
解散命令が出た旧統一教会と深いつながりを持つ宗教法人「天地正教」について。この団体は、旧統一教会の清算手続きの後に残った財産の移転先に指定されている。独自取材から浮かび上がる、その実態とは。
【写真を見る】「事実上の吸収合併」旧統一教会が“財産移転先”に指定した「天地正教」の実態【報道特集】
旧統一教会 解散命令後の信者たち
今月12日。集まっていたのは、旧統一教会を信仰する3組の夫婦で、いずれも合同結婚式で結ばれたという。
毎週日曜日、オンライン形式の礼拝を行っている。モニター越しに地域の教会長が呼びかける。
教会長
「真の父母さまに敬拝をお捧げいたします」
旧統一教会・信者 小笠原裕さん(63)
「今はこのようなかたちで。ここは私の家ですけど、家で集まるとか。もともと信者同士の“交流”をものすごく大事にしていて。先週、野外礼拝があって、お花見礼拝みたいな。50~60人は集まった。子どもたちも集まってゲームをやったりとか」
先月4日、東京高裁は高額献金などの問題を「きわめて悪質」として旧統一教会に「解散」を命じた。
宗教法人ではなくなり、全国におよそ280か所あった教団施設は、裁判所が選んだ清算人の管理下に。信者たちは教会に立ち入ることができなくなった。
旧統一教会・信者 小笠原さん(63)
「解散命令は憲法的に見てもおかしいし、僕らの信教の自由は保障されると言うが、実際のところ、こういう困った状態になっている。現在、特別抗告ということで、最高裁で争っているところなので、そこでは(解散命令が)解除となることを強く願っています」
信仰心が揺らぐことはないと話す信者たち。先祖への感謝の言葉や願いをしたためた“奉献書”と呼ばれる札を、文鮮明・韓鶴子夫妻の写真の前に捧げていく。
その札の傍らには、現金数万円の入った封筒も置かれている。
旧統一教会・信者 小笠原さん(63)
「十一条献金ですね。十一条というのは、収入の10分の1をお捧げしましょうということで」
解散命令のあと、教団の銀行口座は清算人の手に渡り、信者たちは「献金の送り先」を失った。
そのため、この地域では、かつての会計担当者らが献金を一旦預かり、現金のまま保管する形を取っているという。
礼拝の中で、教会長は「十一条献金」の重要性を信者たちに説く。
教会長
「家庭連合という組織がなくなったから、十一条(献金)はもうしなくていいんじゃないか...そういったものではないわけですね。お金を通してサタンは私たちの心に侵入してきます。神様は、象徴的に10分の1を捧げることで、残りの10分の9のすべてのお金も天の所有として守ってくださるんだと」
礼拝が終わると、信者たちの昼食会が始まった。各家庭から一品ずつ持ち寄り、食卓を囲む。
記者
「今日がたまたまだったのかもしれないが、教会長からの言葉に“お金の話”が多かった」
小笠原さんの妻
「今日はね...『あちゃー』みたいな...」
旧統一教会・信者 小笠原さん(63)
「『あちゃー』じゃないよ。ちゃんと話してもらってよかった」
「決定文を読んでも『信者が献金しちゃいけない』とは、どこにも書いていないですよね。僕らが通常の信仰生活において献金をするのは、宗教行為なので。やめる理由はないですね」
高額献金による被害が、解散命令の理由となったことを指摘すると…
旧統一教会・信者 小笠原さん(63)
「どこまで献金するかはおそらく『自己責任』だと思う。これだけ献金してくださいというかたちで強制された覚えもないし」
これまで、信者たちから多額の献金を集めてきた旧統一教会。
東京高裁の決定文によると、教団の収入の97パーセント以上を献金が占め、去年3月の時点で、総資産額は1000億円を上回っていた。
清算人によって、これらの財産を処分する手続きが進められる中、ある宗教法人の存在が注目されている。
旧統一教会の“財産の移転先”に指定された「天地正教」とは?
アナウンス
「第五回・浄火祈願祭を挙行いたします」
北海道の山中で行われていた「浄火祈願祭」とよばれる儀式。帯広市に拠点を置く宗教法人「天地正教」が、毎年のように開催してきたものだ。
この天地正教をめぐっては、去年3月、東京地裁が出した解散命令の決定文で、ある事実が明らかになった。
2009年、旧統一教会が、清算手続きの後に残る財産の移転先として指定していたのだ。
天地正教は仏教系の新興宗教で、先祖供養のために「弥勒信仰が必要」などと説いている。
儀式が行われていた場所を訪れると...
