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中国「DeepSeek」開発の低コスト生成AIが米に衝撃…AI開発の“ゲームチェンジャー”になるか その実力は?【Bizスクエア】

経済
2025-02-05 06:30

アメリカハイテク株の大幅下落をもたらした中国の新興企業・ディープシークの格安生成AIは、今後のAI開発のゲームチェンジャーとなるのか。


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「ディープシーク」生成AI アメリカに衝撃…低価格で高性能?

トランプ大統領:
ある中国企業が、より高速なAIをはるかに低コストで開発した。ディープシークの発表は我々への警鐘だ。勝つための競争により集中する必要がある。


1月27日、トランプ大統領が会見で述べ、注目されたのが、中国の新興企業「ディープシーク」が開発した格安の生成AI。ディープシークは2023年にAI研究者で起業家のリョウ・ブンホウ氏が中国・杭州に設立した。「ディープシーク」の格安の生成AIは、先行するアメリカの企業の生成AIに匹敵する性能を示す一方で、高価な先端半導体を使わず、開発コストは10分の1以下だという。


中国の新興企業が、格安でアメリカの企業の生成AIに匹敵する性能のものを開発したというニュースは、アメリカの株価にも大きな影響を与えた。1月27日、AIなどに使われる最先端の半導体を製造するエヌビディアの株価は17%安に、失われた時価総額はおよそ5900億ドル=日本円でおよそ92兆円に達した。


投資家のアンドリーセン氏はSNSで人工衛星の打ち上げで、アメリカがソ連に先行を許した1957年の「スプートニク・ショック」になぞらえた。


こうした中、ディープシークがアメリカの企業「オープンAI」の生成AI・チャットGPTの学習データを利用規約に違反する形で「活用」した疑いがあるとしてオープンAIは提携先のマイクロソフトと共同で調査を始めた。


トランプ政権で商務長官に指名されているラトニック氏は中国への先端半導体の輸出規制を強化する方針を示している。


商務長官候補 ハワード・ラトニック氏:
彼らは我々のものを盗み、知的財産を奪った。我々は(AI開発の)先頭でなければならない。


ディープシークはAI開発におけるアメリカの優位を突き崩すゲームチェンジャーとなるのか。


「ディープシーク」の実力は? AI開発…アメリカ主導に変化?

AIを導入した業務効率化を提案する「ライフプロンプト」CEOの遠藤聡志氏にアメリカの企業「オープンAI」が開発したチャットGPTとの性能差がどれほどあるのか、テストを依頼した。


ディープシークの最新モデル「R1」が挑戦するのはオープンAIの最新モデル・チャットGPT「o1」。与えられる課題は2024年2月に実施された東京大学文科の数学の入試問題。証明問題のため、適した回答が得られるよう双方同じ指示文を打ち込みスタート。開始直後、ディープシークに変化が。


ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
思考過程が中国語で出るのもおもしろいところ。


テスト開始から2分過ぎ、チャットGPTでは日本語で思考プロセスの出力が始まった。一方、ディープシークでは…


ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
今、日本語で回答が生成されているところ。


テスト開始から3分45秒。ほぼ同時に終了…。


ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
(予備校の)河合塾の答えと照らし合わせた結果、答えだけ見たら正しい答えが出ているように見える。


アメリカ製の最新モデルに性能面でほぼ互角であることを証明したディープシーク。遠藤氏はこれが誰でも安い価格で自由に使えるオープンソースモデルとして発表されたことに大きな意味があるという。


ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
(これまで)オープンAIやGoogleといった企業にノウハウが集約されて、新しいモデルを開発しようと思っても(費用が)数百億という単位でかかってくる。だがオープンモデルのディープシークがGPTo1と同等のレベルを出したというところで、アメリカの企業がリードしていたところが、もう1回スタートラインを仕切り直して、よーいドンで始められることができるようなったのが、大きなポイント。ここから日本企業にもチャンスが巡ってくると考えている。それはノウハウがかなりオープンになったということと、安価で「学習」が回せるようになった。


「ディープシーク」はゲームチェンジャーに?アメリカに衝撃…低価格で高性能?

遠藤聡志氏は東大大学院に通いながら起業した26歳。


――「ディープシーク・ショック」について、どう思うか。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
最初に思ったのは、開発費が下がったとか、ライセンスがオープンになったというところが大きな影響を与えるのではと感じた。大きな衝撃だ。先ほどのテストでも(チャットGPTと比べても)かなり早く解けていると思う。


一つ前のモデルのチャットGPTとディープシークを比べてみる。まず開発費。オープンAI(チャットGPT)は7800万ドル。対してディープシークは557万ドル。その差は14倍。使われている半導体は、オープンAIが最先端なものに対してディープシークは最先端よりは性能が劣る半導体となっている。


もう一つ、その性能と料金を比較。遠藤氏は「コンピュータAIの性能を判断する要素はいくつもある。(先ほどの数学の試験以外でも)いろんなテストがあってその中の数値としてはあまり遜色がない結果」という。


――安さが注目されている。さきほどのテストもお金を払っているのか?

