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「ブルーカラーは稼げる」は本当か?アメリカで高収入得る技師たち… 日本ではタクシー運転手も?

経済
2025-11-27 06:00

「大学を出て、一流企業に就職しなさい」――このような言葉を親から言われた経験がある人は多いのではないでしょうか。日本では長らく、ホワイトカラーが高収入という固定観念が根付いていました。しかし近年、アメリカの若者の間でブルーカラー職種が人気を集めているというニュースが話題になっています。


特にZ世代の間で「ブルーカラービリオネア」という言葉が注目されており、AIの発展によってホワイトカラーの仕事が減少する一方で、手に職のある人たちが高収入を得る時代が到来しているとされています。この現象は本当なのでしょうか?また、AIの時代にホワイトカラーはどのような道を選ぶべきなのでしょうか。


(TBS Podcast『コムギコ:資本主義をハックしろ!!』2025年11月14日配信『「ブルーカラーは稼げる」は本当か?AI時代のホワイトカラーは”ひとりユニコーン”を目指そう』より)


人気インフルエンサーになる電気技師

ブルーカラーとは、工場や建設現場などで働く人々が、汚れが目立ちにくく丈夫な「青い襟(Blue Collar)」の作業服を着ていたことに由来する言葉で、主に肉体労働に従事する労働者を指します。


最近人気を集めているのは、電気システムの設置、保守、修理を現場で行う「電気技師」などの職種です。アメリカ・ニューヨーク在住の電気技師、レクシス・ツマクアブルーさんは、Z世代に人気のインフルエンサーとして知られています。TikTokで110万人のフォロワーを持ち、電柱に登って仕事をする日常の様子を流行りの音楽に乗せて投稿しています。


彼女の動画は数百万回も再生され、Z世代がブルーカラーの職種に憧れる要因となっています。工具メーカーや作業服のブランドとも契約を結んでおり、2024年時点で年間約3100万円のスポンサー収入を得ているとのことです。


一方、ホワイトカラーは、スーツやジャケットの下に「白い襟」のワイシャツを着て、オフィスで働く姿が由来となっており、主に知的労働や事務労働に従事する労働者を指します。しかし、パソコンのキーボードを叩いたり、クライアントにプレゼンテーションをしたりする姿は、レクシス・ツマクアブルーさんがTikTokで話題となったような仕事に比べて、機密事項もあるので勝手にSNS投稿出来ませんし視覚的に地味で魅力が伝わりにくいという側面があります。


「ブルーカラービリオネア」現象の背景

アメリカでは「ブルーカラービリオネア」という言葉が話題となっています。AIの進化によって弁護士やエンジニアといったホワイトカラーの仕事が減少する一方で、配管工や空調の修理技師といった「手に職のある人たち」が高収入を得られるようになっているのです。


大学を卒業しても仕事が見つからない若者が増えるなか、技能職は引く手あまたの状況です。職業訓練校に入学する人も増加しており、トランプ政権も短期の資格プログラムに奨学金を出すように制度を変更しました。


なかでもアメリカで最も稼いでいるとされるはエレベーターの設置や修理を行う技師で、平均年収1600万円ほどにもなるということです。AIには真似できない「人の手による技術」が、現在非常に価値あるものとして見直されているのです。


この現象について、2025年11月2日に日本経済新聞が「米国でブルーカラービリオネア現象、AI発展で潤う肉体労働者」という記事を掲載し、大きな反響を呼びました。


ブルーカラー人気の実態

では、なぜブルーカラーの仕事に注目が集まっているのでしょうか。その背景にあるのは生成AIの普及です。


アメリカの失業率は全体では4%台前半で安定していますが、20歳から24歳の若年層に限ると、2024年12月の7.5%から2025年8月には9.2%まで上昇しています。企業が「大卒の新人」を採用しなくなっていることで、若者が職を得られなくなっているのです。


ChatGPTやGeminiなどの生成AIは、会議の議事録作成やメール作成、データ入力、資料作成など、これまで新卒の若手が担当していた業務を代替するようになっています。特に大きな変化が見られるのはプログラマーやエンジニアの分野で、AIがコードを書けるようになったことで人間の必要性が低下し、リストラが進んでいます。


こうした状況を後押ししているのがアメリカのトランプ政権です。トランプは有名私立大学への助成金カットを検討する一方、ブルーカラー育成を支援しています。政府の奨学金「ペル・グラント」について、2026年から2027年度にかけて、職業訓練などの短期資格取得プログラムも支給対象に加えることを決めました。


その結果、職業訓練学校への入学者は急増しており、2025年春は、配管工や大工などの技術を習得する職業訓練校の入学者数が前年から12%増加しています。


タクシー運転手の稼ぎは本当に増えたのか

ブルーカラーが稼げるようになったという話のなかで、注目を集めているのがタクシー運転手の収入です。2025年11月7日付けのNewsPicksでは、「タクシーが『稼げる仕事』に化けていた」という記事が掲載されました。


