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2026年日本経済の課題、物価抑制と高い賃上げで、実質賃金プラスにたどり着けるか【播摩卓士の経済コラム】

経済
2026-01-10 14:00

2026年の日本経済が本格的に始動しました。株式市場では、6日に平均株価が最高値を更新するなど幸先の良いスタートとなりましたが、暮らし向きという点で言えば、実質賃金がプラスに転換するかどうかが、最大の焦点です。3年半にわたって、実質賃金マイナスが続くという異常事態を脱することは、日本経済成長のためにも、日銀が言う基調的物価上昇のためにも、欠かせないからです。


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11月の実質賃金マイナス2.8%

8日に発表された毎月勤労統計によれば、25年11月の現金給与総額(名目賃金)は前年同月比で0.5%上昇しました。しかし、帰属家賃を除く消費者物価が3.3%も上昇したことから、物価上昇分を除いた実質賃金は2.8%もの大きな下落となりました。実質賃金の下落は11か月連続で、25年通年でも相当なマイナスになることが確実です。


日本にインフレの波が押し寄せたのは、ウクライナ危機で資源や食糧の輸入価格高騰が始まった2022年4月のことでした。不可能と思われていた「物価上昇率2%の壁」を、数字の上では、ついに上回ったのでした。しかし、それ以降、物価上昇に賃金が追い付かない状況が続き、その後3年8か月にわたって、4回の例外(ボーナス時期である24年6・7・11・12月)を除いて、一貫して実質賃金のマイナスが続いていて来ました。異例の長さです。


「景気は緩やかに回復」、「デフレから脱却へ」などと、はやしたてたところで、実質所得は目減りしてきたのです。インフレ経済への移行のために、家計が犠牲にされてきたとも言えます。


物価高対策などで今年の物価上昇率は低下へ

2026年の日本経済は、この構図から転換できるかどうかが、最大の課題です。実質賃金がプラスになるためには、2つの方法しかありません。名目賃金が上がる、つまり高い賃上げ率が実現するか、消費者物価の上昇率が抑えられるか、です。


高市政権による経済対策によって、すでに年末にガソリンの暫定税率が廃止された他、今年2月から4月にかけて、電気ガス代への大幅な補助が実施されることから、エコノミストの間では、早ければ今年1-3月期にも、消費者物価上昇率は2%前後にまで下がり、その結果として、実質賃金がプラス化するとの見方が多くなっています。


もちろん、電気ガス代への補助は一時的なものですが、昨年の高いインフレのいわば「A級戦犯」であるコメ価格が、対前年比では上昇率を大きく縮小させていることも追い風になりそうです。また、日銀が12月に利上げに踏み切り、今後も利上げを続ける姿勢を示していることから、水準はともかくとしても、円安の進行が加速していないことも、対前年比の物価上昇を抑えるという点では、一定の効果がありそうです。


春闘で昨年並みの賃上げを期待

一方、名目賃金の方は、どうでしょうか。昨年の春闘では連合集計で5.25%と2年連続で5%を上回る、画期的な賃上げが実現しました。26年の春闘についても、新春、経営者の口からは「今年も5%以上」などと、賃上げに前向きな発言が相次ぎました。経済団体も政府も、引き続き、賃上げの旗を振っており、昨年の5.25%を越えられるかどうかはともかく、昨年並みの5%前後の賃上げは、可能性が高いと見られています。


アメリカの関税政策の影響で、輸出産業の一部では減益が避けられないものの、相互関税の日本経済全体への影響は限定的にとどまっている上、インフレの影響によって、売り上げや利益、株価といった経済の名目値が伸びていることもあり、全般的に業績見通しは堅調だからです。


今春闘で昨年並みの賃上げが実現し、4月以降、その分、名目賃金が引き上げられれば、物価高対策によって一時的に実現した実質賃金プラスが、4月以降も定着させられる可能性が出てきます。


実質賃金プラス化の計算シナリオとは

ここで注意が必要なのは、春闘の賃上げ率は、いわゆる定期昇給分を含んだ数字の上に、労働組合が存在する、比較的「恵まれた職場」の数字だという点です。


発表される賃上げ率は、同一人物の昨年対比なので、年功序列型の賃金体系を採用している多くの日本企業の場合は、年齢が上がると自動的に給料が増える定期昇給分と、賃金体系そのものであるベースアップ(ベア)分の2つの部分から構成されているのです。大手企業では定期昇給分が2%ぐらいあるので、5%賃上げと言っても本来の賃金上昇であるベア分は3%程度なのです。


ベア分が3%で、最近のように物価上昇が3%以上あれば、実質賃金は良くてトントンでしょう。連合集計対象外の企業では、一般的にベア分が大企業より低くなる傾向があるので、勤労者の平均でみれば、実質賃金はマイナスになるのは当たり前です。


4月以降のシナリオとしては、春闘で少しでも高めの賃上げを実現すると同時に、物価上昇率を目標の2%程度に抑えることが重要です。5%賃上げ、つまりベア3%で、物価が2%に落ち着いて、初めて実質賃金がプラス1%、働く人全体で見ても、コンマ何%かで、何とかプラスになれば良い、という計算式になります。


実質賃金プラスは「成長」の最低条件

日本の消費者は3年以上にわたって、実質賃金マイナスに耐えてきました。実質所得がマイナスと言うのは、この間、貧しくなったということです。上述のように、今年仮に、高い賃上げと物価の抑制に成功したとしても、実質賃金のプラスは僅かなものに留まりそうです。その上、この3年半のマイナスの間に、家計は、貯蓄を取り崩すなど相当縮んでおり、消費マインドの改善・回復には、プラス化後も相当な時間がかかるでしょう。プラス化はその第一歩に過ぎません。


そもそも、実質賃金のプラス化は、高市総理が大好きな言葉である「成長」のために欠かせないものです。個人消費は日本のGDPの6割以上を占めています。所得の拡大なしに、消費の拡大や経済成長は不可能です。物価と賃金の「好循環」実現のためにも、消費拡大による需要拡大が必要です。


また、需要の拡大が物価上昇につながるという経路ができて、初めて、日銀が目指すとしている、コストプッシュだけによらない、「基調的物価上昇率2%」の世界が確かなものになるからです。


高市政権への高い期待を失望に変えないために

長期的な成長のために、危機管理投資も結構ですが、足もとの経済安定と成長のために、まず、実質賃金のプラス化と、その定着こそが、経済政策の最優先課題と位置付けられるべきでしょう。それがなければ、高市政権への国民の高い期待は、失望へと転化するリスクがあります。


その期待に応えるためにすべきことは明白です。高い賃上げと物価の抑制です。一番やってはいけないことは、円安をさらに進めてしまうことです。高市政権が政策のプライオリティー(優先順位)を間違わないかどうか、この数か月がとても重要です。


播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)


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