きょう(11日)、追加放出される備蓄米の申請が始まりました。「精米」や「物流」などの課題から申請をためらう大手小売りも出てくるなど、ここに来て様々な課題が浮かび上がっています。
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「社名は言えないが…」小泉氏の発言に注目
井上貴博キャスター:
農林水産省が11日に受付を開始したのが、随意契約の備蓄米の購入申請です。2020年産と2021年産、合計20万トン分です。
小泉農水大臣は11日に「受付開始から1時間ほどで約30社から応募があると聞いている。ニーズがあるんだな」と話していました。
申請を完了した企業のうち、私達が確認が取れたのがイオングループとセブンイレブンでした。イオングループが5000トン、セブンイレブンが50トン申請しています。
一方で申請を見送ったのが、イトーヨーカドー、ドン・キホーテ、アイリスオーヤマ、楽天、オーケーなどです。今までに仕入れた備蓄米がまだはけていないこと、精米施設や物流の余裕がないことなどが理由だということです。
石田健さん:
元々この状況が非常に例外的な状況だったので、どこかでコメが滞留してしまうとか、想定外の出来事が起こるといったことは当然あり得るなと思います。
だからこそ今どこで目詰まりが起きているのか、あるいは市場のニーズがどう変化していくのか、我々消費者も含めて冷静に立ち止まるタイミングかもしれないですよね。
井上キャスター:
もちろん大きな流れは変わったが本当にこのままでいいのか、少し足元を見ながら進んでいくために一つご紹介したいコメントがあります。
コメの高値が続く要因について、小泉大臣の言葉です。
小泉進次郎 農水大臣(5日)
「コメの流通は極めて複雑怪奇。社名は言いませんが、卸の大手の売上高・営業利益を見ると、ある会社は(前年比)売上高120%を超え、営業利益はなんと対前年比500%ぐらい。ほかの大手卸も営業利益は250%を超えている」
井上キャスター:
改めて見てもインパクトのある発言でした。「え、そんなに暴利を貪ってるの」と感じた方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。
本当に卸業者が儲けているのか? 取材で見えた数字の裏側
取材に応じてくださったのは、上場している大手コメ卸売業者A社です。
営業利益は2024年の1月〜3月は約3億9600万円だったのに対し、2025年の1〜3月では約19億2900万円と、確かに前年同時期比で約5倍になっていました。
A社の担当者によりますと、これまでのコメの卸売業は薄利多売で非常に利益率が低かったそうです。コメが品薄になり、価格の安さより安定供給が求められる中で「適正に利益が乗せられた」ことによって、営業利益も大きく伸びたということです。
A社の営業利益率を見ると、2024年の1〜3月が1.4%、2025年の1〜3月は5%まで上がっています。ただ全産業の営業利益率を見ると、東証上場企業(金融業除く)では約6.7%(2024年3月期※日本取引所グループHPより)となっていて、A社の営業利益率は平均よりは低いことがわかります。こうしてみるとデータの見方も変わりますね。
石田健さん:
そうですね。我々のように会社を経営してる、あるいは投資をする人間はまさに営業利益率を見ます。産業によって、利益率はだいたいこれぐらいだろうなというのがわかります。
そう考えたときに1%はかなり低いという感覚はあります。このあたりの感覚がないまま「500%です」と言ってしまうのは、ミスコミュニケーションかなと。
フラットに言うと小泉氏の初期の対応や初動のメッセージは国民に響いた部分があります。ただ「5倍」というところは勇み足だったのかなというところもあるので、より適切なメッセージを届けてほしいなと思いますね。
井上キャスター:
あえて違う角度から話すと、小泉氏はわかっていてわざとその数字だけを言ったのかもしれない。輸入米に関する発言も、何かをかき回すために言ったのかもしれないな、というところもありますね。
出水麻衣キャスター:
5次卸まであるので、「本当に5次卸まで必要なのか」という疑問提起がしたい中での発言かもしれないですが、槍玉に上がった企業さんにとってはかなりインパクトの大きい話だったのではないかなと思います。
「社会的な影響は甚大」―発言で波紋も
井上キャスター:
小泉氏の発言の影響があるかはわかりませんが、A社の株価を見ると、大きく乱高下しています。A社の担当者は小泉氏の発言についてこう話しています。
「コメへの関心が高まっている中、社名の明言を避けたものの、社会的な影響は甚大。利益に対する指摘や誹謗なども寄せられていて、重く受け止めている」
「買い占め・出し惜しみなどは一切ありません。弊社は倉庫を持っておらず、貯めることができない。実需に基づいて必要分だけを仕入れています」
井上キャスター:
この企業はしていなくても他はわからない。ブラックボックスになっている部分は政府もわからないし、中で働いてる方もわからない。本当に見えないところがあるんだなというのを感じます。
石田健さん:
ただ明確に言えるのは、我々がするべきことは誰か敵を探したり、誰か悪者を探したり、ということではない。あるいはコメの値段を不当に下げることによって、農家を苦しめることではない。
適切な流通、適切な価格のあり方を探していくためのメッセージが重要なんだということを、小泉氏に改めて確認してほしいですね。
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<プロフィール>
石田 健さん
ニュース解説メディア「The HEADLINE」編集長
鋭い視点で政治・経済・社会問題などを解説
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