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
WEBのアプリケーションから使用している。オープンAIは利用料がかかるが、ディープシークは無料でやった。


――そんなに違うというのは、開発コストが安いからか。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
はい。低コストというのはAPI(外部のサービスとの連携)で使用する、つまりコンピュータから自動で外部サービスを呼び出しにいく場合にかかる費用。ディープシークのコストが下がっているのは、もちろん元々安価に作られたこともあるが、ディープシークは広告費のような形で身を削りながら、安価な価格を実現しているのではないか。


「ディープシーク」の開発コスト。その安さのワケは?

今までAIを作るためには、とにかく膨大なデータを学習させなければいけない。お金もかかる、電気もかかる、データセンターもいる。しかも、そのためにエヌビディアの半導体がいるので、ソフトバンクの孫正義氏が、お金をかけてアメリカに投資するという話が出た。


――チャットGPTの開発。あらゆることをまず学習させるのか。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
ネットにあるような、あらゆる情報を取ってきて、AIに入れ込み、学習させていくプロセスを取っている。


――世の中にあるあらゆる情報、飛び交っている会話など、全部学習させると、時間とお金がとてもかかる。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
その通りだ。処理のところも大変。計算の面でも、非常に大きなコストがかかるものとなる。


――ディープシークが、安いコストで学習することができた理由は?


ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
一番の肝は、学習手法を改めたというか「報酬の設計」を変えたところだ。これまでは教科書などを与えられて、自主学習に近かったが、最初本を読んでどこから勉強したらいいかわからないような状態だった。ディープシークは、最初に家庭教師をつけるような形で、学習が始めやすくなるような工夫がとられており、安価に早く学習が進むことがあった。「教師あり学習」という手法だ。


――ディープシークは、最初から過去の問題集と答えみたいなものを勉強させる感じか。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
はい。どちらも同じような要素は含まれているが、ディープシークの方が、より最初のところでアシストをしていくようなものになる。


――誰でも考えそうに思うが、今までそういうことを考えた人がなかったのか。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
これまで、いい計算機があって潤沢な資金とリソースで学習させていたのが、ディープシークの場合は半導体が制限されたことによって、工夫を何かしなければというところで、考え出された工夫のうちの一つだった。


――しかし「家庭教師役」を雇うにもお金かかるのではないか。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
「家庭教師役」を作るところにも工夫がされており、トータルで見ると安くなりやすいという方向に転じている。このような先生を作るのは、結構難しかったが、これに対して工夫がされている。


――求めていることだけに、答えを言ってくれるような人であればいいと。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
「ちゃんと丸付けをしてくれるような先生」というのをうまく生み出した。


――もう一つ取られた方法が「蒸留」。これはどういう意味か。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
「既に存在する先輩」のような生成AIで作った質問と回答のペアを、新しいモデルに転用していくことによって、最初は何を学習したらいいかわからないところから、これも「先生」をつけることに近いが、必要なものだけを学習させること。


――導き出された結果だけを覚えれば良いという事か。そうすると「我々の成果を盗んだ」ということにならないのか?

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
はい。なので「先輩」となる生成AIのライセンスが非常に重要。無料でオープンソースと言われる「誰でも使っていいよ」というAIを使えば、これは自由にやっていいが、これが「使ってはいけない」という規約になっているものを使うと問題になる。


――だから今、アメリカから盗用疑惑が持たれているのか。


ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
チャットGPTはこれを禁ずるようなライセンスになっている。


アメリカに与えた影響と、今後のAI覇権争いの行方は…!?

――オープンソースコードが出てきたことは、いろんなビジネスに使いやすくなったのか。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
はい。これまでノウハウが特定の企業に秘匿されていたものが、我々にも伝わって、自由に使えるようなものになる。登山でいうと5合目や8合目に車で行けるようなものになっている。我々にとっては追い風になる。


――資金がないようなアメリカ以外の起業家たちにもAIビジネスを始めたり、工夫したり変えていくチャンスが生まれた?

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
はい。元々オープンソースのものはいくつか出ていたが、今回のディープシークはチャットGPTに匹敵するような精度が出たというところが大きなポイントだ。


――中国の企業で、西側諸国は警戒する動きが広まってきている。安全性はどうなのか。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
(中国当局に情報が伝わることは)ウェブのアプリを使っている場合はある。


――利用する場合、新しいビジネスやアプリケーション開発の情報が中国に行ってしまうのでは。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
「ならない」というのが答えになる。ウェブサービスとソースコードを分けて考えるのがポイント。ディープシークがソースコードを使ってサービスを提供しているのがアプリになる。そのアプリを使うと情報は向こうに行ってしまうが、ソースコードを利用して独自に開発したAIをオフラインで使う分には、プライバシーは全く問題ない。


――オープンソースコードにしたものが世界のスタンダードになっていく可能性もあり、中国側はそれを狙っているのか。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
その可能性もある。コモディティ化していくような流れになる。


――AIを巡る覇権争いは、大変な局面に入ってきたのか。

ライフプロンプト 遠藤聡志CEO:
クローズドなAIを提供してるところにとっては難しい状況になる。


(BS-TBS『Bizスクエア』 2月1日放送より)


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