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株価「連日最高値」今は買い時?落とし穴?【Bizスクエアで学ぶ 投資のキホン#35】

経済
2025-09-03 07:30

4月の株価急下降からのV字回復。似たような状況が起きた2020年のコロナショックの経験から考える、今は買い時?それともリスク含みの落とし穴?


【写真で見る】株価「連日最高値」今は買い時?落とし穴?


株高背景に「合意ドミノ」と「雇用統計」

8月は日経平均株価が連日の最高値更新となり、史上初4万3000円を突破した。


【株価高騰の背景】には何があったのか?
ニッセイ基礎研究所の井出さんは、「7月下旬から状況が一変した」と話す。


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「4万円回復は相当難しいのではと正直思っていたけど、もう完全にステージが変わった感じ。トランプ関税が25%⇒15%になり、自動車も引き下げになったことが非常に大きい。しかも、EUも関税引き下げで合意。中国も90日間追加で協議の時間を設けると。いわゆる【合意ドミノ】。その後もトランプ政権がいろいろと態度を和らげたりとかでいい状況になってきた」


また、8月1日に発表された【米国の雇用統計】も背景にあるという。


井出さん:
「正直内容があまりよくなかった。しかも5月6月分のNFP(非農業部門雇用者数)の伸びが大幅に引き下げられてFRBの利下げ期待が高まった。これも株高に繋がった」


25年度「減益」見通しでも「株高」ナゼ?

さらに井出さんは、日本の決算発表も株高に関係していると話す。


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「ちょうど7月下旬から8月中旬にかけて、日本では決算発表のシーズンだった。【3月期決算企業の第1四半期決算】、これが株高に弾みをつけた」


【2・3月決算企業の純利益合計額】
ー2025年度
▼会社予想:36.8兆円〔前期比9.7%減〕
▼市場予想:39.1兆円〔4.1%減〕
ー2026年度
▼市場予想:43.4兆円〔10.8%増〕

※TOPIX構成企業のうち8月12日時点で会社予想・QUICKコンセンサス予想がある約750社


井出さん:
「会社側が発表した数字と、市場つまり証券会社のアナリストの予想を集計したが、どちらも2025年度は“減益”となっている。業績悪化の見通しが出揃ったのに株価が上がったのはナゼか。“マーケットが見ているのが2026年度の市場予想”だから。〔10.8%増〕と2桁増益が見込めるなら今株買っていいよね、という見方が広まった」


――第1四半期の時点で来期を見るのは、ちょっと早すぎないかと思うが

井出さん:

「例年だと、10月11月、12月ぐらいから年明けにかけて段々市場の目線が来期に移っていく。ざっくり言うと中間決算が発表されてもう半分は見えた、じゃあ来年度どうなりそうなのと変わっていくけど、早い時期に市場の目線が来期に移ったというのは、実は2020年に前例がある」


コロナの時と同じ現象

2020年といえば、「コロナショック」
3月中旬には日経平均株価が一時1万6500円まで下がったが、その後V字回復した。


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「各国政府が給付金だなんだと財政出動を一気にやったし、各国の中央銀行も大規模な金融緩和をした。それでひとまずV字回復し、その後揉み合って2020年後半終わりがけからぐっと上がり始めた」


この時も、「市場の目線が早々に来期に移ったこと」が関係しているという。


当時の予想PER(株価収益率)を見てみる。PERとは「企業の業績に対して株価が何倍になっているか」という指標で、数字が大きいほど「割高」で、低いほど「割安」。標準は「14~16倍」だ。


井出さん:
「2020年後半に株価が急上昇した時、〔20年度利益ベースの予想PER〕は22倍超えで「割高」の状態。とても買えない、バブルかっていうぐらいの高さだった。一方〔21年度利益ベースの予想PER〕は14倍あるかないかぐらい。『なら、今年を見たら割高だけど、来年度を見れば全然買えるよね』という見方に市場が変わっていって株を買う人が増えた。しかも、21年度の利益はもっと上振れするだろうから、実質的にはPERを12倍、13倍で見積もってもいいという見方も強かった。それで株価がどんどん上がって行った」


――じゃあコロナの時に買った人は…

井出さん:

「結局株価は2021年の年末まで大きく崩れることもなかったから、21年度の業績を2020年後半の時点で織り込みに行って正解でしたという話。今もこれに似たことが起きている」


▼2025年4月、トランプ関税発表後急落
▼その後V字回復し、揉み合ってじり高となり7月下旬から急上昇


一方、〔2026年度利益ベースの予想PER〕は7月の株価高騰にもかかわらず、14.4倍と標準の中でも下の方の水準だ。


井出さん:
「問題は、この先26年度の業績予想が2020年の時みたいにさらに上振れするかどうか。上振れなら実質的には13倍台、場合によっては12倍という見立てができるから、『まだまだ今買ってもいいよね』という判断になるが、僕は“上振れる余地はある”と思う」


26年度は「業績V字回復」?

