
福岡発祥のスーパー「トライアル」が、新たなコンセプトの次世代店舗を東京都内に初出店した。西友の買収で世間を驚かせた『トライアルHD』が睨む“首都圏戦略”とは?
食パン1斤105円…圧倒的な「価格競争力」
11月7日、東京・杉並区にオープンした『TRIAL GO 西荻窪駅北店』。
福岡発祥の格安スーパー「トライアル」が放つ次世代店舗で、見た目や大きさはコンビニエンスストアのようだが、入り口付近には出来立ての弁当や惣菜がずらり。
奥には、肉や野菜などの生鮮食品も並んでいる。
ウリは、トライアルならではの“圧倒的な価格競争力”。
食パン1斤105円。ジュース(200ml)は85円、自社農園のバナナは1房138円だ。
中でも目を引くのが、たまごを3個使ったサンドイッチ。2切れ入って199円。
ロースかつ重は343円という安さだ。
男性客:
「安い。なかなかコンビニではこの値段では出ない。倍くらいいっちゃうと思う」
男性客:
「みんなで食べられるかなと思って、たまごサンドとオムライスとカツ丼。これだけ安いと野菜を追加できるのは嬉しい」
競合店との違いは「安くておいしい」
7月にスーパー大手の西友を買収し、売上高が1兆円を超える見通しの『トライアルホールディングス』。
どのような戦略を練っているのだろうか。
――都市型小型店舗の「トライアルGO」が東京に進出した狙いは?
『トライアルHD』永田洋幸社長:
「私達の良さは、“食のおいしさ”や“省人化”。安くておいしいを追求できるお店作りということをやっている。今までのトライアルだったら、物流網を含めて首都圏での展開が難しかった。今回西友を買収したことで、都心のお客様へ商品を伝えられる環境が作れるようになった」
――都心や首都圏ではコンビニが山のようにあって、生鮮を扱う小規模スーパーもたくさん出ている。競合が多いなかで、「トライアルGO」はここが違うというのは?
永田社長:
「まずは“安くておいしい”。既存のコンビニやスーパーよりはかなり安く売れると思う。だいぶお金もセーブできるので、頻繁に利用していただけるのではないかと」
買収した「西友」を“セントラルキッチン”に
買収した「西友」と「トライアルGO」はどういう関係性になるのか。
永田社長は、「既存の西友の周りに小惑星ができるイメージ」と話す。
『トライアルHD』永田洋幸社長:
「総菜は、“出来たてがおいしい”が重要。今までの流通の流れは、センターから流れてきたものを順次お店に配っていくやり方だった。私達は実際の西友の店を、一つの“セントラルキッチン、プロセスセンター化”することで、できるだけ早く近場で効率的においしいものを提供できる。従来の小型運営のやり方との違いになるのではないかと考えている」
「トライアルGO」は、“西友の既存店舗の周辺に出店していく”計画で、今回オープンした東京・杉並区の店舗も近くの西友3店舗から商品を供給することで、豊富な品揃えと鮮度、そして低価格を維持できるという。
ITで“省人化”⇒低価格実現
安さを支えるもう一つの柱が、トライアルが得意とするIT=情報技術だ。
『トライアルGO』廣石 財社長:
「食とDX(デジタルトランスフォーメーション)の2本柱でやっている。食の品質も当然向上させていくが、DX技術の向上も図っていきたい」
店内に設置された多数の「AIカメラ」や「電子看板」で客の動向や在庫状況などをモニタリング。
さらに注目は「自動値下げシステム」。
賞味期限が近づくと、売り場のモニターに値下げされた価格が表示され、レジでも自動的にその価格が反映される。
セルフレジでは、「顔認証決済」も導入。
事前に専用のアプリに顔を登録しておけば、財布もスマホも出さずに「顔認証」で買い物が完了する。
男性客:
「簡単。元からチャージしてある金額で財布を出さずにできるし、スマホも出さずにお会計できるので」
もちろん現金での支払いも可能だ。
『トライアルHD』永田洋幸社長:
「安さを実現するために、いろんなテクノロジーを使い“省人化することでしっかりコストを抑えていく”ことが中長期的な目的。それでお客様に便利性を伝えていきたいと考えている」
トライアル×西友の“新業態”スーパー
11月に都内でオープンした「トライアルGO」は2店舗だが、12月にも2店舗出店予定と東京進出を加速させる構えだ。
10月からは、買収した「西友」の全国の店舗で「トライアル」のPB商品を販売。
一方、「トライアルGO」には「西友」のPB商品が並んでいる。
11月28日には、両社の強みを融合した新業態のスーパー「トライアル西友」も東京・小平市にオープン。
トライアルの代名詞ともいえる「セルフレジ機能付きの買い物カート」も導入し、レジ待ちを解消するなど新たな買い物体験を提供する。
「1+1を4にも5にもする」戦略
トライアルHDは、約3800億円かけて西友を買収したわけだが、その金額についてはどう捉えているのだろうか?