この記事では、大阪のあるタクシー運転手が「夜勤も含めた週3日間(24時間)の勤務シフトで、安定して月商100万円をキープ」し、その会社のエリア900人中のトップ4位まで上り詰めたと紹介しています。この運転手はタクシー配車アプリ経由の売上が90%以上を占めており、効率的に顧客を獲得しているとのことです。


しかし、これはあくまでも一例に過ぎません。実際のところ、タクシー運転手の平均年収は2024年時点で全国平均417万円となっており、10年前の302万円から38%ほど上昇しています。それでも先の大阪の運転手ほどの高収入を得ている人は少数派です。


この運転手が高収入を得られている理由としては、①東京や大阪などの首都圏で働いていること(東京の平均年収は502万円)、②タクシー配車アプリを活用していること(効率的に客を獲得でき、迎車料金やデジタルチップも加算される)、③デジタルデバイドがあること(アプリを使いこなせる若い世代が有利)などが考えられます。


結論として、タクシー運転手の収入が増えたのは事実ですが、それが「誰でも高収入が得られる」ということにはならないのです。


AIに代替される仕事と残る仕事

ブルーカラーの仕事が全て将来性があるわけではありません。たとえばタクシー運転手については、アメリカや中国ですでに自動運転タクシーが実用化されつつあります。アメリカでは自動運転技術開発企業「ウェイモ」の自動運転車は2000台が走行しており、東京でも試験走行が始まっています。


また、アマゾンのような大企業は、ホワイトカラーだけでなくブルーカラーの人員も削減しようとしています。アマゾンは世界に153万人の社員を抱えていますが、そのうち約120万人が働く物流センターでは、ピッキング、梱包、搬送などの作業をロボットが担うプロジェクトが進行中です。


このような状況を踏まえると、単に「ブルーカラーは稼げる」と一括りにするのは適切ではありません。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのジェイコブ・シャール教授が2025年10月に発表した論文によると、AIやロボットに代替されやすい仕事かどうかは、以下の4つの観点から判断できるとされています:


1. 人によって成績のバラツキが大きいかどうか


2. 言語化できない暗黙知がどれだけ求められるか


3. 学習データが豊富かどうか


4. 現在のAIと人間との能力差がどれだけあるか


これらの指標に基づくと、アマゾンの物流センタースタッフのような標準化された作業は代替されやすい一方、熟練の職人技のような暗黙知を必要とする仕事は代替されにくいと言えます。


"ひとりユニコーン"という新時代

ホワイトカラーとして働く人々にも希望はあります。それが「ひとりユニコーン」の可能性です。


例えばAiロボティクスという会社は、「Brighte(ブライト)」ブランドでヘアドライヤーや美顔器などの美容家電を展開していますが、2025年3月期の1人当たり売上高は5億2600万円にも達しています。従業員はわずか27人で、1人あたり5億円を売り上げるという驚異的な生産性を実現しているのです。


この会社の秘訣は、AIの徹底活用にあります。販売の9割はオンラインで、自社で開発した広告運用を自動化するAIシステム「SELL(セル)」を活用しています。このシステムは広告のデザインから記事の執筆、出稿、モニタリング、インフルエンサーの選定など、広告運用の工程を自動化しています。


また、AIボイスレコーダーを開発するアメリカの「PLAUD(プラウド)」も注目すべき事例です。厚さわずか3ミリの超薄型AIボイスレコーダーを展開し、2025年7月には世界での累計販売台数が100万台を突破しています。従業員数は約400人で、一人あたりの売上高は約1億円と推定されています。


これらの企業に共通するのは、AIを駆使したマーケティングと、サブスクリプションや定期購入などの「リカーリング」なビジネスモデルです。


OpenAIのサム・アルトマンCEOは、「友達のテック企業CEOたちとつくっているグループチャットで、ワンマンの10億ドル企業が登場するという賭けをしている」と語っています。つまり、一人で1500億円の価値がある「ひとりユニコーン」の登場を予測しているのです。


これからも多くのホワイトカラーがAIによってリストラされる可能性がありますが、一方でAIを使いこなして大きな収益を上げる人々も登場してきています。二極化が進む中、AI時代のホワイトカラーは、"ひとりユニコーン"を目指すべき時代が到来しているのかもしれません。


<コムギコ:資本主義をハックしろ!!>
毎日ニュースを100本を読むビジネス系VTuber兼リサーチャー・編集者のコムギ(comugi)が、日々の経済にまつわるニュースを解説するビデオポッドキャスト。本記事は2025年11月14日配信『「ブルーカラーは稼げる」は本当か?AI時代のホワイトカラーは”ひとりユニコーン”を目指そう』から抜粋してまとめたものです。


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