
ビジネスの国際化が進む中、英語でのミーティングに苦戦している日本人ビジネスパーソンは少なくない。しかし、“ビジネス英語のプロ”で社会言語学者の瀧野みゆき氏によれば、英語ミーティングを乗り切るためのスキルは十分に身につけられるという。瀧野氏が提唱する「ELF(English as a Lingua Franca)」の考え方や、効果的な英語学習法について解説する。
【画像でみる】約200人の課題分析から導き出された英語会議“乗り切り術”
ELFとは?ネイティブよりノンネイティブが多い世界
ELFとは「English as a Lingua Franca(共通語としての英語)」の略称だ。瀧野氏によれば、「共通語としての英語は、違う国の人たちをつないでいく言葉、違う母語を持つ人たちをつなぐ言葉」であり、ネイティブスピーカーが中心ではない多様性のある言語環境を指す。
実際、世界の英語話者の中でノンネイティブスピーカーの数がネイティブスピーカーを上回っている。このような状況下では、完璧な英語を目指すよりも、互いの違いを理解し合いながらコミュニケーションを取ることが重要となる。
瀧野氏は「英語の上手下手っていうのは、別にその人の努力とか才能をそのまま反映してるわけじゃない。だからそれを違いと考えたら謝る必要ないじゃないですか?」と語る。英語力に自信がない場合でも、「I'm sorry that my English is poor」といった謝罪は不要だ。代わりに、ミーティング後に「Thanks for your understanding」と伝えることで、相手への感謝の気持ちを表現できる。
英語ミーティングの6つの課題と対策
瀧野氏は、200人近いビジネスパーソンへのヒアリングを基に、英語ミーティングにおける課題を6つに分類する。
1. リスニングについていけない
2. 英語で意見を要領よく言えない
3. 反論の仕方がわからない
4. 説得ができない
5. 発言のタイミングがつかめない
6. 相手の「人となり」が読み取れない
これらの課題に対して、瀧野氏は以下のような対策を提案している:
▼事前に会議資料を読み込む
「アジェンダ」と呼ばれる会議の内容をまとめた資料をしっかり読み込んでおく。できれば、アジェンダを自分で作る。
▼話す内容をあらかじめ準備しておく
会議で必ず話すとわかっていることは、事前に整理して準備しておく。また話す流れを考えておけば、意見を要領よく言うこともできる。
▼キーワードを手元に用意する
マーケティングのミーティングであれば、関連する英単語を手元に置いておくことで、リスニングがしやすくなる。
▼スモールトークを活用する
相手の国や興味に関する話題を事前に用意しておくことで、人柄を理解しやすくなる。また、相手の英語の特徴を把握することもできる。
▼わからなかったら必ず聞き直す
たとえば13(サーティーン)や30(サーティー)など数字を間違うと大きな問題になるので、重要なことは聞き直す、書いてもらうなどして確認する。また、話すスピードが速すぎて理解が追いつかない場合は、ゆっくり話しましょうと呼びかけると議論がスムーズに進む。
▼議事録を作成する
ミーティング後にできるだけ早く議事録を作成し、内容を確認することで理解を深められる。
効果的な英語学習法:音に浸る、自分のニーズを知る
瀧野氏は、効果的な英語学習法として以下の4つのポイントを挙げている:
1. 音に浸る
2. 自分のニーズを把握する
3. 相手を考える
4. テクノロジーを活用する
特に「音に浸る」ことについて、瀧野氏は以下のように説明する:
「リスニングと一緒に発音もやった方がいいと思います。発音が嫌で英語を話したくない人って結構いるんですよね。別にネイティブの発音を目指すことは全く必要ないんですが、自分としてなんとなく自信を持って話せる、あるいは声に出すことに慣れる、あやふやな感じがしないっていうためにも、リスニングをしながら自分の発音も鍛えていくのは大事だと思います」
具体的な練習方法として、瀧野氏は「聞き音読」を推奨している。これは、音声を聴きながら同時に音読する方法だ。発音を鍛えると英語の音の特性も理解できるため、リスニングの力も伸びていくという。その練習の材料として、瀧野氏はビジネスパーソンの演説や名言を集めたYouTubeチャンネル「English Speeches」や「Quotes」の動画を活用することを勧める。
さらに、リスニングのコツについて瀧野氏は「何を言っているのか100%分かるということはありえない」としたうえで「まずは大筋をとらえる」ことが重要だと強調。その力をつけるためには、上記したような5分程度の短い動画を聞いて大筋をとらえる訓練が有効だという。それを最初は音だけ、次は字幕付き、つぎはまた字幕なしといった形で繰り返していくとリスニング力が伸びていくとしている。
自分のニーズに合わせた学習も重要だ。勉強の時間が限られているとき、大切なのは自分に何が必要かを考えてスピーキングや語彙を学ぶことで、特に専門用語の習得は、ビジネスにおいて信頼性を高めるために欠かせない。
また、瀧野氏はAIを活用した英語学習の可能性にも言及している。AIは個人の弱点を分析し、適切なアドバイスを提供することができる。例えば、自分が間違えやすい文法事項を効率的に復習することが可能だ。
瀧野氏は、英語学習に対する心構えとして以下のようにアドバイスする:
「英語をそんなに難しく考えなくてもいいと思います。英語を自分の目的のために使うのであれば、例えば観光地のお土産屋では非常に限られた英語で商売されてる方がたくさんいますよね。でも外国人の身になってみれば、全然わからない場所で、単純なシンプルな英語を言ってくれるというのはどれほどありがたいかと。それもELFなんですね」
英語を実際に使いながら学んでいくことが上達への近道だと瀧野氏は強調する。「プールサイドでいつまでも準備体操してても、全然上手くならない。やはり実際に泳いでみなくちゃいけない」というエンジニアの言葉を引用し、英語も同様に実践することの重要性を説く。
ビジネスにおける英語の重要性が増す中、完璧を目指すのではなく、自分のニーズに合わせた効果的な学習法を見つけ、積極的に英語を使っていくことが求められている。英語ミーティングに対する苦手意識を克服し、グローバルなビジネスシーンで活躍する力を身につけていくことが大切だ。
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