「業績上振れの要因」として井出さんがあげたのは4つ。


▼米関税コストの“価格転嫁”
▼海外の景気回復で“受注増”
▼自民党総裁選の“前倒し実施”
▼“景気対策”への期待


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「トランプ関税で、企業はコストをほぼ丸かぶりして値引きして輸出していたが、今後その値引き率は下がって行く。それから徐々に価格転嫁も進んでいく。自動車メーカーなども、モデルチェンジのタイミングに合わせて価格を引き上げるとか、価格の年次改訂に合わせて価格転嫁を進めていくという話は聞いている。つまり、関税のマイナス影響は徐々に和らぎ企業業績も期を追うごとに上方修正されていくはず」


また、アメリカの「GDPNow」では、8月末時点の実質成長率が3.5%。アメリカの好調な景気を受け日本の企業業績が上向く可能性もあるという。さらに…


井出さん:
「自民党総裁選が前倒しという話になれば、マーケットは次の総理大臣は多分石破さん以外の人になるだろうと勝手に読んで、『そうなると財政拡張的だよね』とかいう読みから株価が上がるなんていうことはあるだろう」


株価「4万円割れ」の“落とし穴”も

一方、「業績下振れ」のリスクもあるという。


▼2026年度の業績が予想ほど“改善しない、悪化”
▼市場が“近視眼的”になる


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
「アメリカは今は景気が良いが、スタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)に近い状態に陥る可能性はもちろんなくはない。幅広い分野で価格転嫁が進んでいくはずで、インフレは若干再燃気味になると思う。あとは景気が持ちこたえられるかどうか」


そうなると大事なのは、「実質賃金」だという。


井出さん:
「インフレは2~3%で続く。今は賃金がまだ4%近く伸びているので実質賃金がプラス1~1.5%。ただ、ちょっと労働市場が雲行き怪しくなってきた。労働市場が緩んできて賃上げ率が下がり実質賃金がマイナス、もしくはプラマイ0に近づいたりすると、景気への心配というのも高まってくる」


そして、景気の後退や景気悪化になる前に起こるのが「マーケットの近視眼」だ。


井出さん:
「マーケットは、調子の良い時、楽観的な時は来年再来年と少し先を見る。ところが景気後退期みたいなのが近づいてくると『来年とかじゃなくて今年だ』、『今年度きちんと黒字を出せそうな会社はどこだ、配当を払えそうなのはどこだ』と近視眼的になる。そうなると2025年度の日本企業は大幅減益の見通しだから株価も当然下押し圧力。場合によっては10%下がって4万円割れなんていう“落とし穴”も知っておいたほうがいい」


今は買い時?控え時?

では、今は買いなのか、リスクを考えて買わない方がいいのか?


『ニッセイ基礎研究所』井出真吾さん:
“中長期の投資家なら全然買っていい”と思う。今話した程度の落とし穴なら、1年も経たないうちに株価は落とし穴から脱出するはず。令和のブラックマンデーもトランプ関税の時も一瞬ドーンと下がったけどまたすぐ回復している。アメリカがもう少し本格的な景気後退になったとしても、過去アメリカの景気後退は基本的に1年以内に終わっている。マーケットは3か月から6か月先取りして動くから、もし落とし穴に一旦はまっても1年経つか経たないで脱出できると考えていい」


8月の格言「過去は最良の預言者なり」

未来を予測するには、過去の出来事や経験から学ぶことが重要という意味。


井出さん:
「今回みたいな〔企業業績減益株高〕の現象は5年前にも起きた。コロナの時の経験をもとに、ある程度の予測というかイメージはできるけども、一方で、落とし穴もいくつかあるよと。そういうリスクもあるということは知っておいて欲しい」


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