記者
「“聖火の郷”と書かれた大きな看板が掲げられています。そのすぐ下に目をやると、世界平和統一家庭連合と記されています」
登記を確認すると、土地の所有権は天地正教から旧統一教会へと移っている。
去年10月の取材で、帯広の天地正教本部を訪ねた際は一切応答がなく、周辺の住民は「人の出入りがほとんど無い」と口を揃えた。
ホームページを通じて質問状を送ると、旧統一教会とは別の宗教法人で信者がおよそ4000人いるとする回答が届いたが、実態はどのようなものなのか。
天地正教 二代目教主「乗っ取られるかたちに…“不本意”」
旧統一教会から財産の移転先として指定されている天地正教。かつて、その「代表」だったという男性が初めてカメラ取材に応じた。
男性はもともと旧統一教会の信者で地方の教会を回り教義を説く立場にあったが、突然、天地正教の「代表」に指名されたと話す。
天地正教・元代表
「“とにかく集まれ”ということで東京に行って。そしたらいきなり、私を指名されたんですよ。何人か偉い幹部がいて。なんで私がやらないといけないのかと思ったんだけど、やれって言われたんだから、それはね」
男性は、既に旧統一教会を脱会しているが、天地正教が文化庁に提出した過去の役員名簿を確認すると、たしかに、1999年からの2年間「代表役員」として記載されている。
男性は代表に指名された直後から、天地正教の信者を旧統一教会に移籍させる業務を担ったという。
天地正教・元代表
「合併を推進すると。私は、全国、頭を下げて歩きましたからね。弥勒様とか祭壇をもう家に持って帰りなさいと。家でまつりたい人はまつってもいいけど、どこかに破棄してもいいですよと。みんな、旧統一教会になるんだからと。名簿上は34万人(旧統一教会側に)行ったことになっていますから。一応、建て前は(天地正教を)いったん退会して、旧統一教会に入会するということですね」
男性は「あくまで名簿上」としながらも、天地正教からおよそ34万人の信者を移したと話した。
これは当時、天地正教の信者に配られていた冊子。旧統一教会との深まる関係について「出会いから和合へ」と説明されている。
実際に、天地正教から旧統一教会に移ったという元信者は…
天地正教・元信者(80代)
「旧統一教会の方へ『合流』というか、『吸収』というか、一緒になってしまった。全部ですわ。天地正教一式全部、旧統一教会に移行したというかたち。『みなさん入りますか?』ということで、そのまま全員、そっくりそのまま。天地正教は仏教系だったけど、旧統一教会はキリスト教系だったので、ちょっと『ズレ』はありましたね」
元信者の自宅は天地正教の「道場」として使われ、真っ白な弥勒菩薩像を据えた祭壇もあったが...
天地正教・元信者(80代)
「“そんなもん石ころだから埋めてしまえ”とかってある人に言われた。(Q.それは旧統一教会の人から?)そうそう。全部砕いてしまって、これも捨ててしまえって言われた。もったいないから置いてある」
祭壇は取り壊され、代わりに文鮮明夫妻の写真が飾られた。
道場には旧統一教会の信者が次々とやってくるようになり、多額の献金を求められるようになったという。
天地正教・元信者(80代)
「家にあるだけ出せっていうことなんですよ、韓国・清平で館を作るとかね、お金のいる話」
そもそも、仏教系の新興宗教だった天地正教。旧統一教会との接点は、初代教主・川瀬カヨ氏の時代に遡る。
これは1993年に撮影された写真。川瀬カヨ氏と文鮮明氏が写っている。
川瀬氏の死後、二代目教主には娘の新谷静江氏が就任したが、信者向けの会報誌の中で、驚きの宣言をする。
二代目教主・新谷静江氏(当時の会報誌)
「弥勒様は文鮮明師である」
弥勒菩薩が実は、文鮮明氏だったというのだ。しかし、この宣言から2年後の1998年ごろに新谷氏は天地正教を去った。
新谷氏は既に亡くなっているが、生前、旧統一教会と天地正教の関係を調査していた弁護士と面会した際、こう話していたという。
渡辺博弁護士
「本来の天地正教の信者がいたにもかかわわらず、そこに、その数倍・数十倍の信者を送り込まれて乗っ取られるかたちになって、そこは“不本意だった”と」
新谷氏は、母親で初代教主の川瀬カヨ氏から勧められる形で文鮮明氏の教えに触れ、当初は「素晴らしい救い主だと信じていた」などと話していたという。
しかし、弁護士が裁判に向けてまとめた陳述書には、強まっていく旧統一教会側からの献金要求に反発する思いが綴られていた。
二代目教主・新谷静江氏(弁護士がまとめた陳述書)
「全国の道場を店舗、信者は顧客として見ていることが分かり、天地正教と信者を守る為、私は文鮮明氏に何度か手紙を出し、話を聞いてもらうことを切望しましたが、その機会は一度も与えられませんでした。結果的に私は、教主という立場を解任させられました」
新谷氏の陳述書によると、その後、天地正教の「代表」には旧統一教会から送り込まれた人物が、就くようになったという。
