
母親に連れられ、東京都内のマッサージ店でタイ国籍の12歳の少女が違法に働かされていた事件。タイでの現地取材を通じて見えてきたのは、「多額の借金」と「出稼ぎの実態」でした。
東南アジアの中心に位置する“微笑みの国”、タイ。
「ああ、本当に悲しいです。気を失いそうで、ご飯も喉を通りません」
女性が心配しているのは、自身の孫で12歳の少女のこと。およそ4500キロ離れた日本で保護されているのです。
今月4日、警視庁の家宅捜索が入ったのは、東京・文京区のマッサージ店。店を経営する細野正之容疑者(51)がタイ国籍の12歳の少女を違法に働かせたとして逮捕されました。
少女は今年6月、母親と共に日本に入国。母親は少女を店に紹介し、「また迎えに来る」と言い残し姿を消しました。少女は性的サービスをさせられていました。
なぜ少女は日本で置き去りにされたのか…。
記者
「タイ北部にあるこちらの村で、12歳の少女は、祖父母と妹と4人で暮らしていたということです」
私たちがタイで話を聞いたのは、少女の祖父母と親戚です。
少女の祖母
「ニュースを見て、うちの子のことだとわかりました」
少女の母親には、12歳の少女のほかにタイに住む子どもと、日本で少女の父親とは別の男性との間に生まれた男の子がいると言います。母親は、この男の子をタイに連れ帰るために12歳の少女と一緒に日本に行ったと説明したそうです。
少女の祖母
「『12歳の娘を連れて行って、男の子の世話をさせる』。『仕事に行く』とは言いませんでした」
少女の父親は10年ほど前に亡くなり、母親は当初バンコクの建設現場で働き、家計を一人で支えていたと言います。
少女の親戚
「子ども達、おじいさん、おばあさん、みんな彼女に頼っています。夫が亡くなったので一人で頑張らなければならないのです」
その後、母親は日本など海外に出稼ぎに行くように。その費用として日本円で50万円ほどの借金があったと言います。
少女の祖母
「少女の母親には借金がたくさんある。10万バーツ(日本円で約50万円)以上でしょう。母親は『子どもも育てなくてはいけないし、大きくなってきているから頑張って稼がなきゃ』と。土地を持っていないので買いたいんです。いま住んでいるところは借りているのよ」
少女の親戚
「出稼ぎに行くために色々な書類を集めなければならないし、人に依頼して高い料金を払いました。お金がないのに」
地元の人は、この村で海外に出稼ぎに行くことは珍しくないと言います。
村人
「この村では多くの人が海外のマッサージ店で働く。ロシアとか韓国に行く人が多い」
ただ、祖父母と親戚は、母親が少女に性的な仕事をさせていたとは信じられないと口をそろえます。
少女の祖父
「母親は働きに行っていたが、自分の子どもにそんな仕事をさせていないと思います」
今年9月、少女が東京出入国在留管理局に駆け込んだことで発覚した今回の事件。
「タイに帰りたい」
入管に行く前、少女は日本から祖母に連絡してきたそうです。
少女の祖母
「(孫が)『入管に行きたい』と言った。『どうして?あと一週間だけ母親を待った方がいい』と言うと、彼女は『家に帰りたい』と言いました。『タイに帰りたい。勉強したい』と」
「また迎えに来る」、少女にそう言い残した母親は台湾にいました。
台湾メディアによりますと、観光ビザで入国し、桃園市内で売春行為を行っていたとして身柄を拘束されました。
タイ警察は、きょうにも日本に向けて捜査員を派遣し、今後の母親の移送について協議する予定だということです。
警視庁は、今回の事件が「人身取引の一端」とみて、ブローカーがいる可能性も視野に調べを進めています。
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