」
町に届けるラジオが復興の力に
災害情報などを広く発信しようと、町野町の住民が2025年7月に立ち上げたラジオ局「まちのラジオ」。真さんはパーソナリティーの1人です。参加するきっかけとなったのが、美紀さんでした。
中山真さん
「町民に情報をいち早く届けられるようにしたい。自分の命は自分で守るしかないんだと。また災害が起きてしまったときに、その意識を皆さんが持てるようにお伝えできたら」
真さんの声は町の人々にしっかりと届いています。
中山真さん
「(姉に)空の上でも聴いてもらいたいですよね。『今日の放送どうだった』って聞きたいです」
――なんて言われると思います?
「なんて言われるんだろうな、『まぁいいんじゃない』って言われるんじゃないかな。『まぁいいんじゃない』って」
13日に行われた町野町の花火大会。この日は町の住民だけでなく、町を離れた人や災害を機に町を知った人も集まりました。
喜入友浩キャスター
「花火はいかがでしたか」
女性
「感動しました」
「もやもやっとした気持ちがすっ飛んで、すっきりした。頑張れって後押しされているようで」
喜入友浩キャスター
「まもなく雨から1年ですけれども、1年振り返るといかがですか」
男性
「波瀾万丈やったね。復興はこれからやね」
豪雨からまもなく1年。街の人は、顔を上げて前に進んでいます。
「復旧の優先順位が“復興の鍵”の一つになる」
上村彩子キャスター:
「つらいこともあったけれど、前を向こう」と町の皆さんの心を照らすような花火になったんじゃないですか。
喜入友浩キャスター:
そうですね。印象的だったのは、町を離れた人がこの花火大会のために戻ってきたということでした。
確かに人口は減っています。それでもラジオ局を立ち上げた「まちのラジオ局」代表の山下祐介さんは、「交流人口・関係人口が広がるよう、魅力ある町作りの一つとしてラジオがきっかけになれば」と話されています。
ラジオは全国で、インターネットで聞くことができます。
上村キャスター:
私も7月に奥能登に取材に行きましたが、壊れた建物がそのまま残る一方で、整備されているところもあって、“被災した爪痕”と“復興への歩み”と同時に映し出されてるなと思ったんですが、9月の今の現状はどうでしたか。
喜入キャスター:
正直、大きく変わってないかもしれません。今も道路は片側交互通行であったり、土砂崩れがそのままの箇所も多くあります。
今回、工事関係者の方にもお話を伺いました。新潟から住み込みで能登で復旧工事にあたっている山田興業合同会社の山田治栄代表は、「能登には宿泊施設が少なくて、さらにコンビニも24時間営業ではありません。なので他の地域から作業員を多く受け入れようにも厳しいというのが現状」と話していました。
ちなみに、山田代表が住んでいるところは台所がないという状況なんだそうです。
そしてもう一つ、能登には大きな道路があまり多くありません。なので、工事車両の渋滞というのも起こっています。「たくさん受け入れたいが、能登のキャパシティの限界もある」というジレンマを抱えています。
上村キャスター:
「ゆくゆくは観光客もたくさん来て欲しい」と思っていると思うのですが、まずは住民のインフラ整備が第一優先ですね。
喜入キャスター:
どこから手をつけるのか、その優先順位が復興の鍵の一つになると今回、感じました。
住民に話を聞くと、「なんであの橋から直すんだ。他に通れる橋があるじゃないか」「なんでここはまだなのか、後回しなのか」など、優先順位に関しての不満の声が多く聞かれました。なので、行政は住民の声をしっかり聞いて、どこから手をつけるのかを考えてほしいです。
しかし、力には限界がありますので、いかに効率よく町を戻していくか、そこが鍵になってくると感じました。
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