活動史には「吸収合併」と表記
私たちは今回、新谷氏の親族と接触することができた。
音声のみを条件に取材に応じ、新谷氏に対する旧統一教会からの献金要求の実態を証言した。
新谷静江氏の親族
「文鮮明氏“直”ですよ、文鮮明氏から直に(新谷氏に)電話が来るようになったから」
記者
「日本語でしゃべる?」
新谷静江氏の親族
「結構しゃべります。上手なものですよ。アメリカに渡って事業を大きくしようと思っているから、もうなんせ金・金・金なんだ、もう明けても暮れても。新聞社もやっていたんだよ。“人件費を払えないから金をくれ”。“インク代が払えないから金をくれ”。“紙代がないから金をくれ”。こうやってきたよ、要求が。もうひどい時になったら、毎日のようだね」
記者
「静江さんはどんな反応をしていた?」
新谷静江氏の親族
「簡単に言えば『また来たか』という感じだね」
新谷氏の陳述書にも「文鮮明氏はアメリカからでも直接、自宅に電話をかけてきた」とする記述があった。
親族によると、新谷氏は文鮮明氏から電話がくるたび全国の道場に、信者から献金を集めるようにと、渋々、指示を出していたという。
新谷静江氏の親族
「韓国の口座に入れるわけさ、直接。“ここの口座に振り込みなさい”って番号まで全部教えてもらっていたから。文鮮明氏の言うことは“絶対”だからさ」
旧統一教会側は、天地正教との関係をどう捉えていたのか。
2007年以降に、神奈川県の一部地域で信者に配られていた活動史(横浜西教会年表)には…
活動史
「1999年 天地正教、統一教会と和合宣言(3月)事実上、統一教会に吸収合併となる」
明確に「吸収合併」との表現が使われていたのだ。
この活動史を入手したのは、旧統一教会の献金被害をめぐる集団訴訟で、原告の代理人を務めていた郷路征記弁護士だ。
原告の中には、天地正教から移った元信者も含まれ、裁判では「天地正教時代の献金被害」について、旧統一教会に賠償責任があるかが争点の一つとなった。
札幌地裁は2012年の判決で、郷路弁護士が入手した活動史などを根拠に、旧統一教会と天地正教の間に「指揮命令関係があった」と認定し、旧統一教会に賠償を命じた。
郷路征記弁護士
「天地正教に支払ったとされる金銭について、それは旧統一教会が賠償する責任があると、判決では認められている。『旧統一教会に吸収合併された』っていうのは正しいだろう」
裁判所から「指揮命令関係があった」と認定された団体への財産移転に、問題はないのか?
旧統一教会は去年10月の取材に対し...
旧統一教会の回答
「天地正教を指揮命令する関係にあったという事実はありません。当法人が残余財産の帰属先として天地正教を指定したことは事実ですが、宗教法人法に則って、正当な手続きを行ったに過ぎません」
また、札幌地裁の判決については、「不適切な証拠に基づいて下された誤った判決」とした。
宗教法人を所管する文化庁は両教団について「法的にはあくまで別の団体」としている。
そのうえで仮に、天地正教に財産を移転する決議が今も有効であるならば、清算完了後に残る財産は天地正教に移ることになる、とした。
一方、天地正教の認識はどうなのか?今年2月に新たに就任した、現在の代表を直撃した。
天地正教・現代表 旧統一教会は「友好団体」
記者
「天地正教と旧統一教会の関係は?」
今年2月に就任 天地正教・現代表
「友好団体です」
記者
「たとえば旧統一教会の側に取り込まれたり、吸収されたり、そういうことはない?」
天地正教・現代表
「ないですね。交流はありますよ。交流はあるけど、別法人ですからね」
記者
「信者は何人いる?」
天地正教・現代表
「今は1800人。去年は4000人で報告していたんですけど、今年は1800人で報告していますから」
記者
「なんでそんなに減ったんですか、いきなり」
天地正教・現代表
「4000人の名簿を改めて調べたら、もうすでに亡くなっている人も入っていたので。それで削ったんです」
記者
「その1800人の方たちは、本当に信者なんですか?」
天地正教・現代表
「ふふふ、信者ですよ。ちゃんと」
現代表は旧統一教会の信者も兼ねているという。
天地正教の信仰対象は何かと尋ねると...
現代表
「弥勒菩薩像。これが、最初の段階。それから、文鮮明先生のお写真。そして、文鮮明先生そのもの。この3段階で、いずれも“弥勒様”として信仰している」
旧統一教会から財産の移転先に指定されていることについては...
現代表
「報道されているから聞きましたよ。それぐらいですよ。別に向こう(旧統一教会)の方から何か、それで連絡があった訳ではないし」
記者
「その決定は今も生きている?」
現代表
「いや、知りません。だってうちが決めたことじゃないですから」
旧統一教会の関係者によると、天地正教を財産の移転先とした決議は、今も生き続けているという。
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