『トライアルHD』永田洋幸社長:
「金額が重要なのではなく、あくまでも私達が成長するために必要か必要じゃないかを軸に考えた。成長するために必要だということで判断した。3800億円に見合うものにするかしないかは自分たち次第。買収資金を返すのに時間がかかったら『高い』となってしまう。逆に事業がうまくいって早くそれができれば、『効率的でお買い得だった』という話になる」
――「西友の単独強化」or「トライアルとの新業態」どちらををめざすのか
永田社長:
「どちらかというと、新業態の方に近い。各々がどうだこうだではなくて、トライアルの良さ、西友の良さの両方の強みを1+1=2にしたいのではなくて、“1+1が3にも4にも5になるような施策”を一緒にやっていこうと。“足し算ではなくて、いかに掛け算にできるか”。それを今後の首都圏含めて日本全国で新しい流通を作るための重要な考え方、戦略として培っていきたい」
ぶれずに「客に豊かさを提供する」
トライアルHDの未来像について、永田社長が繰り返し口にしたのは「客に豊かさを提供する」という信念だ。
『トライアルHD』永田洋幸社長:
「トライアルという会社は、社会にとって必要である会社にしなければいけない。それが常に会社としての存在価値だと思っている。今のトライアルは“お客様の生活を豊かにするために存在している”からこそ、それだけはぶれずに、ちゃんとお客様に豊かさを少しでも実感できるようにしていかなければならない」
――日本一の流通グループになりたいと思うか
永田社長:
「それは結果であって、常にお客様に豊かさが提供できれば、おのずとそうなるのではないかなと。それがやはりお客様の支持であって、売り上げの形になると思うので、そうなりたいでついてくるものではないかな」
「西友」買収で首都圏を狙う
トライアルは西友の買収によって全国602店舗となり、とくに首都圏に勢力を伸ばした。
<店舗>
トライアル(358店)+西友(244店)=計602店
▼北海道【トライアル34店】
▼東北【トライアル39店】【西友19店】
▼関東【トライアル59店】【西友134店】
▼中部【トライアル16店】【西友72店】
▼近畿【トライアル37店】【西友19店】
▼中国・四国【トライアル32店】
▼九州【トライアル141店】
※2025年9月末時点
<売上高>
▼2025年6月期通期:8038億円⇒▼26年6月期通期予想:1兆3225億円
このトライアルの勢いを『BNPパリバ証券』グローバルマーケット統括本部副会長の中空さんはどう見るのかー
『BNPパリバ証券』中空麻奈さん:
「岸田政権でも石破政権でも<脱デフレ>だと言ってきたわけだが、やはり世の中にはデフレのノルム(社会通念)が残っていて、『少しでも安いものを』ということなのだと思った。また今後のスーパーのあり方にも注目していきたい。女性の社会進出とともに調理済みのものを買って家で食べる『中食』が増え、スーパーでも惣菜みたいなものが増えてきたが、単身世帯も増え今後はどういうものがウケるのかに注目したい」
(BS-TBS『Bizスクエア』2025年11月22日放送より)
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