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今年2025年の春闘は大手と中小の格差是正が最大のポイントとなっている。中小企業の賃上げ「6%以上」は実現できるのか。労働組合の中央組織・連合の芳野会長に聞いた。
【写真を見る】中小企業の賃上げ「6%以上」は実現するのか 今年の春闘について連合の芳野会長に聞く【Bizスクエア】
連合・芳野友子会長に聞く 「春闘」中小企業の賃上げは
「団結してガンバロー」。連合は2月6日、中央総決起集会を開催。参加したおよそ1100人と2025年の春闘の開始を宣言した。
連合 芳野友子会長:
これまで社会を覆ってきた「給料なんて上がらない」という後ろ向きの常識が、本当に変わる。いまはその瀬戸際。みんなでつくろう。賃上げが当たり前の社会。
労働組合員たちも強気だ。JEC連合(エネルギー)は「できればベア単独で6%位は勝ち取りたい」、自動車総連は「要求だけでもある程度の金額にしていこうという気概がないと今後も気持ち的に賃上げ要求しづらくなってしまうのではないか」。JAM(ものづくり産業労働組合)は「1万5000円位は上げてもらいたい。みんな賃上げ頑張ろう」。
――一昨年3%台、去年5.1%と高い賃上げが2年続いて、今年2025年の春闘をどう位置づけているのか。
連合 芳野友子会長:
去年2024年春季生活闘争は、33年ぶりの高水準の結果が出たということで、やはりこれは連合加盟組合の労使の真摯な交渉の結果なので、まずは敬意を表したい。ただ生活実感として良くなったと感じる人は非常に少ないと思う。現実的に実質賃金も上がっていないので、そういう意味では賃金が動き始めたということもあるので、この流れを今年も引き続きということが非常に大きいかと思う。
連合は今年2025年の春闘について、基本給を引き上げるベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ目標を全体で5%以上、中小企業で6%以上としている。
連合 芳野友子会長:
今年2025年はさらに結果にこだわっていきたいと思っているので、いいところは5%以上の目標を組んで、それにこだわった協議交渉をして欲しい。2023はターニングポイントの年、2024はステージ転換の年ということで、この流れを2025にも続けていく。「巡航軌道に乗せていく」という言い方を今年はしている。賃金も物価も経済も安定的に上昇していく社会にしていきたい。
――3年賃上げが続けば、賃上げが当たり前の世の中になったと言える?
連合 芳野友子会長:
賃金が上がることが、当たり前の社会を作っていきたいというのも今回の方針の中に掲げている。
――ホップステップジャンプのジャンプの年?
連合 芳野友子会長:
賃上げは1年2年で終わるものではなくて、毎年毎年継続して上げていくということが必要。今年の交渉は来年にも再来年にも続けていけるように協議交渉して欲しい。
中小企業の現場では どう受け止めているのか
芳野会長が目指す賃上げの継続。中小企業の現場では、どう受け止めているのか。
丸善 中澤康二専務取締役:
こちらが弊社で一番大きい大型プレス、400tの油圧プレスになる。
主にトラックの部品を製造するこちらの会社は、今年の賃上げについてまだ答えを出していない。
丸善 中澤憲一代表取締役:
原材料や世の中のいろんなものが値上がりしていて、そのスピードにまだ価格転嫁がついていけてない。そういうのを見極めて考えていかないと経営にも支障をきたすし、中小企業としては重荷になっている。
円安により鉄やアルミなどの原材料価格が高騰。日銀の利上げによる金利負担も重くのしかかっている。
丸善 中澤憲一代表取締役:
壁を乗り越えればまた壁が来るような感じがずっと続いている。メーカーに値上げを気持ちよく受けてもらわないと、なかなか我々中小企業だけではやっていけない。そこを理解してもらった上で価格交渉をしていきたい。
連合が掲げる6%以上の賃上げ目標については…
丸善 中澤憲一代表取締役:
3%くらいで考えていたのが、倍くらいの提示額がきたのでそこまで応えられるか正直自信がない。
中小企業 賃上げ6%以上の実現は…
――大手が5%以上、中小が6%以上というのは中小の方により高い賃上げをしてくれと?
連合 芳野友子会長:
大手と中小の格差を是正したいという思いが込められているので、1万8000円以上、6%以上の目標を掲げていて、額の方を前面に出している。
――中小企業賃上げ分の価格転嫁。大手とどう交渉すればよいか?
連合 芳野友子会長:
連合の方にも、原材料費の価格高騰までは取引先から認めてもらえるが、労務費まではという声は確かに来ている。地方、中小小規模事業者がどれだけ賃上げできるかが、結果的に経済を好循環に回していくので適切な価格転嫁、労務費を含めた価格転嫁を認めてもらうということが大事。まず中小小規模事業所においては、正々堂々ときちっと大手に要求して欲しい。
――皆さん勇気をだして言いましょうということか。
連合 芳野友子会長:
みんなで言わないと駄目だと思う。そして大手側もやはり価格交渉のテーブルに
きちっと乗っていくことが大事。
――経団連もサプライチェーン全体での価格転嫁が必要だといっていて、労務費も含めた価格転嫁は賛成している。ただ「6%の賃上げと言われてもうち(大手)は5%ですよ」と「おたく(中小)6%も上げるんですか」という顔をされるとやはり転嫁できないのでは。
連合 芳野友子会長:
連合が経団連や経営者団体の皆さんと話をするときには適切な労務費の転嫁について理解してもらっているので、粘り強く交渉していくことが大事だと思う。やはり中小小規模事業者を見るとなかなか転嫁できていない数字が出ているので、連合としては下請法の改正に向けて引き続き力を入れていくことになる。
2月5日に発表された毎月勤労統計調査によると、名目賃金にあたる働く人1人当たりの現金給与総額は、去年、33年ぶりの高い伸びとなった。一方、去年の物価の変動を反映させた実質賃金は、前の年を0.2%下回り3年連続でマイナスとなった。物価の上昇に、賃上げが追いついていない状況が続いている。
――歴史的な賃上げを実現しながら、実質賃金がプラスにならない。それは物価が高過ぎるのではないかと思うが、そこへの懸念は?
連合 芳野友子会長:
物価が安定せず上がり続けているし、特に生活にとても大事な食品とか、そういったものが上がってきているので物価を落ち着かせることは、政治の責任だと思うので、いち早く取り組んで欲しいと思う。
――こうして毎年賃上げが実現できるのではという対談ができるのは非常にラッキーな時代で、連合の会長で毎年賃上げの話ができた会長なんてこれまでいない。
連合 芳野友子会長:
それは加盟組合の皆さんの真摯な労使交渉の結果の積み上げなので、どれだけ賃上げに向けた機運の醸成ができるかどうかが私達の役割。政労使の意見交換会ができたり、地方版政労使会議が開催できるようになったり、いま下請法も改正に向けて具体的な案はまだ出てきていないが、そういう動きが出てきたのは非常にラッキーな部分はあるかと思う。
――今年も息切れせずに機運を盛り上げていく。
連合 芳野友子会長:
盛り上げていきます。頑張ります。(もう賃上げ疲れとは)言わせません。
中小企業への賃上げ実現は? カギは労務費など価格転嫁
賃上げ率のグラフを改めてみると、2023年に3%台が出て、24年5.1%が出て、今年は3年目。
――3年目の重要性をどうみるか。
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
2年で終わってしまうと続かないと思われてしまうので、今後継続するためには、今年は本当に大事だと思う。「瀬戸際」と芳野会長が言っていたが、本当にそうだと思う。それで高い賃金の上昇を見てると投資家層は、外国人も日本人もみんな安心感が出てくると思う。
そうした中で今年2025は中小企業に大企業以上の賃上げをしてほしいということ。ただ、中小企業の方々はどう思ってるのだろうか。
大同生命保険の調査によると、2024年に賃上げを実施した全国の中小企業およそ3000社のうち53%は今年も賃上げを予定しているということがわかった。一方で、2024年に賃上げを実施しなかった約2000社のうち61%が2年連続で実施を見送ると答えている。
賃上げしたところが多いように思うが、これだけ母数が大きくなってくると、かなり賃上げが去年できなかったというところもある。しかもその中の人たちは今年もできないと言っている。
――つまり中小の中で差が開いてきてるのではないか。
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
当然ですが、賃上げは政府が決めてできるものでもなく、企業が収益を上げないといけないので、何年も連続で賃上げできないとなってくると、収益が上がっていないし、それから人も採れなくなってくるので、ますます差がつくことでもあると思う。
賃上げを実施する予定という企業に今年の賃上げ率予定を聞くと、6%以上賃上げできそうだというところは本当に少ししかいない。
――価格転嫁をしていくためのカギはどこにあるのか。
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
地道な努力しかない。価格転嫁をすべきだとみんな思うが、値段が上がるとやっぱり嫌。昨日まで100円だったのが120円、150円になってくると、またこれも上がってしまったと思う。価格転嫁を認めることは、私達もものの値段が上がっていくことに慣れないといけないということだと思う。消費者価格に転嫁されない価格の上昇はあり得ない。誰かだけが得することは誰かが損をしているはず。そこの構造を考えるのであれば、価格が上がっていくことを私達も慣れなければいけない。しかし慣れると言っても給料も上がってないのに価格が上がるのだけは殺生なことなので、賃金をきちんと上げてもらう。なので5%~6%の賃金上昇はやってもらわないといけないと思う。
――賃金の上昇が、ずっと続くんだという確証みたいなものを持てるようになればいい
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部副会長 中空麻奈氏:
そうならなければおかしい。アメリカでラーメン3000円、日本は1000円で食べられるいうことを「日本はよろしい国」となるのか、それとも3000円でも食べていけるぐらいのお金がもらえる国になるか。私達は今、後者に脱皮しようとしてるので、だいぶ慣れてかなければならない。
(BS-TBS『Bizスクエア』 2月8日放送より)
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